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都市封鎖下における国民と経済への支援策

17 04 2020 | Actualités ブログ記事

  • IMFは本年度1月の予測では世界全体のGDPは2020年度は3.3%の上昇を発表していたが、4月14日にマイナス3%に修正した(コロナ感染対策の都市封鎖が2020年夏に収束と仮定して)。欧州ではイタリアでマイナス9.1%、スペイン8%、フランス7.2%、ドイツは7%それぞれ減少となっている。これらはあくまでも予想だが、イタリアでは2019年度には10%だった失業率が2020年には12.7%になり、フランスは8.5%から10%に、ドイツだけが4%という低い失業率を維持できるとしている。其のうえ、欧州各国は営業や稼働を禁止された企業、国民への給付、医療関係への支援等を目的とした大幅な増加予算を組んだ。イタリアに関しては、建築、運輸、観光業界での業績低下が顕著で、2021年には財政負債はGDPの144.3%となる。

公共交通機関は本数は少なくなったが、仕事を続ける人たちのために運行されている。

②国民と経済への支援策

1)補償とセットの休業要請

感染拡大防止には外出自粛しかない。日本の自粛要請がどこまで有効が分からないが、営業している店舗や利用可能な公共施設がある限りは、人は動く。イタリアも当初は公園や朝市は戸外なので解放していたが、好天気とともに人が集まるのを見て、生活に必要な最小限の店舗を除いてはすべて閉めてしまった。そして店舗の閉鎖や工場、建設現場の休業を義務付けると同時に、国民の最低の生活を保障している。売り上げが激変しても、固定経費出費は止まらない。家賃やテナント料、人件費、社会保険料などの固定費を支払えなければ経営は成り立たず、倒産案件が多くなればコロナ感染が終わった時点で、街の経済の立ち上げのスピードが落ちてしまう。だから営業禁止(要請ではなく、もし営業、稼働すれば罰金を伴う規制である)とセットになった補償は、店舗が中途半端な時短営業ではなく完全休業するための、感染防止対策であると同時に、経済対策でもある。

たとえば、フランスではすでに4月6日の記事「都市封鎖はどのくらい守られてるか」で紹介したように、臨時休業令の対象になった企業の給与所得者には、84%の給与が支払われる(企業が給与を支払い、国が企業に補填する仕組み)。これを「一時解雇手当」あるいは「部分失業手当」と呼び、900万人がこの補償の対象になっており、民間企業の従業員の50%にあたる。この「一時解雇手当支払金」を政府に申請している企業数は現在75万1000で、その半数が従業員50人以下。だからこれは中小企業の救済にもなっている。給与所得者ではない労働者には一律月1500ユーロ(約18万円)が補償される。銀行の貸付条件も緩和され、18万7000の自営業者がすでに銀行から融資を受けた(却下案件は申請の5%で8000業者。)4月13日には医療関係従事者への特別手当や超過勤務支払いの50%超、警察官など困難な状況で仕事を続ける職種の人たちへの手当も発表された。また細部には入らないが、経営困難企業の税金、家賃、水道、電気、ガス料金は支払い猶予や免除などが、財務省のサイトで詳しく説明されている。街に失業者が溢れ社会不安に陥るよりは、「市民の生活を守ることは社会への投資である」!と、財務大臣がテレビで特別予算を組む理由を説明していた。

時には思いもかけない店舗が営業している。ワインとオリーブオイルのみの専門店

イタリアでは一時解雇者の給与は80%補償し、従業員が一人しかいない極細業者にも適用される。自営業者、観光業界、農場で果物収穫を担う季節労働者、アーティストなども最長3か月の間、月600ユーロ(約7万円)の給付が受けられ、すでに480万人が申請している。12歳以下の子どもがいる人は給料の50%が支払われる育児休暇を15日追加するか、あるいはベビーシッター券が月600ユーロまで認められる。その他、家のローン支払い延滞など細かい配慮に事欠かない。

このほか、イギリスもオランダも給与補償を国が実施している。ドイツではアーティストや自由業者に、所得減少証明書無しに、迅速に一人あたり5000ユーロ(約58万5千円)を支給して、欧州でも話題になっている。勿論、国によっては補償額に上限があったり、また申請の手続きが必ずしもシンプルでないこともあるが、給与補填は各国共通だ。日本はなぜ、一人ひとりの労働者や年金生活者の生活水準にあった給与補償ではなく、「一律一人あたり10万円」なのだろう。その考えの根拠を是非聞きたい。

