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  • 20131111日、滋賀県庁新交通システム検討協議会・質疑応答2 (数字等、当日の発言に若干の補足説明を加えています。

①交通評論家の堀内氏から

問い・「警察が関心を持ってくれている」と言われたが、日本では警察は取り締まり、罰金徴収を仕事と思っている人が多いが、どうすれば警察の協力が得られるか?

ヴァンソン藤井・「関心を持っている」と言った覚えはなく、警察の協力が得やすいと紹介した。フランスの市長村警察のトップは市長なので(ちなみに県警のトップは知事なので、知事が公益宣言を出した都市交通計画実施に対して、警察が反対をすることは稀)、公共交通への優先信号導入、交通迂回政策などの条例化、実行が簡単である。日本のように県警との調整などは必要ない。交通実験も行政の中で、自治体が直接行っている。宇都宮先生の表現で「LRTは行政の総力線」なので、大局的に設定された都市交通計画に従って、道路交通や整備、街路や緑地整備(たとえば、芝生軌道の草刈作業も自治体が行っている)、駐車、広報、法務すべての部局が一つの目的に向かって職務を分担する形になっている。この行政各部局のすりあわせは、一般市民への事前協議を行う前段階で自治体内で行われる。

参考までに、CUS(都市共同体)の職員7000人(経済人口48万人に対して)の大きい政府だからこそ、人材資源が豊かでこのようなまちづくりを可能にしているのかもしれない。

補足説明・ 沖縄では58号線上の基幹バス専用軌道設置に対して、警察からの許認可が難航している。警察も市民からの苦情を懸案しているようだ。日本とフランスでは警察に対する距離感がまず違うという事実がある。「交番」自体がフランスにはない。だから日本はまず交番に行って陳情するという行動様式があるが、フランスでは、例えばトラム工事が始まり自分が今まで車を止めていた処に駐車できなくなった場合、市役所の交通課に陳情に行くので、基本的には市役所が窓口になって対応する。

写真下・ストラスブール市でみかけた芝生軌道用の芝生刈り機。このような業務もストラスブール共同体の緑地整備を担当する課で行っている。

問い・校長先生からの(交通)教育など学校での啓蒙活動をフランスでは行っているか?

ヴァンソン藤井・現在ストラスブールは2025年をターゲットにしたPDUを作成したが、この中でモビリティマネジメントに8分の1くらいの頁を割いている。その啓蒙活動の対象は、大きく事業体と学校に分けられていて、事業体に対しては、「乗り合い自動車システムの促進」などを通じて一人乗りクルマ通勤を減らすことを目標としている。学校に対しては、日本のような集団通学システム(ウオーキングスクールバスシステムと称され、大人を先頭にして児童たちが並んで歩く集団登校形態はイタリアから始まった)を導入してゆく(注・欧州では中学校に入るまでは、大人が必ず児童を学校まで連れてゆく。当然クルマによる移動が大半を占める。)そいういった内容が、すでにPDUに記載されている。また中学校1年生では、公共交通、自転車利用、対自動車に関する安全教育が全児童に行われている。

また、ストラスブールではトラムが導入されてすでに20年たつ。当時免許を持っていなかった高校生たちがすでに30代、40代になり、都心に出かけるには公共交通が当たり前という世代が育っている。

②滋賀県にLRTを走らす会・代表の目野氏から

問い・7年間活動してきたが、状況は余り変わっていない。「それで、どうするの?」という後がない。

ヴァンソン藤井・ストラスブールも最初からこんなに素晴らしい計画があったわけではない。ストラスブールは先駆者的に都心からクルマを排除したが、これは「公共交通を導入する」という戦略が出来た時点で、「クルマを排除しなければ路線敷設工事ができない」という事実を上手く戦術として利用しながら、少しづつクルマを排していった。最初から「クルマを排除する」とだけ訴えたのでは当然合意形成は得られなかった。

また、全員が賛成できる公共性の高いプロジェクトは存在しない。また政争の具にも利用される。ストラスブールでもかつて、緑の党がトラム導入計画に反対するという事態があった。それなら、首長の判断で、最大公約数の市民が恩恵を受ける公共政策を遂行する。トラム導入初期の市長は反対派からひどい攻撃にもあった。しかし、「このままクルマ中心のまちを放置すると、身動きできない都市になってしまいますよ」と官が民を最初は指導してきたともいえる。だからどちらかというと、官が民を啓蒙してきたのがストラスブールの1990年代。今の丁寧な合意形成を施行したのは2000年代からである。

草津市の社会教育委員(委員長)・檀原氏

問い・どのくらいの道路幅でLRTは導入できるのか?

