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ロックダウンからの復興経済の行方

14 06 2020 | Actualités ブログ記事, Milano ミラノ

さて日常生活も少しづつ戻ってきているミラノだが、欧州中で一番コロナ感染が早かったために、その後の成り行き、とくに解除後に感染者が再び急増するような事態にならないか、経済的な回復などについても、近隣国は注意深く見ている。残念ながらレストランや商店舗への客足の戻りは鈍く、全体として約半数。観光客が顧客の大半を占めていた、たとえばトリノ通りなどは、普段の客数の20%くらいしか戻っていないと報道されている。

観光産業を支援しなければならない事情もあるが、テレビのメインニュースで「この夏のバカンス」テーマが連日取り上げられ、イタリア国内の観光スポットの紹介に熱心だ(このあたりの事情はフランスでも全く同じだ)。イタリアでは年収4万ユーロ以下の世帯には、500ユーロのバカンス支援金も供給する。ただ実際には、たとえばコロナ以前は30分に1本あったミラノーベニス間の特急が、現在は1日に2本のみ。ミラノ発のシチリア島への8月の飛行機チケットでさえ(エアイタリアは飛行実施を表明しているが)、まだどのようなフライトが飛ぶかすべては定かではない。インターネットで予約すると、後日突然フライトキャンセルのお知らせが来たりする。

2座席に一つだけの使用可能とされているが、それ以前にまだまだ人が少ないミラノ郊外列車。6月15日からはすべての座席が使用可能になった(ミラノ)。

事情はフランスでも同じで7月のTGV予約は例年の20%、8月にいたってはまだ8%。フランス国有鉄道SNCFの社長は40億ユーロ(訳4800億円)の損失を6月14日に発表した。エアーフランスは7月は例年の35%、8月は40%のフライトを飛ばすと発表しているが、予約状況は明らかになっていない。一方、レンタカー予約は例年の40%増し。公共交通を避けて、車で国内移動を計画する姿が見える。フランスでは飲食店も6月15日から全面的な営業が許可されたが、年末までに30%近い業者が倒産するだろうとの見通しを、全国飲食店連盟が発表している。フランス政府はすでに自動車産業には80億ユーロ、航空産業には150億ユーロ、ホテルなどの観光産業には180億ユーロの支援を発表している。

ベンチやエレベーターまでも、Social Distanceのステッカーが(ミラノ)。

フランス政府の暫定発表によると、ロックダウンの結果、各産業界の付加価値税から算出したGDPは、スペインがマイナス36%、イタリアがマイナス32%、フランス・マイナス30%、イギリス・マイナス25%、ドイツ・マイナス24%となっている。つまり観光産業が国内GDPに占める割合が高い国ほど、経済的なダメージが大きい。またロックダウン中の一時解雇中の給与補填額はドイツは上限が2890ユーロ(月)だが、フランスは、4840ユーロ(ひと月)。これだけの手当額の負担に耐えられず、解雇も増えフランスでは失業者数が5月18日発表で457万人(人口約6600万人)にもなり、これは過去25年間で最高の数字だ。

この危機を支えるコロナ復興予算が協議されているが(イタリア国内はすでに550億ユーロの対象を発表)、財源はEU連合に頼る。コロナ感染危機の初期には余りにもEUからの支援がなく、イタリア国民の間ではEUが自国の助けになっていないとの不満が高まっていた。その不信感を、EUに懐疑的な政党の「レーガ LEGA」(イタリアの政党の一つ「同盟」)が表現してEUを激しく批判していたが、5月13日にやっと欧州中央銀行の7500億ユーロの流動性資金の確保が発表された(このうち5000億(約59兆円)ユーロは補助金として、残りの2500億ユーロ(約30兆円)は返済義務のある融資で、借款の償還期間は30年)の形をとる。5000億ユーロはEU年間予算の約3倍の額でいかにこの話題で今欧州が持ち切りか、想像できると思う。EUはGAFAなどの多国籍企業への増税、プラスティック産業など環境汚染産業への課税、金融取引への課税などを検討している。

この、いわゆるコロナ債「復興基金・Recovery Fund」から、イタリアには最高額の1730億ユーロ(約20兆7600万円!!)が割り当てられる(ただし具体的な調整はこれからだ)(同じように被害が大きかったスペインには1404億ユーロ)。イタリアでは約910億ユーロが債務、810億ユーロが純粋な支援投資となる予定だ。このファンドの画期的なところは、その財源がユーロ圏諸国による共同債の発行によって賄われることだ。簡単に言えばEU圏内の裕福な国々も共にファンド(つまり債権)を返還してゆくことだ。つまり、痛みをEU全国で分け合う(債務共有化)という合議がやっと得られた。スウェーデン、オランダ、オーストリア、デンマークなどが反対していたユーロ共同債務だが、フランスとドイツがこの提案をまとめた。今後、夏にかけて各国で2021~27年のEU予算とともに議論される。

フランスもイタリアも、2か月以上に及ぶロックダウンが及ぼした経済的なダメージの結果が出るのは、これからだ。夏のバカンスの後は、厳しい新年度(仕事初めや新学期は9月)が待っている。

教会の中でもSocial Distanceは厳守(ミラノ)。イタリアで5月18日から許可された教会での集会は、祖父母との面会の自由(移動の自由)と共に、国民から最も渇望されていた。

教会の入り口に置かれたアルコールジェル

 

 

 

 

かつてペスト流行の折に、奇跡を起こしたといわれる、奇跡のサンタマリア寺院。大阪や東京都心のお寺や神社と同じく、500メートル間隔で街の至る所に教会があるミラノでは、歩いていても見逃してしまう、素晴らしい歴史遺産が満載だ。

ミラノ市内

 

 

 

 

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