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Public acceptance and Translorh

2012年6月20日の学芸出版社セミナーでは多くのコメントと御質問をいただきましたので、ご紹介させていただきます。

  • 大阪産業大学人間環境学部生活環境学科 塚本直幸教授からのお便り

合意形成について

 今日のお話は大変有益かつ興味深いものでした。ストラスブールは2度訪問していますが、まだまだ見なくてはならないものが色々あるなあと思いました。

 今日のお話のうち社会的合意形成の部分ですが、日本では仕組みや手順、手続きの話より、そのプロセスを流れる精神、具体的にはまず理念の統一があって、市民に情報を公開し、十分に議論を行って、というようなことの方が興味を呼ぶのではないかと感じました。

特に、「理念の統一」というのは、まず現場主義的話から入りたがる日本のインフラ整備では軽視されていることで、日本でなかなかLRT整備が進まないのもこのことが欠けているからだと思います。

藤井のコメント・合意形成の上流段階で、政策決定者たちの間で、フランスでは徹底した理念の統一作業が行われ、これもコンセルタシオンの一つと言える。フランスでは理系の生徒にも考える訓練が施される。本年度のバカロレア(フランスの高等教育終了資格国家試験)の哲学の課題は、—「国家がなければ我々はより自由になるのか」ルソーの『エミール」から抜粋したテキストの注解  —(もう一つの表題は「 我々は真理を求める義務を持つのか」)

これが理系の受験生への課題ですからいつも驚きます。4時間をかけて、学生たちは小論文を書き上げるこの哲学のテストが、約一週間続く、フランスの大学受験の幕開けです。(バカロレア資格を修得しなければ、大学入学手続きそのものが出来ない仕組み)

ゴムタイヤトラムの導入・ストラスブールで?

今日の質問の中で、新線候補としてトランスロールの話が出てきましたが、これについても関心を持っています。技術的には、鉄輪軌道で構成されているシステムに、ゴムタイヤのものが一つ入ってくるのは、車両や電気系統の互換性の問題であまり採用されないので、今回のトランスロール有力の背景には政治的な事柄もあるように感じられます。

藤井のコメント・ ストラスブールで最新の合意形成の例として、同市が、トラム新路線にゴムタイヤトラム導入を市民に問う事前協議の資料を、セミナーでご紹介したところ、少なくない数の先生方が興味を示されました。今なぜ、ストラスブール市でゴムタイヤか。実はこんなニュースが6月にフランスで発表されています。(ルモンド誌6月6日)

  1. ゴムタイヤトラムを製造しているLohr Industires社(社員941)は、トラム部門(社員200名)にAlstomが85%の資本参加に承諾
  2. Lohr社トラック用トレーラー部門と、鉄道利用トレーラー部門の業績不振が原因
  3. 中国のCSR社が買収に乗り出しため、Alstom社との合議が進んだ
  4. Lohr社はすでに2005年より150車両を製造していました。

  フランス (クレルモン・フェラン、パリT5,T6)・イタリア (パデューエ、ベネティア・メストル)

  中国 (上海, 天津 Tianjin)・コロンビア (メデラン)

しかし、南米大陸までトラムを輸出しているに比べ、世界を代表する鉄道王国の日本で、富山市以降、都心型電車が導入されないのは本当に不思議です。

クレルモン・フェランのトランスロール社製・ゴムタイヤトラム 2006年導入