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BRT メッス Metz 2

07 06 2015 | Actualités ブログ記事, Bus BRT バス, Metz メッス

②バリアフリーの工夫

実はメッス市がBRT導入調査を行っていた折にはどの会社の車体を導入するかは未定で、車床の高さが決定されていなかったので、バス停は道路から24cm高く敷設した。(24cmというのはどのメーカーのバスでもOKの高さとのこと。)バス停の淵部のプラットホーム床部分が15cm道路の方に出ているのは、ここにバス車体を擦りつけて、できるだけ車体とバス停の間隔【5cmがターゲット】を少なくする為だ。このバス停の縁石の高さは、設計を行ったコンサル会社が調整したが、「よそと違うことをしたい。」という、フランスの都市それぞれが技術を競っている環境の中で、メッスオリジナルとして打ち出したと言っても良い。ただし、縁石そのものを高くする技術はすでにナントのバスウエイで導入されていた(https://www.fujii.fr/?p=3713)。「バス停プラットフォームを高くするくらい何でもない」、と素人は思うのだが日本では中々難しいらしい。最初はメッスでも縁石にタイヤがこすれたので石の方を磨いたが、現在ではタイヤメーカーの方の対応が進み、石に擦れたときに、磨耗が少ないような工夫がタイヤ側にもされているようだ。

ルーアン(https://www.fujii.fr/?p=3602)とニームでは、出来るだけドライバーが上手く電停に車体を停車できるように光学読み取りシステムが導入されているが(何しろ24Mの車体で、車掌などいない)、メッスでは10%のコストを下げるために読み取りシステム採用を控えた。またそれぞれの都市に視察にも行ったが、それほど光学読み取りシステムが完璧に作動していないことを見て、メッスの軌道運送事業体(TAMM社・都市共同体が60%出資する第三セク・運行業務はKeolis社が受託)のアイデアで、バス停にドライバーの目安となる赤線を派手にペイントした(写真下)。これはメッスと前後して同じ時期にBRT運転を始めたストラスブールやナンシーも同じ手法を取り入れている。ドライバーたちが『十分バス停に接近出来る』と言ってくれたことも後押しになったそうだ。このあたりはプロ根性というか・・・この5cmにどの都市もこだわるのはバリアフリー対策で、バス停で車体から車椅子用のパレットが出るから(写真下)だ。ナントのバスウエイは利用者がいなくても自動的にいつもこのパレットが出る。メッスではナントと同じく、パレットを当初は 各電停で自動的に出していたが、全路線で合算すると10分間のロスになることが分かり、このコスト高は最終的にはドライバーの人件費に跳ね返ると判断し、コストパフォーマンスのために、「車椅子やベビーカー利用者がボタンを押した時だけ、パレットを出す」と、運行を担当するTAMM社が決めた。ちなみに日本と違い、ボタンを押すだけで、パレットが出るので、車椅子利用者は介添えは不要で全く自立して公共交通を利用できる。

さてこのように運転が上手いドライバーだが、メッスに関しては、一般バスの運転手と給与は同じだそうだ。 

③ BRTのインフラ・専用レーンと優先信号

専用レーンに余り一般車の混入もないようである。なぜか? 一応フランスでは一般車が専用レーンに誤侵入すると、135ユーロの罰金の課金が決まっている。(これは自治体の収入にはならず国家歳入になる)。誤侵入を防ぐ様々な工夫はルーアンBRT(https://www.fujii.fr/?p=3617)の例でも述べたが、大別して3つ挙げられる。

1・分離帯を設ける(ナント)、

2・分離帯整備スペースが無い場合にはレーンの道路カラー識別化(メッス)や見やすいパネル『BRT専用』の設置(ストラスブール)などの工夫

3・ドラスティックな方法としてバリケードの設置(リヨン)

メッス では(BUSバス専用)とペイントした道路を良く見かけたが、いわゆるバリケードや分離帯は無いので事情を知らない観光客の運転する車がたまに入るが、2車線BRT専用レーンなので、簡単に追い越しが可能で特に問題になったことはないようだ。交通量が圧倒的に多いリヨンでは誤侵入を防ぐためにバリケードを設置している道路もあるが、遮断機にはメンテコストがかかるし、故障もあるので、比較的交通量が少ないメッスでは遮断機設置を考えなかった。このあたりは、後発組みだけあって、他の都市での経験を上手く自分たちの都市に活かしている

また、BRTには徹底した優先信号(図上・東京都が発表したBRT構想でもPTPS導入が予定されている)が採用されており、少なくともフランス人ドライバーなら、この信号をみると『道路は車用ではない』とすぐ分かるので、たとえ間違って専用レーンに入ってしまっても、次の信号で専用レーンを出て一般道路に戻るのが普通の行動だ。信号はBRT専用レーン道路に設置した探知機(磁気コイルループ)が、IC発信機を搭載したBRTがその上を走行した折に探知するシステムだ。一般自動車交通用道路の信号にも、メッス市当局が同じ交通管制システムを導入している。(ただし、一般車には発信機がないので、ただ車体重量通過を探知するのみ。)その結果、BRTと一般自動車が交錯する十字路における渋滞などの解消も上手く稼動しており、逆に「この信号システムが優良過ぎて、自動車ドライバーは渋滞を経験しないので、自動車から公共交通への乗り換えが進まない」、という傾向があるくらいだ。この優先信号システムはボルドー市やモンペリエ市でも採用されているが、一般自動車と、路線バス、BRTが走行するすべての道路の信号を一括して統御するなどは、現在の日本では多分想像も出来ないことだろう。ちなみにメッス都市共同体の人口は、約22万人で日本なら東京都の調布市、兵庫県の宝塚市のサイズにあたる。

④ 広々とした交通制御総合室とバス車庫

この交通管制を行う中央制御タワー(写真下)も含む車庫に行ってみた。

BRT整備に合わせて新設した8ヘクタールの 車庫とメンテセンターは広々としていて、昔は3ヘクタールの車庫だったそうだが、今ではバス1台づつがそのパーキングスペースを持つ、という贅沢なつくりだ(写真下)。

車庫には洗浄スペースも設けてあり(写真下)また、メンテセンターも広々していて清潔感が溢れ、働きやすそうな環境づくりに努めているのは、フランスのどの都市の車庫とも共通している(写真下)。

これだけの施設を地方の小都市が整備するには、どのくらいの予算を投与しているのだろう?【続く】[:en]

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