- 5月号はフランスの運輸セクターにおける労働条件(雇用と報酬)の後編で、特に都市内公共交通業界における就労者の姿(年齢構成、給与、労働条件、社内訓練等)を述べた。
- フランスでは産業分野ごとに労働条件が労使協定で決まっており、運輸セクターの法定最低賃金は、2020年1月で時給10.15ユーロ(約1,320円)である。フランスの一週間の法定労働時間は35時間なので(35時間以上は超過勤務手当の対象となる)、1カ月の最低賃金は1,539.42ユーロ(約20万円)で、社会保険料への掛け金などの天引き後の手取りは、1220.45ユーロ(約15万8,600円)となる。ちなみに、労働省の統計研究所によると、フランス全体の民間企業における全被雇用者の12%が最低賃金の水準である。
- 都市内公共交通業界では全就労員の5人に一人が女性で、そのうち25歳から40歳が30.9%、41歳から50歳が33.1%であることからみて、子育て世代にも働きやすい職場であることが分かる(上の図における全業種とは、都市内公共交通セクターに限る)。平均労働時間が週35.6時間と短いこと(運輸セクター全体の労働時間は36.2時間、フランスの全産業界の平均は35.2時間)、また出産や育児をサポートする仕組みが国全体として整っており、各種手当(都市内公共交通業界だけではなく、フランス労働法で定められた最低条件)が手厚いことが背景にあるのだろう。また女性従業員には事務員が多いとの先入観に反して、女性従業員の59.6%が運転手職で、業界全体の運転手の17.8%が女性である。
- またフランスでは勤労年数が40年(公務員は35年)に達すると 、満額の年金が支給される。年金生活に入る平均年齢は62.8歳なので、都市内公共交通業界における60歳以上の従業員はわずか6.2%である。都市内交通業界以外でも、フランスでは70歳以上のタクシー・ドライバーやガードマンなどの、高齢就労者は非常に稀である。などなど、日本の運輸業界と異なるであろう就労状況を詳しく紹介しています。
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