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ストラスブール市西バイパス建設計画中止決定・代わりに公共交通導入を検討

弊書「ストラスブールのまちづくり」171ページで、フランス社会に根付くAssociation(アソシアシオン・市民団体)がどのように、交通政策に関わってゆけるのか一例を紹介した。

そして驚いたことに地方自治体(ストラスブール市議会)と本で紹介した市民団体が共に反対を表明していた、新しい西バイパス建設計画が本当に中止された。

渋滞に悩まされるストラスブール市の環状道路をさらに囲む形で予定されていた24Kmの西バイパス建設には、「300ヘクタールの農地が破壊される」として環境団体「アルザス・ナテュール」が10年以上前から反対していた。アルザス地方もバ・ラン県も右派が牛耳るが、ストラスブール市のみは社会党政権で、「アルザス・ナテュール」の立場を、ストラスブール市も支援していた。

だが、2010年には「工事が公益にかなう」というDUP(公益宣言)が、国務院(行政裁判における最高裁判所に相当)からすでに発令され、もうこのまま工事が始まるのではないかと、懸念されていた。

しかし、建設費が7億5千ユーロに高騰し、そのうち4千万ユーロ相当しか補助金は出ない。残りは55年の譲渡期間に高速道路料金から賄うと、そろばんをはじいたいたが、そのためには一日あたり、3万台の通過車が必要とされる。これは現実的な数字ではないとみなされ、大手建設会社VINCI社も手を引くこととなった次第。

ストラスブール市の現リス市長によると、交通渋滞の理由として上がっていた「通過するだけで街に経済効果をもたらさない車は 、全体の交通量の10%でしかなかった。つまり、渋滞緩和のために、新たに道路を建設することが解決を生み出すのではなくて、市民の動きを把握したもっと抜本的な解決法が必要だと理解した。」とコメントしている。

そしてその抜本的な解決法とは。

  1. 専用軌道のトラムか高度性能バス
  2. 空港にリンクしたトラム・トレイン
  3. 中央駅にリンクしたゴムタイヤ・トラム

パークアンドライドを充実させることにより、市民は車を駐車して、公共交通を利用すれば環状道路の渋滞も緩和する。と市当局は考えている。市長は「未来の選択股が道路であるわけがない。この点で、私はエコロジストたちの意見に賛成だ」と表明。

公共交通路線導入企画には1億5千万ユーロが見積もられているが、バイパス道路建設より安い。しかし、フランスが国をあげて推進する環境グルネル法に守られて、トラムの資金繰りも何とかなるであろう。 (原典・ルモンド誌6月6日)

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