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2018年4月14日京都講演・みやこ都市交通フォーラム

09 03 2018 | Conférences 講演, Kyoto 京都, LRT, Urban Planning まちづくり

  • 「みやこの都市格の向上」という題目で、1時間30分の基調講演をご依頼いただきました。300席ホールなので、是非、周りの方々にもお知らせ頂ければ幸いです。
  • PDF版のチラシはこちらから。4月14日京都講演チラシ

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  • 1895年に早くも一般営業路線として開通した京都市電は、1910年に京都市が買収した。戦後も路線は拡張され、最盛期は76.8km、車両351両(1957年度)、乗客利用数も、1963年には一日平均564,488人の利用があったとされている。しかし、日本の多くの他都市と同じく、モータリゼ―ション化の影響を受け、一般車の市電路線上への併用乗り入れを受容したために、市電の速達性が失われ、地下鉄導入へと市当局の政策が決定。路面電車は1978年9月末に全廃されたが、当時は大きな反対運動があった(路面電車撤廃に対する反対署名は26万集まったそうだ)。
  • フランスでも100都市以上でかつては路面電車が走行していたが、クルマ優先の時代に入り1960年代に、3都市を除いてすべてが撤廃された。しかし70年代後半、80年代にはクルマの弊害が都市を脅かすようになり、すでに地方都市でも、大量輸送が可能な公共交通手段の再導入の検討が始まっていた。だから、京都で市電が廃止された1978年というのは驚きだ。日本の方がクルマの普及化が、欧米よりも少し年代がずれていたことを示すのだろうか。周知のように、フランスでは1985年のナントを皮切りに、現在では28都市に、一度は撤廃した路面電車を、トラム(LRT完全低床車輌バリアフリー・高機能路面電車)という形で再導入した。LRT導入と共に都市空間の再配分を行い(道路空間を歩行者や自転車空間に整備)、公共交通は中心市街地の再活性化をもたらした、都市のシンボルとなっている。
  • 京都では路面電車撤廃後、1981年には地下鉄(現時点での総延長距離31.2Km)が導入され、1997年には第二路線の東西線も開通した。 地下鉄烏丸線導入の際に路線再編成されたバスは、1928年から京都市によって運行が始まっていた。現在京都市交通局の運行するバスには、複数の路線系統やサービスがあり、また京都府内には京都交通京阪京都交通京都バス京都京阪バスという民間バス会社も存在する。JR京都駅前のバス乗り場では、バス運行情報を分かりやすく来訪者に伝える工夫がたえず行われている。大人も子供も100円で利用できる市内循環バスもあり、京都市内のバス利用度は高く、バスに乗って座れる、ということも少ない。最近では一日乗り放題の観光客向け1dayパスも導入され、京都住民も路線バスを利用しにくい混雑、という状況もみられる。
  • その後、2001年には京都商工会議所(当時は京セラ稲盛氏が会長)からLRTの提案がなされ、他にも多くの都市交通計画に関する提案があった。京都の北部、今出川では沿線住民や商工業者が団体を結成し、京都市にLRT路線案の提案を行なったり、また2007年には社会実験が行われた。しかし、半日の短期間での社会実験では、一般市民には残念ながら「混雑した。車ユーザーには迷惑だった」という印象しか残らないことが多い。フランスでは社会実験は2から3か月間行う。住民はその間に、公共交通の想定路線に慣れてしまう。そして、いっときの「クルマを利用する自分の動きの不便」だけではなくて、「どうしてクルマの車線を少なくするのか?」「将来どんなまちを、次世代に残したいか」といった、いわゆる「持続可能な都市づくり」や「環境問題」について考える時間の余裕ができる。
「第3回今出川通りの交通まちづくりとLRT検討協議会」の資料より。社会事件の際の、交通調査箇所を示す

「第3回今出川通りの交通まちづくりとLRT検討協議会」の資料より。 社会実験の際の、交通調査箇所を示す

  • 京都ではすでに地下鉄が運行しているので、整合性を持たせてLRTを初めとする新規交通手段の導入を検討する必要がある。京都市と人口が近い、フランスの地方都市、リヨン、マルセイユもかつては地下鉄を導入したが、現在ではLRTもBRT(高機能連節バス)も導入して上手く併用させている。また導入工事の際には、道路交通が不便になるので、沿線住民や商業従事者など市民の合意形成が大切だ。日本を代表する観光都市京都において、道路渋滞を解消して、市民がより住みやすい「みやこ」となるために、歩行車空間整備、自転車やバス利用も含めた総合的な「まちづくり」のあり方と、フランスにおける合意形成の具体例をお話しをさせて頂きたい。また、同じく観光都市で、京都市と姉妹都市であるパリも、歩行者を大切にした「歩くまち・パリ」をめざして、道路空間の歩行、自転車空間への転用や、路線バス専用レーン整備など思い切った交通政策を取っている(実際にパリでは観光客は、公共交通と、徒歩で観光ができる)。何が、そのようなパリの交通政策を可能にしているのか? 交通は我々の生活に最も密着した大切な「まちの要素」であることを再確認し、健康、福祉にもつながる社会の基本サービスとして、公金を投入してLRTやBRTを導入、運営しているフランスの都市の現状をご紹介したいと思う。

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