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フランス西端の海岸都市ブレストのLRT

30 01 2016 | Actualités ブログ記事, Brest ブレスト, LRT, Urban Planning まちづくり

  • 前回紹介したLorientから海岸線沿いに北上するとブレストBRESTという人口14万の都市には、2012年にLRTが導入された。

  • DSC00770講演でよく紹介したが、ブレスト市は同じ時期にLRTを導入した、フランス中央部のディジョン市とアルストム社の車輌を53編成を2008年に共同発注し、同じ時期に単独購入したマルセイユ市に比べて、単価の30%減少に成功した。(ブレスト市が20編成、ディジョン市が33編成。ディジョン市は車体を華やかなピンク色に塗装し、それぞれの都市のアイデンティティを表現している)ちなみ公表数字ではこの時の価格は、1編成あたり約2億7000万円(1ユーロ・135円で換算)であった。

    DSC00768LRTは14.3Kmの一路線しかなく駅数は28。ブレストの市内には写真入りのとても分かりやすいトラム路線地図が目に付く場所にある。第二次世界大戦で爆撃を受けたブレスト市には歴史建造物は余り残らず、どちらかといえばコンクリートの多い没個性的な街並みであった。だからLRT導入と同時に同市は思い切った景観整備、それも主要駅には斬新なアート作品を配置することにより、まちの雰囲気を一新させた。「ART In Line」(トラム路線のアート)というタイトルで28駅のうちの、10駅に野外インスタレーションモダンアート作品を配置した。下の写真は「埠頭」と名付けられた4つの交錯する階段。天に昇るイメージが突然打ち切られるアイロニーを含んだ、不確実性がテーマの一つだそうだ。

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  • 或いは12メートルのメタルで出来た「確固たる樹木」。この作品はいずれメタルから本物の葉っぱが飛び出してくる、金属と植物が融合するハイブリッド作品で、市街地中心に緑を呼び戻すことのシンボルになる予定だが、筆者が訪れた2015年の夏時点ではまだほとんど植物らしきものは見られなかった。

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  • DSC00830DSC00804トラムが海を渡る時の橋は木の散歩道になっており、LRTの車輌と共に散策する人が併行して歩く。また車を一切排除して噴水と緑の憩いの1.8Kmの散歩道を都心に整備した。

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  • 軌道にスペースがある場合は上の写真のように、広々としたトランジットモール空間を創出したが、フランスの中小都市で今ではどこでも見られるように、軌道道路にスペースが無い場合は、店舗のある建物ぎりぎりに電停を配置しているし、自動車との並走などが見られる区間もある。非常にフレキシブルな路線設計だ。

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  • ブレストはロリアンと同じく、ケルト民族を祖先とするブルターニュ人が多い地域で、ブルトン語という地方言語もまだ残っている。地域の文化と伝統の見直し、継承への努力が盛んなフランスでは、LRTの駅やまちの通りの標識もフランス語とブルトン語の表記がなされている。
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  • それから、下の写真も他の都市では見たことがない。LRTのドアには「さようなら、またね」のメッセージが。フランス語、英語、ブルトン語の3言語標示だ。LRTは景観再整備のツールとしてだけでなく、都市のアイデンティティーを体現する媒体としても上手く利用されている。DSC00801

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