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新しいヴェリブ VS “Free Floating”シェアバイク No2

18 01 2018 | Actualités ブログ記事, Bicycle 自転車, Paris パリ

  • パリは現在 、自転車による移動は4%でしかないが、「2020年までに20%を目標にする」とイダルゴ市長は宣言している。欧州では25%を目標にしている都市もあり、シェアバイク業者にとっては、興味深いマーケットである。さて、ヴェリブ(Vélib)の愛称で、パリで成功を収めていたシェアバイクは、2007年から10年間ジェーシードコー社(JC Decaux )が運営してきた。Vélibの政策主体である混成事務組合(正式名称はle syndicat mixte Autolib’ et Vélib’ Metropole・ https://www.autolibmetropole.fr/)が、JC Decaux 社にシェアバイクの実務を委託していた。混合組合に加盟している自治体は、そのテリトリー内に設置された駐輪ポートの数に従って、負担金を納めている。(写真はJC Decaux 社が運用してきたヴェリブ)

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  • しかし競争原理を導入した2017年度の公開入札で、フランス・スペンイン資本の小さな家族経営スタートアップ企業スモベンゴ社(Smovengo・http://www.smovengo.fr/)に、業務委託先が変わった。JC Decaux 社が開発した、パリ市内で優先的に広告パネルを設置できる権利と交換に、システム運営に掛かる経費を負担するビジネスモデルは画期的であったが、これでシェアバイク運用と広告権とが、切り離されることになった。2018年から2032年までの15年間の委託ビジネスの規模は、組合の公表によると6億ユーロ(810億円)。JC Decaux 社はパリの行政裁判所に申し立てを行ったが却下され、2018年1月からは、Smovengo社がシェアバイクを運営する。ただし、自転車の修理等にあたっていた従業員315人は、複雑な経由はあったが、結果的にはSmovengo社でほぼ同じ労働条件での引き続き雇用が決まった。
  • 何故、行政はVélibの運用委託先を、サービスがスタートした10年後の今、変更したのであろうか?新しいシステムでは3分の1が、電動アシスト自転車になる。普通車がグリーン、電動車はブルー。自転車の重量は、以前の22Kg に対して20Kgなので、依然として重いが、大きく便利になる点は、駐輪ポートが満杯で駐輪できない場合、すでに駐輪してある自転車につないで駐輪できるようになる。ハンドルにはインテリジェントスクリーンがあり、GPSで地図を読み取ったり、スマートフォーンの充電や、最初の無料タイム30分がカウントできるようになる。またサービスエリアもパリ中心部だけでなく、近郊の自治体にも広がる。今年の3月31日までにパリ市及び周辺の65の中小自治体エリアに、47000本の駐輪ポートと25000台の自転車を用意しなければならないが、ただ、この作業が遅れに遅れている。!! (下の写真は、「オーバーフロー」と言われる、自転車の重ね駐輪。ヘルシンキ市ですでに実証ずみ。写真はヴェリブ混成事務組合が発表したプレスリリースより)

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  •  Vélibのシェアバイクは25000台、1800箇所の駐輪パーク、年契約を結んでいるユーザーは30万人いるといわれるが、現在、Vélibの自転車はパリの路上には10000台も揃っていない 。「自転車や駐輪ポートが足りない、あっても壊れている」など、連日ツイッターやフェスブックで、ユーザーの不満投稿が話題になっている。そんな時に、アジア系の「free floating」バイクが、マーケットに投入された。これはすごいタイミングではないか。
  • 元来Vélib利用者はスマホを使い慣れている若者が多いので、当然彼らは自宅のすぐ下に停めることのできる、新しいサービスに飛びついた。しかし、利用料金などを計算すると、年間70回以上自転車を利用する、つまり毎日通勤や通学に自転車を利用する場合は、価格的にVélibの方がずっと安い。「free floating」バイクは30分ごとに50サンチーム。(Ofoは20分毎に50サンチームだが、変速付きで乗り心地は良いといわれている。) 一方、Vélib は最初の30分は無料。2017年までは年間29ユーロだったが、Smovengoになってからは37.2ユーロ。30%の値上げである。(電動自転車の場合は年間99.6ユーロ。) 2018年中はVélibの年間契約を更新するユーザーには、旧料金の29ユーロが適用される。ちなみに、「free floating」バイクでは、年間契約のようなシステムは存在しない。だから、これからは観光客やお天気のいい季節のみ自転車を利用するユーザーは「free floating」バイクに、日常的に自転車を利用するパリ市民はVélibに残る、と予想ができる。(下の写真は、新しいヴェリブのスマートハンドル。SmoovBoxと名付けられ、国際特許も取得ずみ。写真はヴェリブ混成事務組合が発表したプレスリリースより)

