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「地域再生と鉄道」交通協会シンポジウム・レポート4

19 04 2014 | Actualités ブログ記事, Conférences 講演, Ibaragi 茨城県, Symposium シンポジウム・パネラー発言要綱

  • ひたちなか海浜鉄道会社は、順調にご利用を伸ばし、H25年度は開業以来最高の年間輸送人員83万人を達成しそうです。茨城県では日立電鉄や鹿島鉄道の廃止が相次いだが、茨城交通が2005年全長14.3Kmの湊線の廃止を発表したおり、地元のひたちなか市は、市長、市議会、市民が一致団結して鉄道の存続活動を行った経由がある。2007年にはひたちなか市は、茨城交通と共同出資する第3セクター会社を設立し、2008年「ひたちなか海浜鉄道」が設立され、新社長全国公募を経て、万葉線の吉田千秋氏が社長に就任された。(参考文献・『鉄道復建』宇都宮浄人著)
  • その吉田氏は『地域公共交通活性化のモデルが少ない。1Km延伸するだけでも苦労しており、先例主義なので、前例がないといろいろ難しい。』と現状を述べられ、また新しい「交通政策基本法」などの上手い活用法について尋ねられると、『地方鉄道は今ある制度の中で、精一杯生きてきた。』と答えられた。『地域鉄道の数値化できない地元への貢献なども含めて、経済効果を客観的に示すことのできる調査のノウハウ樹立を有識者にも助けてほしい。』と宇都宮先生を初め有識者に訴えられた。 たとえば『用地買収や営業の収支性、経済効果などを議員に示しやすいようなノウハウのサポート』。一民間企業ではそこまで体系化して調査をまとめるのは難しいが、現場では「一応やってみる」と姿勢で勿論様々な試みを実行しており、又事業者の勘は当たるそうだ。そういった社会実験の結果を基にして、『社会的便益性の数値化モデルを誰か作って頂けないか?』という問いかけがあった。
  • 鉄道の見えない効果をどう上手く提示するかは大きな課題の一つだ。 ただ、宇都宮先生からは「数字にはどうしても誤差が出てくる。数字ばかりを見ていると大きなものを見落としてします。ヴァンソンさんの本にも、「ストラスブールの人が、日本人に『数字よりもこの街を見てください』と語るくだりがある」とお話され、「費用だけがクリアに分かっていて、公共交通の効果を数値化できずに、地方交通を廃止させるわけにはいかない」と結論づけられました。

撮影者:おらが湊鐵道応援団写真部 ひたちなか海浜鉄道HPより

  • また吉田氏は「ローカル鉄道・地域づくり大学http://www.community-daigaku.jp/about/ を設立し、地域鉄道活性化の人材育成に努めてられています。吉田氏自身が富山から茨城まで来られたのですが、これからはそれぞれの地元で人材を供給できるようにとの願いからです。(起立されているのが吉田氏
  • 今後地域鉄道が活性化するための方策についての質問を受けて、私も「専門集団を育てる・外からの雇用も大切」と述べました。
  • それに対する富山市神田副市長のコメントをご紹介いたします。「全くそのとおりです。富山市は人材の活用にはこだわっていまして、適所にその道の専門家や専門的な知識に明るい職員を配置することは市の組織力を高めるためには、大変有効な方法だと思っています。 たとえば、富山市には路面電車推進室という課レベルの室がありますが、富山ライトレールの整備着手以来、市職員で特に鉄道に詳しく興味を持っている者を配置し続けていました。本人は、定年退職後は富山ライトレール㈱に再雇用されており、専門性を活かせる職場で生き生きと仕事をされています。また、彼の後輩で鉄道技術に関する知識では鉄道会社社員にも負けないくらいの技術力のある人材が育っておりまして、その専門性を活かすため路面電車関連の業務に長く係わって頂いています。6年ほど前、ドイツの地方都市(ブレーメン市)を視察しましたが、行政で交通政策に携わっている人材が量的にも質的にも非常に厚かったことに驚きました。また、人材の獲得という点では、外から積極的に専門性の高い人を採用することも大切で、富山市では「持続可能な社会資本インフラ」を実現するため、橋などの社会資本の長寿命化を担当する技術職員を全国公募し採用を決定しました。この4月から市に勤務して頂くことになっています。」
  • 鉄道の便益証明についてのサポート、人材育成、次々と出来る新しい法律をどのように上手く適用してゆくか? 課題は多い。つまり、現場のオペレーション (事業体)と、法務、財務、広報(国の法律・補助金・議員・市民の説得を目的とした合意形成)を上手くつなぐ必要性が高い。 これは交通政策(「交通まち づくり」から見れば、広く土木政策)の行政(この場合は地域公共交通を支える地方自治体)へのアウトリーチでもあり、”実際に公共交通を実現させるには何 が必要かを研究する”ところがあってもいいと思う。                                                                                            ”公共交通の基本政策を樹立する地方自治体+運送にあたる事業体”と “国、道路管轄者(警察)” の間をコーディーネートできて、法務、財務に明るい人材。そして住民への合意形成の面からは、土木の内容を理解した上で、簡素化して上手くコミュニケート できる人材。 コンサル業界にも経験・知見豊富な人材は多いのだから、そういった専門家集団のコンソーシアムが組めて、一定の期間、明記された責任範囲の中でその責務 (たとえばLRT路線10KMの敷設や地方鉄道の再編成)を果たすことができるような、フランス風の専門軍団の可能性を、これから考えていってもいいので はないだろうか? などいろいろと考えされられた、吉田氏と神田氏のご発言でした。
  • 地域交通活性化には鉄道運営にあたる人材と共に、鉄道を中心とした公共交通の必要性、重要性を理解する市民の存在も欠かせません。以下、『ローカル鉄道・地域づくり大学』HP「2012年実施レポート」より、ひたちなか海浜鉄道を支えてきた市民活動についてご紹介させて頂きます。
  • http://www.community-daigaku.jp/school/report

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