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交通政策基本法

  • 沖縄EST創発セミナーでの石田教授のお話に戻り(赤字は石田先生、及び小嶋氏のご発言から)、新しい交通のあり方へと人を動かすためには
    1. 拡大MM(モビリティ・マネジメント)とコミュニケーション参画型行政が必要であり、
    1. 総合政策として『交通だけでなく、都市経営『健康・福祉・安全・安心・税収・都市活性化』が必要、とまさにストラスブール市が行ってきた交通都市計画の重要性を説かれた。

    また先生の 「日本の伝統社会ではPublicという概念がなかった。日本語の訳では「公共」「官」(たとえばPPP)「公衆」など複数の解釈がある。これも公共交通への理解がなかなか進まない精神的背景の一つかもしれない。」とのご説明に、フランス語の通訳者でもある私は非常に納得するものがありました。公共交通というのはフランス語ではまさに、「自治体が経営する交通」を指すが、日本では民間が運営しているものでも、市民全体が利用する意味で公共交通と称されているのも、考えてみれば不思議です。

    また、昨年度末に一旦廃案になった『交通基本法』の必要性にも言及されました。小嶋氏も「各界が総力線で臨んだ「交通基本法」は国交省で審議順序を上から3番目まで持ってきたのに・・・政変でつぶれてしまった」と、非常に残念がられておられたが、この11月27日に臨時国会で名称を新たにした『交通政策基本法』が成立したことは、交通に携わるすべての人への年度末の嬉しいニュースになりました。「交通が国民生活の安定・向上及び国民経済の健全な発展をはかるために不可欠である」との共通認識のもと、各省庁横断的に公共交通サービスの有機的活用と、その充実にむけた支援策に加え、「運輸事業の健全な発展」、「大規模災害発生時の迅速な回復」などの条項が追加されています。国交省公共交通政策部が発行している運輸ニュースマガジンでも、基本法成立への担当課全体の喜びが伝わるようです。

    ただし、フランスの『交通基本法』と異なり、『交通権』や『移動権』という表現は入っていません。フランスのように、交通税のような財源がなく、赤字路線廃止などに対する保証に必要な条件もまだ整っていないことが考慮されています。

    またフランスの場合、1982年の交通基本法など一連の法制定により、交通行政の地方分権化も図られ、国には交通行政の事後監督権のみが与えられました。 交通事業の許可認可制ではなく官選の知事が、「プロジェクトの合意形成の内容と諸法律【自然環境保護などに関する法例】との整合性のチェック」、「交通事業の安全面からの評価や確認」を行い、知事が『公益宣言』を発令すれば、事業を開始することが出来る。自治体が具体的にどのような交通手段を導入するかなどは、全く自治体の裁量にゆだねられました。こうして自治体に都市交通マスタープランの策定を推奨し、その後1996年のLAURE法(大気とエネルギーの効率的利用に関する法律)で、人口10万人以上の88の自治体に、PDU・都市交通マスタープラン* の策定を義務付けました。*(PDUについては http://www.fujii.fr/blog/?p=1727 )

  • ストラスブールの最新のPDU【2025年ターゲット】の表紙(117ページのマスタープラン記載。に250ページの交通状況分析書が別途付随) 目次は以下。【 1.現状 1.1      2000年に策定された都市交通計画(PDU)の実施結果1.2      検証から得られた主要な教訓・2.      今後に向けて取り組むべき課題・3.      持続可能な都市づくりへのヴジョン・4.      野心的な到達目標・5.      成功のための原則設定・5.1      アクション(都市交通計画実質的な施策を意味する)の枠組み・5.2      優先的アクションの5基軸・6.     アクション総合時系列計画表・7.      実施とフォローアップ・8.      都市交通計画(PDU)のアクション】。ただし、このPDUのストラスブール都市共同体議会での審議・承認は、2030年をターゲットとしたPLU(都市マスタープランである地域都市計画)に総合させて行われる)
  • 一方、今回の日本の『交通政策基本法』では、各自治体の自主意志に任せるという趣旨から、自治体に対する『都市交通計画』策定の義務付けは記載されていません。 また、国には『交通に関する施策』の策定・実施が義務付けられており、交通マスタープランとなる『交通政策基本計画』が2014年度に閣議決定の予定で、また毎年国会に報告するための『交通政策白書』(仮称)が作成されることとなっています。
  • この7月に国交省で講演のあと、総合政策部の皆さんから日本の現況についてご指導を受けるという貴重な機会を頂き、その時に印象に残ったお話の一つが、「バリアフリー法も成立するまでは様々な弊害と無理解があって大変だったが、成立すると公共空間の利便性が劇的に変わった。だから交通基本法も成立すればやはり社会が変わってゆくだろう」というコメントでした。(確かにキャリーバッグを持って移動する私は、日本中のどの駅にもかならずエレベーターとエスカーレーターがあることを確認している。一方、フランスの都市内交通機関のバリアフリーは進んでいるが、地方都市の鉄道中心駅ではまだ階段しかない駅も多い。(フランスのバリヤフリー法については http://www.fujii.fr/blog/?p=2573)実際に法案を作ってきた方がたの話には実感がこもっていた(ように思う)。【写真下・P+Rで見た標示・子連れの家族には出入り口に近い場所に駐車が可能になっている。余り日本では見かけない絵文字サイン】
  • 青山教授も土木学会で言及されたように( http://www.fujii.fr/blog/?p=2035 )、「急がば廻れ」でやはりこの交通政策基本法案成立がこれからの「交通まちづくり」の基本的理念となり、公共交通支援へとさらに世論が注目することを期待したい。【写真下・警察庁(県庁管轄)を背後にストラスブール市のバスとトラム・一目で公共交通が分かるようにデザインやカラーが統一されているので、観光客にも利用しやすい。フランスでは公立の幼稚園や小学校なども含めて、すべての公的機関の施設の正面には必ずフランス国旗がある。】

警察庁を前にしてバスとトラム

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