ヴェリヴに次いで、パリの電気自動車シェアシステム(オートリヴ)も危機?

パリのセーヌ河畔沿いに並ぶ、シェアカー・オートリヴ

パリのセーヌ河畔沿いに並ぶ、シェアカー・オートリヴ

  • パリでは、カーシェアリングシステム、オートリヴが2011年に発足したが、今イダルゴ市長はサービス供給社、つまり利用自動車の見直しをはかっているという。オートリヴの事業主体は、パリ市と周辺の6県が加盟している第三セクターの「パリ首都圏メトロポールのオートリヴ・ヴェリヴ事業事務組合」 syndicat Autolib’ et Vélib’ Métropole (SAVM)。フランスの最小行政単位である、112のコミューンと呼ばれる自治体が参加している。
  • 同じ事務組合が管轄しているシェアサイクル・ヴェリヴが、2018年1月から運営依頼先を変えて、サービスが紛糾していることはすでにお知らせした。http://www.fujii.fr/blog/?p=5323&lang=ja 今、カーシェアの方も曲がり角を迎えているようだ。
  • 1
  • パリ首都圏事務組合は民間のBOLLORE社に、シェアカーの運営を依頼し、2016年には3980台が走り、充電ポイント4500か所が、パリ市及び近辺のコミューンに設置された。自動車はイタリア製電気自動車で、250Kmまで1回の充電で移動できる。10万人の年間契約者がおり、年間契約料は120ユーロ、走行1Kmについて2ユーロとされる。しかし一日利用者数が最盛期の17000件から、今12000にまで激変しているという。
電気シェア自動車と充電ポント

電気シェア自動車と充電ポント。写真の通り、清潔な状態のクルマは少ない

  • 現在のBOLLORE社と首都圏事務組合との契約は2023年まで続くが、事務組合は契約期間の短縮も考えているとパリ市長は6月3日に発表。6月11日にはルノー、プジョー、メルセデス社が、パリ市役所で新しいフリー・フローティングタイプ(決められたカーポートに駐車する必要がない)のカーシェアを提案した。中でもプジョー社は、リスボン市とマドリッド市ですでにカーシェアシステムを展開しており、マドリッドでは3か月間で10万人の契約者を達成した。
  • 不調の原因の筆頭に挙げられているのは、クルマの状態が汚いこと。また駐車ステーションに、しばしば電気自動車以外のバイクや車が止めてあり、パークできない。クルマにアクセスしたが、稼働しない、などインターネットにはユーザーの不満の声が高く、テレビのニュースでも紹介していた。そしてオートリヴの主な利用者には、独身の都会生活者・若い男性が多く、公共交通を利用するよりは個人空間のある車を好むとされる。この支払い能力もあるユーザーたちが、汚いクルマに背を向けて、ウーバーを代表とするVTC利用(運転手付き送迎サービスだと、自分で運転せずに車で移動できる)に移行しているとみられる。
クルマの充電を行うユーザー

クルマの充電を行うユーザー

  • BOLLORE社はバッテリー製造会社なので、パリでオートリヴ事業に参画することが、バッテリーの世界マーケットにおける販売の広がりにつながると考えたのだろう。しかし、モビリティーの運送事業体ではないので、ウーバー、電気自転車、シェアスクターなど、次々と現れるパリ都市圏に適した移動手段と競合できるだけの、サービス向上に努めなかったようである。しかも、BOLLORE社はパリ首都圏事務組合に、運営歳入の補填として、2億2300万ユーロという天文的な数字をイダルゴ市長に伝えている。
  • フランスでは、国民に安い運賃で公共交通を提供するために、政策主体である自治体が、委託先の都市交通の運送事業体に赤字補填を行う。切符収入は、ラニングコストの通常30%くらいにしかならない。しかし、上手く機能していないサービスに、自治体は補填はしない。元の契約では、運営に赤字が生じた場合は、BOLLORE社が6000万ユーロまで自己負担、それ以上の赤字は、事務組合の負担となっていた。
  • 未だに本格的に稼働していないシェアサイクルと相まって、このシェアカーシステムの金銭を巡る紛糾は、環境保全のもとに、モビリティー政策を進めてきたイダルゴ市長には痛手だ。しかし、オートリヴを他の大都市に先駆けて手掛けた結果、街には4500もの充電ポイントが整備された。これは、2万台の電気自動車を、シェア用のクルマとしてパリ市内で走らせることができるという。そうすれば12万台のマイカーを減らすことができる、とパリ市はアッピールしている。新しいシェアカーシステムの運営には、プジョーなどの自動車製造会社だけでなく、Hertzのようなレンタカーの大手会社、スタートアップ企業なども参画に意欲を示しており、パリのモビリティー・マーケットと移動手段はますます多角化されるようだ。

(参考記事。Le Figaro誌・ Les Echo誌)


This entry was posted in Paris パリ. Bookmark the permalink.

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です