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Questions at the Prefecture d’Okinawa

県庁での『一括交付金勉強会』における講演会では、幅広い分野から御質問をいただいたので、幾つかをご紹介したい。

質問 1. トラムと事故

『路線横に柵がなくて、人身事故がないそうだが、どのようにトラムと歩行者が共存しているのかイメージが湧かない。一体どのくらい速度で走っているのか?』

本当に、トラムと自転車、歩行者がすれすれに走行している。

ストラスブールのトラムの平均速度は21Km.500mごとに駅があるので、元来速く走らせることを目的としていない。(ストラスブールの駅数は75)街を歩いていて、目の前をトラムが止まり、大きくドアが両横に開く。そこに乗り込むことに対する、心理的抵抗感が大変少なく、これはモノレールや地下鉄では全く味わえない「乗りやすさ」感。また、トラムの車両連結は30mか45mと長く、改札もないので、電停のいろいろな場所からトラムに乗り込める。

フランスではトラムを『走る街の回廊』という表現もする。まさに、ガラスの透明なエレベーターがまちの景観の中をすーっと滑るように通りぬけてゆく。

トラムが鳴らす「ちんちん」というベルの音を聞いて、歩行者や自転車はさっと身をかわして、路線から遠ざかるのはおなじみの光景だ。

さて、ここで拙著から『事故と障害者への配慮』の一部を抜粋して回答とする。

「ストラスブールを訪れる日本人は、トラムの線路上のスペースを歩行者や自転車が自由に横切っている風景を見て、必ず事故の状況を質問される。ストラスブール都市共同体では、2007年以降のトラムやバス利用者の死亡事故はない。2009年は対トラム負傷者が4名、対バスが2名あった。2002年から2009年までの合計数をみても、トラムに対する歩行者の事故が17件、トラム対自転車が3件、トラム対自動車が8件という少ない数字だ。交通手段別の100万回の移動に対する事故率は、徒歩 0.7、自転車3.5、バイク51 、自動車2、公共交通0.6で、オートバイなどの二輪車の事故率が一番高いことが分かる。

歩行者と自転車も自由に、ストラスブールのトラムの専用線路軌道の上を通行できる。しかし歩行者が歩きにくい石をわざと線路に敷き詰めて、意識せずとも歩行者は歩行者用道路に向かうように工夫はされている。 自転車が線路上を通過する風景も当たり前だ。赤信号でも車がなければ、歩行者が堂々と道を渡るお国柄。日本のように「危険」と表示を派手にかざし、柵やバリケードをつける文化はフランスにはない。ただし、目が不自由な人たちへの配慮は充分に行われている。たとえばプラットフォームには、トラム利用者が立つエリアと線路との間に、杖で触って分別できる小さなでこぼこがついた舗石が一ライン敷きつめられている。同じようにまちの歩道と線路との間にも、全く違った素材の石を使用して舗装を変えており、段差の無い同じ平面ではあっても歩道と線路の区別がつくようになっている長らくトラムの線路の上を自転車で走ってきた一住民として、「トラムが走っているから危険」という認識はゼロだったと断言できる。敢えていえば、トラム線路と自転車を並行に走らせることだけは避けなければならない。なぜなら、レールに自転車のタイヤが入ってしまうとお手上げだ。しかし、これなどは自転車ユーザーの良識の範囲で解決できる。(『ストラスブールのまちづくり』60.61ページより一部引用)