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Question at OKINAWA prefecture 4

  • 質問5. 観光効果の話があったが、沖縄でもしエコツーリズムが実現できれば大きな効果が上がることは確信できている。具体的にストラスブール市ではどのように観光に効果があったのか?

マルシェ・ド・ノエル(クリスマスマーケット)の例。 観光客が少なかった12月に、トラムとタイアップさせて、中世からあったイベントを観光政策の目玉事業にしてきた。実際にはストラスブールでトラムを導入した当事者たちも、トラムがこのような観光要素になるとは想像していなかった。導入後10年くらいたってから、積極的にトラムを観光に入れ始めた。 『トラムに乗ってマルシェに行こう』 。 それが今から10年前の2000年当初。今ではこのクリスマスマーケットが、3年前から日本にも輸出され、東京フォーラムの地上広場で開催されている(2010年度は期間中に60万人が訪れた)。 ストラスブール市の大きな観光宣伝になっている。 このように、いろいろなものが一体となって、トラムの観光効果が上がっている。 沖縄のように鉄軌道がない観光地で、トラムが走ればとてつもない効果が必ずあると思う。 以下拙著より、観光効果の数字的根拠を紹介したい。

「ストラスブールの地方新聞DNA(下記注・1877年創刊)の発表によると、マルシェ・ド・ノエルの訪問者が2009年度始めて200万人を超えた。マルシェは11月の最終土曜日に開催し、12月25日には300ほど出店するシャレーと呼ばれる屋台小屋の大半が閉まってしまうので、正味4週間が開催期間になる。そのうち140万人が一日に5600円(下記注・50ユーロ)を消費し、60万人が少なくとも一泊して最低16800円(下記注・150ユーロ)をストラスブールにもたらすと概算され、総額179億円(下記注・1億6千万ユーロ)ともいわれる経済波及効果は莫大だ。ストラスブール市の宿泊施設は、1990年代までは冬の稼働率50%だったが、今では 85から90%にものぼり、時期によってはストラスブールから80から100Km離れた民宿まで行かねばならない。 ホテル・レストランだけではなくあらゆる種の商店、とくにお土産屋なども潤い、また冬の間の季節雇用も創出される。」(「ストラスブールのまちづくり」、18ページより引用)

ストラスブール市の中心広場のクリスマスツリーとまちの賑わい (copyright:vincentfujii)

  •  質問6. トラムと景観 「景観が良かったからトラムが成功したとはどういう意味か?」

ただ単に、自動車よりゆっくり進むから景観が見えるだけではなく、景観の一部としてトラムが溶け込んでいる。と伝えたかったのです。

景観再整備のツールとしてトラムを使ってきたのであって、決して輸送問題の解決ツールとしてのみトラムを導入したのではない。 事業者もトラムを導入しながらその効果を学習してきた。まちづくりを同時進行させてきた。

また、フランスでは所得の違いによる住民の住みわけが顕著なので、異なる地域に住む市民の混合、融和対策としてトラムも利用された。あえて治安不安定地域にトラムを通して、異種の住民を混合させることにより、社会の緊張をやわらげる。 ある人口グループを隔離してしまうと、社会の不安要素が増す。知らない者同士のままだと、余計に緊張感が増す。 フランスでは大きな社会問題の一つの解決ツールとしても、都心への公共交通導入がとらえてられてきた。まちの中心広場に多くの人が集まることによる、「文化の多様性を重んじる寛容のあるまち」が、歴代の市長の描くストラスブールのイメージでもある。

行政が率先してお金を投資して、今まで美しくはなかったエリアまちづくりをすると、住民も自分たちが居住しているエリアをいい状態に保存する努力をする。 私はそういう社会実験をこの目で見てきた。