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公共交通(バス)活性化シンポジウムレポート 3 「十勝バス野村社長の講演内容から」

02 04 2013 | Actualités ブログ記事, Bus BRT バス, Conférences 講演, Okinawa 沖縄県, Symposium シンポジウム・パネラー発言要綱, Urban Planning まちづくり

  • 3月3日沖縄県での「バスを対象とした公共交通活性化シンポジウム」では、十勝バスの野村社長のお話に、現場で苦労・工夫された方の臨場感がありました。気候条件が沖縄と同じように厳しい(下記注1)北海道は、やはり完全なクルマ社会。

経営者としてだけではなく、複数の観点から公共交通活性を見つめてこられた社長の素晴らしいお話です。

1. まず現場からの視点にたち、『結局はバスで勤務している人間が誇りを取り戻すことが肝要』

以下、社長のお言葉から。つまり余りにもバス利用が削減したため、運転手をはじめ従業員たちが、「自分たちは世の中から必要されている仕事についていない」、という感覚が染み付いていました。しかし最近はバス利用が増えて乗客との会話がはずみ、子供や高齢者から感謝される機会が多くなった。今では乗組員が会社の企画会議などにも積極的に顔を出すようになるほど、前向きな態度に変わっています。

印象的だったのは、社長である野村氏が『戸別訪問をやれ』と言っても、誰も聞かなかったこと。『社長が言ってるのですよ!!それくらい、みんなあきらめムードでした』

2. そこで、利用者の視点にたち、とりあえず1つの停留所の半径250m以内の所帯の聞き取り調査、個別訪問を始めたそうです。社員は『どうぜだめだけど、社長があそこまで言っているから、一件くらいやろうか・・』という態度だったそうです。

そこでヒヤリングを行った結果判明したことは、『不満じゃなくて、不安だから乗らない』。 そこからのストーリーは全国的に良く知られていますが、『バスの乗り方』の周知徹底を行われました。

3. 営業的には、バスは乗ることが目的ではなくて、どこかに行く目的があるから、バスに乗る、という利用者の行動様式を把握した。そこで、幾つかの行き先を組み合わせた『日帰り路線バスパックチケット』などの企画商品を開発されました。

また、帯広バスやタクシーなどの他の業者ともコラボして、十勝バス路線が走っていないところは、他業者がスムースに入れるように設定。こうすれば、『ユーザーは十勝に行けば、何処にでも交通手段がある、ということが分かり、人の出入りが増えます』。見事な利用者視線で、利便性を図っておられます。

   (3月3日 公共交通活用推進シンポジウム・十勝バス・野村社長の講演スライドより)

4. 経営者として全国を見据える視点・そして最後はやはり全国的なつながりを持つためにネットワーキング作り。 野村社長は情報交換を積極的に行いながら、『地方と地方とが連携した、公共交通活性化を通じた地方都市の振興』に尽くされています。国政への働きかけも続けておられます。

私も欧州に30年間住んで、かの地の地方都市がそれぞれに個性的で賑い、住民が地方都市生活を堪能しているのを見てきました。日本に戻ってきて、地方都市の衰退ぶりにショックを受けたことも私が『ストラスブールのまちづくり・トラムとにぎわいの地方都市』を書いた動機のひとつです。ですから、野村社長のおっしゃる『もっと地方都市が元気にならねば』というお言葉には大いに共感しました。

これからもどんどん十勝バスの動きが展開されることを期待しています。

さて、その野村社長が全くうらやましいとおっしゃる、沖縄県庁のバス政策については別の頁で詳しく。

(注1)(「沖縄の天候が厳しい」というのは意外かもしれませんが、夏は暑過ぎて誇張ではなく、県民は100mの移動でもクルマです。冬は島なので強い北風がしばしば吹き雨も多い。だから快適な電停が必要です。勿論、信じがたく海が美しい素晴らしい晴天の日もあります!)

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