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  • 実際にはすでにパリに出回っている「free floating」バイクも、QRコードをかざしても開錠しないとか、まださまざまなトラブルが報告されている。だから、「free floating」バイクは決してVélib に取って代わるものではなく、Gobee BikeのCEOがインタビューで答えているように、Vélibを補完する移動手段としてアッピールしている。「駐輪ポートにVélibの自転車がない場合、スマホですぐに別の自転車が見つかればいいではないか。」と。
  • そして懸念されている放置自転車の都市空間占拠の問題に対しては、ロンドンではすでにビジネス規範のようなものが設定されたが、パリ市行政では、業者に一種の税金をかけることも検討している。パリにはシェアバイク用の駐輪ポートのほかに、一般自転車の駐輪ポートが25900台分整備されているが、まだまだ不十分だ。パリには古い建造物が多いので、マンション敷地内の自転車置き場も少ない。(車一台分の駐車場面積で自転車20台停めることができるが・・・)だから税金を、自転車用駐輪ポート建設費に当てることも考えられる。しかし課税実現のためには、法的枠組みを設定する政府との交渉が今後必要だ。カリフォルニア州では、業者にシェアバイクビジネスへの参画ライセンス料金を要求し、またユーザーが24時間中コンタクトすることができるホットラインの整備などを業者に義務付けた。これから、さまざまな規制が、欧州各国でも検討されるだろう。どちらにしても年間8000台といわれるVélibの盗難、紛失、破壊自転車の数。Vélibよりずっと華奢な「free floating」バイクがどこまで、パリの荒っぽい利用に生き残ることができるか?どのような対応策をスタートアップ企業が編み出してゆくのか、新しいビジネスだけに今後の成り行きも興味深い。(写真下、パリ市内の大通りの中央に整備された自転車専用道路)

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  • しかし、フランスもアジア系ビジネスの到来をただ見ているだけではない。メッス市でシェアバイクビジネスを展開しているIndigo社(http://www.parkindigo.com/fr/)のように、メイドインフランスもある。アジア系企業が興味を持つような大都会ではなく、人口30万人以下の中小規模の地方都市200くらいをターゲットに絞って、営業活動をしている。Indigo社はVinciグループの駐車場管理ノウハウを専門とする会社でもあり、将来的には自動車駐車場と自転車駐輪所の共通決済が可能な方法を考えている。つまり、これからいよいよ自動車や自転車、公共交通などあらゆる移動方法を組み合わせたモビリティーに対して、駐輪、駐車料金、運賃などの収受も含めて、それらをどのように統括して(スマホで?)、利用を促進してゆくのか、が課題となる。Indigo社のシェアバイクのデモビデオが、それを上手く表現している(下記写真)。それには、まず自動車だけでしか移動できない生活ではなく、「交通手段を選べる社会」の実現が前提だ。

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この文章は、latribune誌、nouvelobs誌、challenges誌、lejdd誌の記事、及び本文中でHPアドレスを明記した各組織の一般公開情報を元に、再構成しました。[:]

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