ページを選択

TVR & BRT ナンシー1

02 04 2015 | Actualités ブログ記事, Bus BRT バス, LRT, Nancy ナンシー

ナンシー市のTVRBRT

  • さて、BRTとLRTの双方を導入した大西洋側のルーアン市、ナント市を離れて、BRT導入やバスサービス改善に熱心なフランス東部に移動したい。 パリからTGVで1時間30分で着くナンシ市は1973年から金沢市と姉妹都市であり、42年間、日仏間では一番歴史のある友好関係を結んでいる。 1845年にはすでにパリからの鉄道が整備され、1920年代にアールヌーボー【新しい芸術という意味】が花開いた歴史豊かな都市としても有名だ。
  • ロレーヌ地方の首都として北に位置するメッス市とは都市競合関係にあり、パリとストラスブールを結ぶTGVの駅は、メッス市とナンシー市の間にある正に野原の真ん中に整備された。またナンシー市を含むロレーヌ地方からは毎日7万人が国境と超えてドイツ、ルクセンブルグ、ベルギーとの国境を越えて就労しており、ルクセンブルグとナンシーの間には州政府が経営する州鉄道が1時間に5から6本という頻度で走っている。
  • 図上・メッス市とナンシー市の間に整備されたロレーヌTGV駅。本当に野原の中。

    • しかし、ミニパリのように整然とした大道路がはりめぐされたフランスによくある地方都市と異なり、ナンシー市は枢軸道路が少なく都心部へのアクセス道路も整備されずに人口が増えてきた【市外環状道路は1970年代にやっと整備された】。其の為に今でも交通プランを考え、基幹交通軸を導入するにあたり遭遇する幾つかの難題に対して、ナンシー市が少しづつ回答を見出している経由は、基幹道路が狭い日本の地方都市の参考になるかもしれない。
    • ナンシー市の人口は10万人、周りの20のコミューン【最小の行政単位】と呼ばれる自治体で構成している都市共同体Grand Nancy(大ナンシーという意味)は約100平方Kmに約27万の住民がいるが、実はそれ以外にも周辺の自治体の居住者の殆どがこのGrand Nancy圏に日中は移動している。つまり、雇用が首都圏に集中する一方、居住圏はどんどん郊外にスプロール化してきた。Grand Nancyは自らの行政監督権が届かない地域住民の足確保のために、交通政策を構築する必要が顕著になってきた。
    • ナンシーには現在23のバス路線があり、そのうちの第1線が2002年から走っているTVR(フランス語で『専用軌道を持った交通』という意味だが、固有名詞として使われている)と呼ばれるタイヤトラム。第2路線は2013年に開通したBRTで、すべてのバス走行距離750万Kmに対して年間2350万のパーソントリップがある。
  • 図上・ナンシー市都市交通路線図・ 東西の赤線がTVR,  南北の青線がBRT。それらの間を路線バスが走る。        STANは都市交通の営業名

    ①TVR  TVR導入が決定されたとき、ナンシー市の交通政策の主目的はあくまでも「都心へのクルマのアクセシビリティーを改善する」ことだった。TVR整備と同時に都心18箇所に10000台収容の駐車場を設け、一方通行ではあるが車は自由に都心に進入できるようにした。 (以下、記述の典拠はATLAS2009年、及び2014年のナンシー都市共同体で聞き取りによる)

    鉄道中央駅前の広場を走るTVR

    • 専用軌道導入が決定した1996年当時のナンシー市長や都市共同体議長は鉄輪式トラムを推奨したが、当時はゴムタイヤトラムTVRの方が20%コスト安と言われており、また登攀率10から12%の地区に専用軌道敷設を予定していた為に、Innovatingとさえ形容されていたボンバルディエ社のTVRを採用した。(鉄輪トラムでも登攀できるが、ブレーキ利用率が上がるとレールの磨耗と変形により、インフラコスト高になる)。
  • このあと同じTVRをカーン市が採用した年には、国の管轄省は『一社のみに依存してしまう』リスクを喚起したが、時のナンシー市には何の勧告もなかった。そして世界で50編成しか製造されなかったTVRの半分がナンシーで、もう半分がカーンで走ったが、結局生産が続かなかった。TVRとは普通のバスのような無軌道運転とレール上の軌道運転の双方が可能なシステムで、無軌道運転の場合には3連接のトロリーバス運転と同じで、車輌にナンバープレートが必要であり道路法に拠って運転するので、むしろこれはBRTと言える。
  • 2002年から営業運転を始めた、この2つのデュアルモード・テクノロジー搭載は機体を重くし【32トン、5分ごとに8トンの荷重があるタイヤが道路を通過するため、道路にわだちが出来たので、コンクリート舗装が必要になった。そうなると景観整備上の工夫や緑化軌道は勿論不可能になる】、しかも第一路線の南北両端では必ず無軌道運転を強いられた。北のコミューンSaint-Maxでは、当時の首長が車走行の妨げになることを案じて軌道敷設に反対したので無軌道運転になった。南端ではわずか8mしかない道路幅で、無軌道運転のTVRと沿線住民のクルマが上手く共存している。

TVR路線南先端道路における、BRTと一般自動車の併走

無軌道運転から、軌道運転に変換する地点。TRAMと書いてあるが、TVRは道路法による運転でBRT,つまりバスだ

こうして北東から都心を通過して南西の大学、病院地区までの11Km、28の駅を走る第1路の沿線には、都心人口の4分1にあたる27500の雇用がTVR電停の半径400m以内に集中している。2000年にはナンシー鉄道駅前の結節拠点整備も完成し、鉄道、TVR、バスの乗り換えが見事に考えられている。(続く)

美しく整備された中央駅前広場は路線バスとTVR, BRTの交通結節点でもある

カテゴリー

0コメント

コメントを提出

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です