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  • 西日本旅客鉄道株式会社・常務執行役員・二階堂氏のご発言内容です。交通新聞3月28日第4面より
  • 二 階堂氏は、「エリアに沿ったサービス供給が大切」ということを何度も強調された。担当エリアがずば抜けて広いJRだけに、もしシンポジウムでもっとお話で きる時間があれば様々な具体的な例を挙げられたことと思う。また『交通政策基本法』などについても、「新しい枠組みを示していただいたので、アウト プットを出さねばならない。しかし場合によっては、交通政策基本法は読み方によっては、何もかも自分でやりなさいというふうに読めないこともない。」と注意 も喚起された。
  • 『交通政策基本法』や『公共交通活性化再生法』の見直しについては、シンポジウムで何度も話題にあがった。 以下、富山市・神田副市長のコメントから・ 「公共交通の運営方法の見直しは、昨年成立した『交通政策基本法』や今国会で審議される予定の『地域公共交通活性化再生法』の改正などがきっかけとなると考えられますが、それ以外にも、関連する法律や予算制度、さらにその運用と調整が必要で、全体としてどうやって現場で実際に使われる制度を確立するかが課題だと思っています。さらにこれも、組織のあり方や人材配置と上手くからめて実効ある施策として展開する必要がある、と考えています。」
  • さて、ここからはフランスの場合(都市域内・公共交通)についてです。
  • 当方にも「これから基本法や活性化法が上手く機能する秘訣は?」と会場から質問を頂いた。ヴァンソン藤井のコメントから・「日本の今後は測りかねるが、フランスでは良く知られているように今から30年も前、1982年に『国内交通基本法・通称LOTI』が成立し、『交通権』が早くから定義された。しかし、法律は制定するだけでは機能しない。フランスでも1996年に『大気法』が制定され、人口10万人以上の自治体で『交通権』を住民に保障できるような『都市交通計画・PDU』の策定を義務付けたことにより、都心への公共交通導入のスピードに拍車がかかりました。 フランスの地方都市でLRTやBRTの導入が進んだのは2000年代です。そして、国の法整備、自治体による都市交通計画の策定、自治体に対する国からの補助、計画実行という流れが出来ました。又、自治体に各5年毎に都市交通計画の社会効果を調査する報告書作成を義務付けたために、各自治体はこの通称『LOTIレポート』というものをかなり詳細にまとめています。 つまり「計画の見直し」、そしてそれをさらに「次の計画に活かす、というPDCAのサイクルが樹立したともいえます。しかしこういった一連の循環サイクルが上手く機能するまで、20年間の試行錯誤があったことも事実です。」

まちの夜景と調和した美しさを見せるストラスブールのLRT(街の夜景と調和した美しさを見せるストラスブール市のLRT/写真・VINCENT-FUJII)

  • 交通シンポジウムでのヴァンソン藤井の発表レジュメ・交通新聞3月28日第4面より

  • 会場からは当方に「首長が公共交通の大切さに気がつかない場合にはどうすれば良いか?」という質問も頂きました。「市長が多分一番恐れているのは、次の選挙での落選かと思う。だから対抗候補者のマニフェストに都市交通充実化のプログラムを導入して、公共交通の大切さをアッピールし、現政権を刺激してはどうか」と答えました。「実際、フランスでは全国一斉に6年ごとに地方都市の選挙が行われるが、現在LRTが運行している各都市の開通年は、選挙の前年が多い。つまりフランスのLRTは6年毎に完成する。やはり工事中は「公共交通も運行しない、車も通れない」で、住民の評価は芳しくない。だから、次期選挙までにLRTを運行させ美しく再整備された都心を住民に評価してもらうことが、首長にとっては非常に大切だ。このように、政治の力とそのタイミングを、公共交通の充実化にも利用してゆける」。
  • 最後のコメントとして以下の2点を挙げました。
  • 1. 「都心への新たな公共交通導入は、大きな経済活性化へのきっかけにもなり、鉄道関連の方には運行サービスの請負業務への進出、土木建築関連の方には新しいまちづくりに参加できる大きなビジネスチャンスと捕らえていただきたい。 実際フランスでもJRに対応するSNCFが、地域鉄道運送会社Keolisを設立して都市域内交通運送サービス業に積極的に乗り出している。 またストラスブール市では、LRTの工事ごとに市民向けのニュースレターで工事のために雇用された人数を報告している。 しかし日本では、細かい問題点をすぐに指摘される傾向があり、たとえば運転手の資格一つを取っても、非常に区分されているので、そのように簡単にはゆかないと聞く。フランスのストラスブールで軌道運送会社に「なぜ、運転手さんの愛想が皆良いのか?」と尋ねると、「採用試験のときにまず運転手の人柄をみる。運転免許を持っていなくても採用して自分たちで教育を行う。」という回答が返ってきた。システムや安全規制の相違もあって、一概に判断できないが、これくらいの柔軟性があってもいいかもしれない。」

左図・典拠2011年GART

「フランス国内 都市交通運送事業体のマーケット分布図・路線KMを対象としている。国有鉄道会社SNCFの子会社KEOLIS社が30%獲得。

  • 2.「これから日本の人口が減少してゆくからこそ、『住みやすい街』に人口が集まる。日本も今後『都市間競争』の時代に入ると思います。ストラスブール市も多くの国と国境を共有しているため、早くから「まちの魅力」を高めなければ、企業も大学生もどんどん海外に流出してしまうことに気づいていたからこそ、思い切った都市 交通計画を進めてきました。都市間競争に勝つには交通の便利なまちづくりが肝要です。 いつもストラスブールに行って感心するのは、市役所の職員や地方交通運営会社の従業員たちが持っている「自分たちの住んでいるまちへの誇り」です。 「僕たちは、こういう交通インフラが整った美しい環境都市に住めることが誇りだ」とはっきりと若い人たちが発言しています。 日本も東京における成功モデルだけではなく、これからは地方都市における生活に誇りが持てるように、地方でもっと豊かに生きられるように、そのきっかけとしてまず車だけではない交通手段が整ってゆくように、ということを皆さんと一緒に願ってゆきたいと思います。

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