ヴァンソン藤井・道路幅は、むしろフランス都心の方が狭い。「車道を残すという選択を排除した」時点で、道路幅の問題はなくなる。道路空間をどの公共交通手段に優先を与えるかということをまず決める。

問い・LRT導入に関しての現在の課題は?

ヴァンソン藤井・合意形成のあり方が変わってきた。ストラスブールでは1966年までトラムが走行していたので、1989年に再導入を決定する際に、昔の乗り心地の悪い昔の路面電車のイメージの払拭が難しかったことと、又いったん廃止したものを再導入することに対する自治体側の説明責任もあった。これは今の京都市でも同じことだと思う。また当時は、不安から商店の反対が多かったが、最近では政治的な判断から反対されるケースがあるので合意形成も難しくなってきた。ただ自治体の方もノウハウを身につけてきたので、反対者が「純粋に情報が少なくて不安で反対」なのか、「裏に政治的グループが控えている」のか、の判断がつくようになってきたので、対処は出来るようになった。

だた、これだけ合意形成を行っても、トラムが走る沿岸住民の一人ひとりにとっては始めてのことなので、やはり同じように丁寧に合意形成を進める必要がある。

④草津市都市建設部理事・川崎氏

問い・「縦割りをなくしてゆく」、「共同体をつくる、大津市と草津市、県とで協働してゆくこと」が大切だと理解したが、今それさえも出来ていないのが現況なので、フランスの1980年代のことから学ばなければならない。その頃はフランス行政内では福祉、環境、雇用で縦割りはなかったのか?

ヴァンソン藤井・1967年の「協議区域整備法・ZAC」によって、広域自治体連合を形成することが認可された。自治体連合のトップは中核都市の市長がなり、連合を構成するコミューン(行政の最小単位の自治体。フランスの自治体には市長村の区別がなく、すべてコミューンと称される)の村長たちが議会の議員になる。この広域自治体連合には議会も行政も予算もあり、コミューンからは加担金が人口に応じてあり、コミューンは「金も人も口も出す」という仕組みで、最初はごみの共同処理やスクールバスの共同運営などを行っていた。そのうちに都市交通計画樹立にあたって、ストラスブール市だけで計画を行っても、実際に都心に通勤、通学するのは周辺の自治体から来るので、一都市だけで実行しても意味は無く、広域で交通計画が進んだ。これはフランス全土に共通した動きで、現在26都市でLRTが導入されているが、ほとんどが広域自治体連合の運営である。

縦割りについて、ストラスブールに関しては市長のもと、それぞれ交通政策、財務等の担当別に、17人の副市長が任命されている。同じ政党の中核的メンバーが 副市長になるので、首長のヴィジョンや戦略がスムーズに、副市長を通じて行政の各局に伝わる仕組みになっている。(副市長が各局のトップと業務を進める)。

写真・船と電気自動車と自転車に徒歩。自動車の無い都心での散策は楽しい。

  • 最後に宇都宮先生のコメント

日本とのギャップはあるが、ヴァンソンさんの本にもあるように、フランスにも反対が多いところをやってきたので、我々、行政や学界に人間ももっと必死に汗をかけばよいのか、とも考える。そして汗をかいていると、法制度につきあたる。上下分離を可能にできる法律【地域交通活性化法】成立のために私もロビー活動に関わってきたし、現在臨時国会で審議中の【交通政策基本法】も多くの人たちの活動の結果といえる。これから変わるチャンスもあるし、20年後には長高齢化社会になるわけなので、その準備も兼ねてこういう協議会が次のステップにゆくきっかけになればと願っている。

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