2)格差社会におけるコロナ感染

そしてもし十分な収入の補償がなければ、Covid-19は感染しても8割は無症状あるいは軽症と言われているので、生活のために仕事に出かける人を責めることはできない。コロナ感染から自分を守るために(結果的には感染拡大防止に貢献するが)自宅に籠れるのは、経済的に余裕がある層や、パソコンで在宅ワークが可能なホワイトカラーだけだ。ちなみにロックダウン直前に、パリとその周辺地域から、およそ100万人が田舎(セカンドハウス等)に向けて流出したという統計がある(典拠・パリジャン誌3月26日・携帯電話会社の調査)。3月13日に都市封鎖が実施されたパリで、3月27日のゴミ回収量との比較チャートが発表された(Parisian誌より)。パリ中心部ほど回収量が激変していることから、ホテルや企業数が多いことと共に、実際にセカンドハウスに移動した人口の存在を示している。

Le Parisien誌より。パリ市内におけるゴミ収集量が、ロックダウンの最初の2週間で40%減少。約1000人の清掃員及び運転手が現場で仕事を続ける。

こうして「ウイルスから逃げられる」裕福な人々と、そうではない人々の格差が社会で、特に都市部においてはっきりとしてきた。新しい感染症はロイヤルファミリーから政治家、すべての人間への脅威だが、その危険にさらされる度合いは職種によって大きく変わる。外出禁止令が出ても、医療従事者を筆頭として、郵便局スタッフ、スーパーの店員、廃棄物処理、配送サービスの人たちは仕事に出ている。また受ける経済的影響も、それぞれの職種と収入、ライフステージによって異なる。コロナ感染症は誰もが認識していた格差社会を鮮やかにあぶりだした。社会のインフラを支える、しかし普段は余り注目を浴びることのない、スーパーのレジを初めとする単純労働者たちに、フランスのマクロン大統領は医療、介護従事者たちへと同時に感謝の意を表明している。「あなた方がいるから、パニックなく社会生活が続行されている」と。

お馴染みスヌーピー「請求書を持ってきた郵便配達夫に、家にいるべきだよ、って言いたかったよ・・」実際には、ロックダウン下でも、銀行や郵便業務が円滑なことは心強い。

3)連帯意識(相互扶助)が支える社会

こうして直面した社会の不平等に対して、政府は補償によって格差を是正しようと試みているが(税金を通じた富の再配分なので、これも連帯である)、善意の民意にも溢れている。イタリアで、300人の医師のボランティア募集に対して7900人、500人の看護師のボランティア募集に対して、9400人の応募があったそうだ。被害が最も大きいロンバルディア地方の中心都市ミラノでは、町角のバスケットにパスタなどが置かれ「どうぞ自由にお持ち帰りください」というメッセージがあったり、スーパーマーケットでは「ミラノ助け合い」とロゴの入ったジャンパーを着た若者が、少し多めに食品を買って寄付する買い物客からの寄付品目(どんな生活用品を寄付しても良い)を受けつけている。このように、人々は自分たちが直接知らない人たちをも助けようとしている。

街角に置かれたフード・バスケット

スーパーの出口で寄付フードを回収する若者たち。背中には「ミラノ助け合い」のロゴが入ったパーカー。ここでは白い服を着た女性が、食品を寄付している。

4月8日の市民保護局の発表では、すでに1億1千355万7千ユーロ(約134億円)の寄付金があった。赤十字やNPO団体、教会、各地の医療機関に直接集まる寄付金もあり、毎晩テレビでもニュースの最後に寄付金振込先を紹介している。寄付活動している企業は多く、アルマーニやプラダなどのファッションブランドや各産業も、寄付するだけでなく、医療現場に必要な防護ガウン、装備品や器具(フェラーリでは酸素マスクのバルブ・香水のブルガリは消毒ジェル)の生産を行っている。

一方、フランスでは医療、看護スタッフを助けるための異業種の連携・連帯の取り組みが倍増している。たとえばホテル経営者は、医療関係者が勤務先の病院の近くのホテルで宿泊できるように、空いた部屋を提供。こうして通勤時間を短縮して、また家族への感染リスクも最大限に減らす。「連帯する家主」というサイトも立ち上がり、賃貸用のマンションやアパートを、期限付きで無料で医療従事者に提供している。Airbnbの子会社「Lucky Homes」のサイトなども立ち上がった。またすべての病院には必ずしも十分な食堂があるわけではないので、休業している地元のレストランが病院のスタッフに食事を直接届けている様子も、テレビで頻繁に紹介されている。もっと身近なレベルでも、ご近所で、買い物に行けない高齢者に代わって買い出しを請け負うなど、小さな善意も日常的に具体的な行動につながっているようだ。(続く)

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