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TVR & BRT ナンシー 2

12 04 2015 | Actualités ブログ記事, Bus BRT バス, LRT, Nancy ナンシー

  • さて、このTVRは2022年で運行終了が決定している。
  • TVR敷設初期に起こったレールからわだちがはずれるトラブルなどは現在では完全に解消されており、単なるトロリーバスとしての運行には何の些少もないが、当初の見通しとは異なり、メンテや道路の再舗装などで結局鉄輪式トラム以上のコストがかかってしまった。
  • すでにhttps://www.fujii.fr/?p=3363で述べたようにフランス国交省は2010年に、『ナンシー市とカーン市における都市交通圏ネットワークの診断と見通し』レポートを発表し、政府はナンシーとカーンの両市に、ボンバルディエ社車両の耐用年数経過後の運用方式の変更を強く勧めた。ちょうどナンシー市は現在入札をかけている。既にカーン市では2018年からの鉄輪式タイヤトラム導入工事が決定している。
  • ナンシーではカーンと異なり、TVR車輌は都市共同体の固定資産なので、原価償却を最適化するために、2022年からの新しいシステム開通が予定されている。候補は①鉄トラム、②トランスロール社のタイヤトラム、そして③BRT。BRTは輸送能力から考えて不十分。トランスロール社製を選べば、ボンバルディエ社製と同じケースになり一社に依存してしまう。だから標準化されており、しかも競争原理が働いていて今後のさらなる改善が見込める鉄トラムが有力視されている。
  • また、現在第一路線のTVRが走行している都心南の坂の道路はどうするのか【前頁の写真】? ナンシー都市共同体の回答はきわめて簡単で、①登攀率が低い別の道路に軌道を整備するか、②或いは12%坂には全く軌道を敷設せずバスを走らせ、トラム軌道は人口密度が高い東地区に整備する案などが考えられている。ただ其の場合、東に向うトラムと南に向う【現在はTVRが走行している坂を走る】バスとの交通結節拠点への工夫が必要だ。これからナンシー市がTVRに代わり、どのような公共交通手段を導入するか注目したい。

【写真上・利用者の便宜を第一に考えたTVR車内の運行情報パネル・現在位置・乗り換え情報を分かりやすく提示し、広告は一切無い。】

②ナンシーのBRT

  • さて、久しぶりにナンシーに来ると至極格好いいバスが走っている。TVRで足踏みしていたわけではなかった。ナンシーでは1990年代のPDUですでに3路線敷設が構想されていた。信用乗車だけは導入できなかったこと(ナンシー都市共同体は次の2つの理由を挙げている。①道路幅が狭いので切符券売機を電停に設置するスペースが取りにくい。②また一部の道路ではBRTと一般路線バスと電停を共有しており、利用者が信用乗車と従来のバスでの切符購入の手続きが異なると混乱する)を除けば、13,5Kmを走るBRTである。ルーアンなどの都市のBRTの項でも述べたが、「出来るところからバスを出来るだけ優先させて運行させている」例をここでも見ることができる。最初からすべての条件が揃ったBRTでなくても構わないのだ。それぞれの都市が現状に合わせて工夫をしているのが実態だ。
  • ナンシー市では300M間隔で配置された電停が39もあり、運行頻度はラッシュアワーで5分間隔、運行時間帯も5時15分から夜中の12時30分までと大変長い。何よりも素晴らしいのはIRIBUS社のCREALIS NEO車体で、その格好良さから市民は『トラム』と呼んでいると聞いた。
  • 写真上・第二路線BRTの颯爽とした姿

  • 車体の長さは18mしかないが、ドアが4つあり、今では古くなった感のあるTVRタイヤトラムより、こちらのBRTの方が都市景観に与えるインパクトが強い。フランスではトラムもバスもスタンダードな車体が用意されており、量産によって製造コストを下げている。しかし、それぞれの都市らしさを出すために、外側の塗装や内部のレイアウトを差別化するデザイン料が、バス代金の中に含まれており、発注側の自治体のコンセプトにバス会社のデザイナーが応じる形で、それぞれの都市の特徴を出したデザインが決まる。ナンシーではTVRの白色に合わせて、BRTはさらに高級感を醸し出す真っ白な車体に、黒色のシックな縁取りがある。バス内部パネルの運行情報も完璧だ。
  • 写真上・BRTの顔・バスの正面デザインをフランス人は『顔』と表現する

    TVR導入初期からナンシー都市共同体で勤務するエンジニアの言葉を幾つか。

  • 『市民は自分の習慣が変ることを嫌がる。なぜなら人は交通プランが変ることによって、失うものはたやすく想像できるが、新しい交通プランがもたらす利点や素晴らしい点の想像は出来ない』『だから、新しく導入する政策の利点を説明する必要がある』『人はこのように運転できるからこの道を通行するのであり、どうしてもその道路を通行する必要があるわけではない。だからクルマが必ず通らなければならない道路などない。もし公共交通を導入するために、クルマの迂回が必要になれば 「ドライバーはAutrement et ailleurs, つまり、『クルマは別の道路を(In different ways and elsewhere)走ればいい」』と、言い切った。
  • 同じことを今の日本で、自治体が市民に向かって発言するのは難しいかもしれない。(ヒヤリングをされた日本の先生によると、『日本では市民が、「なぜ他の処を走るというその不便を他の人ではなくて、私が負わなくてはならないのか」という声が上がるだろうということだ)しかし、フランスのエンジニアがこういう考えと覚悟を持って、市民に対して説得に当たっているということを知って欲しい。
  • BRTの専用路線

    STANWAYの営業ネームで運行されているBRTのお洒落な車体デザイン

    BRTが通過する地点には、周囲の景観や舗石との調和を賭しつつも、コンクリート舗装を整備している

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