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ナントの総合的交通政策 6

19 03 2015 | Actualités ブログ記事, Concertation 合意形成, Nantes ナント

  • ストラスブール市と同じく、どの時間帯でもナント市のトラムはいつも人で一杯だ。 ちょうどトラムの中で乗り物利用調査を行うグループに出会った。日本では中々協力的に回答をすんなりと得られない、と経験者から聞いたが、ナントでは殆どの利用客がきちんとアンケート調査に答えていた。

    LRT車輌内で聞き取りアンケートを行う女性・軌道運送業者TANのバッジをジャケットにつけている

  • そしてトラム車輌内にはモビリティー・マネジメントの一貫として、いろいろ市民に移動方法の情報を発信するポスターがあり、見ていて楽しい。下は「ローラースケートの様にスムーズに公共交通で移動しよう」と呼びかけるユニークなポスター。実はフランスでは現在60歳以上の世代が最も車に依存した生活を過ごしてきた。この世代は日本と同じで、クルマがステータスシンボルであったが、この人口が現役から退き、より経済的な公共交通利用に移動モードに変換するかどうかが、実はどの自治体でも一つの課題になっている。フランスでは経済的な背景もあるが、概して若年人口層の方が、自転車などの環境にやさしい移動モードを選択したり、また自動車を共有することにも余り抵抗感がないようだ。

    シニア世代にお徳な公共交通定期券のお知らせ。日本では余りこういったポスターは無いそうだが、フランス人が年金生活者に対して持っているイメージが分かっておもしろい。

    こちらは青年層を意識した夜の外出にはお徳なカーシェアリング利用を進めるポスター

  • ナント駅構内には、「ボンバルディエ社はフランスで2000人が、皆さんの毎日の鉄道車両改善のために働いています」、というポスターが何枚も貼ってあった(写真の車輌はSNCFフランス鉄道会社ではなく、州政府が運営する近距離での通勤、通学に主に利用される地域内鉄道の車輌)
    • さてナントにいて、上手く説明できないが、「活力がある」と感じた。それでいて情緒がある。川岸を走るトラムから見える川岸景観。大学キャンパスが続き、かなりの市街地まで行っても人が途切れず、美しい街並みが続く。 (写真下・かつては車が駐車されていた川岸の再整備。LRT専用軌道と自転車専用道路、散歩道の敷設、河川まで歩いて降りることのできるテラス階段整備で、景観が素晴らしく変わった。)

    LRTの車輌から見える運河景観。かつては車が駐車していたスペースを自転車と人が往来する

  • ちょうどフランスを代表する週刊誌の一つL’EXPRESS誌特別号で、「持続可能な都市」パフォーマンスについて、フランスの地方都市50を比較した大きな記事が出た。以下の5つのパラメーターがあり、その中の「経済」でナントは2014年度1位であった。 (この調査は毎年行われており、順位が変わるが上位10位は同じ都市が占める)
    • 全就労者の中に占める知的、有資格労働者の割合(単純労働者が少ない)
    • 失業率
    • 2002年から2012年までの雇用増加率
    • 15歳から24歳までの若者のニート率
    • 新設企業の5年以上の存続率

    つまり、ナント市は若者が大学を卒業して、知的な職業についたり、起業したりする環境も整っているわけだ。ナント都市共同体も企業誘致の便宜を図っており、たとえばナント駅の近くには38万平方M2のスペースを占めるEURO NANTESビジネス区が存在し、小規模実業家のためには、2014年2月にはナント中ノ島に4000M2の産業遺産建築を再整備して、オフィス、共同スペースとして提供した。現在150の小企業や自由業者に貸し出している。パリからたったの2時間30分のTGVで(2時間30分を「たった」、と捕らえるかどうかは、日本とは異なるかもしれない)生活費が20%下がり、気候温暖な大西洋岸で生活することができる。パリでは80M2の平均家賃が1600ユーロ(勿論地区によって大きな差がある)、ナントでは150M2で1200ユーロと発表されている。

    ちなみにこの比較チャートにはそのほかにも「環境」【廃棄物リサイクル、住民一人当たりのグリーン面積など】健康」【平均寿命、病院施設】「社会政策」【社会住宅など】 、「モビリティー」「自宅ー通勤通学に要する時間」、「公共交通専用軌道の充実度と利用者数」、「自転車専用道路や徒歩専用空間の整備度」と、かなり詳しい調査が行われてるが、全体パラメーターを平均してもナント市は2014年度2位になっている。

    2013年には欧州委員会から「Capital verte de l’Europe」ヨーロッパ緑の中心都市(環境都市)と指名されたナント市のこれからも楽しみだ。(2014年選出都市コペンハーゲン。毎年 都市計画、交通政策、エネルギー効果の見直しに努力した都市に与えられるコンクール)

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