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    • 市民の乗車率と収益が近年上昇している理由はCTSによると、1つ目は正に2010年に導入した社会運賃の実施のおかげ。二つ目が、不正乗車の取り締まりに力を入れてきたことによる。「検札官を頻繁に車両に乗せることによって心理的な圧迫をかけて、自発的にお金を払ってきちんとトラムに乗るように仕向けたので、結果的には収益が増えた。例えば、不正乗車した人が多くなりバスが満杯になれば、追加のバスを増発するがそれはCTSへの歳入を伴わないコストになる。だから、不正乗車利用者を減らすことは、CTSのコストパフォーマンスに当然つながる。」独立採算制が当然の日本の鉄道事業者からすれば、CTSが今さらそのような努力を行っていることに唖然とするだろうが、上記の言葉は私が実際にCTSの従業員から聞いた発言だ。この辺りに運送事業体が完全に民間経営でない事実が伺われる。なお、不正乗車については以下の頁を参考にしていただきたい。 https://www.fujii.fr/?p=2840

      Tramways bogies fixed. Le Creusot. France. March 2009                           (写真・ALSTOM Japan 提供)               ストラスブール整備工場にもCITADISやEUROTRAMのエンジンが置かれてあった

      ちなみに欧州では一般の鉄道も歴史的に『信用乗車』で、改札はバスと地下鉄にのみ設けられた。尚日本では法律で不正乗車利用客に、正規運賃の2倍以上の罰金は課せられないようであるが、ストラスブールではその場で現金で罰金を支払えば32ユーロ(約4480円)、支払いの期日を延ばす場合(16日以内)は48ユーロ(約6700円)の罰金が法律によって課せられる。罰金課金制度の法的根拠は、loi du 15 juillet 1845 sur la police des chemins de fer( 1845年7月15日鉄道公安法)et le décret N° 730 du 22 mars 1942(1942年3月22日の適用勅令) がベースで、都市交通はUTP(公共交通及び鉄道交通連合)が監督機関になっている。

 

 

 

    • さて、CTSの経営の話に戻そう。 切符収入は全てこのCTSに入ってくるが、何しろ23%しか運営コストをカバーしないので、赤字の補塡部分をストラスブール都市共同体から受けている。2011年度が47億円、2012年度が44億円で、経営状態が向上したので自治体からの補塡金が減っている。そうすると「経営インセンティブは何処で作用するのか?」という疑問が当然出てくる。この質問に対しては、「経営努力によって、実際には減小した補填金額を上回る歳入を得ている」という答えであった。つまり少なくとも3億円以上の収益はあったということだ。これをフランス語では「自治体からの定額補填金供与委託」システムと呼んでいるが、この【民営】方式がフランスの都市交通運営システム全体の75%を占める。そして、この場合、インフラ整備もメンテナンスもオペレーターが行っているので、いわゆる営業リスクと設備リスク双方をオペーレターが負っている。これが公設民営。 逆に、運行収入が自治体に入り、定額運行委託金のみがオペレーターに支払われる民託方式(フランスでは今でも13%がこの形式)だと、営業リスクは自治体の方にシフトする

    働きやすい環境を整えた整備工場・CTS敷地内にありLRT車庫とは別の建屋

    • この民託と民営の違いについては、2013年秋に沖縄ESTセミナーで両備CEO小嶋社長も詳細にお話されていた。小嶋社長は赤字中国バス救済に乗り出された時に、岡山が3000万円で購入するバスをたとえば、4000万円で購入し、燃料も10倍、部品も3倍残していたとお話された。何故このような事態になったかといえば、補助金獲得の為に、以下の2つの問題が生じた。経営のモラルハザードと労使関係の不仲だ。「コストを下げると補助金が少なくなるので、コストを下げないのが仕事だ」と、かつての中国バスの人は言い切ったそうだ。「補助金をもらうために赤字を増やすのが経営努力だと」。そして労働組合は好き放題で、サービス努力なしなので、ますます利用客は減少する。黒字体質にするには、「地域公共交通活性化法」を適用して、経営インセンティヴという画期的な補助金制度の導入を促す必要があった。また補助金に「利益」を認めることはできないので、「インセンティヴ」と言葉を変えたそうだ。つまり、結果赤字補填型から見込経営努力型補助金への切り替えには、補助額を基本的に固定額として、売り上げ向上を目ざし、経費を削減すれば企業努力のインセンティヴとして享受可能にする「準公設民営」スキームの導入を説明された。これはフランスでも、今75%近くの自治体が取り入れている経営方式でもある。

    真っ白な三角形の屋根が印象的な、こちらはバスのみの車庫 しかしそれにしても、広々とした敷地、動きやすそうな清潔なスペース感があふれる整備工場。働きそうな職場であることが見取れる。

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