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都市封鎖はどのくらい守られているか?

06 04 2020 | Actualités ブログ記事

  • いよいよ東京と大阪にも緊急事態宣言が4月7日に発令されるが、欧米諸国のような罰則を伴う都市封鎖の形は取らなくても、日本は自粛のお願いだけでも、すでにイベントや店舗営業などの中止、大企業では自宅勤務に移行している。一方、欧州全体は非常態勢が続き、イギリスのジョンソン首相が10日間の自宅待機にもかかわらず高熱,咳の症状が治まらないので昨夜入院した(4月6日の夜にはICUに移動)。各国の都市封鎖が進むにつれて、報道やネット上では最初の「封鎖生活ノウハウ」関連の記事から、現在では、①その影響を様々な角度から見る調査記事、②国民への経済支援策、③一体、この封鎖からどのように「脱封鎖」を施行すればよいのか、という課題の記事が目につくようになった。

①都市封鎖の実態について

1)まず欧州諸国の都市封鎖の在り方とコロナ感染対策を見ると、以下のタイプに分類できる。

(かなり忠実に自宅待機を守っているミラノ市民。ミラノいちの賑やかな大運河通りもひっそりとして、UBER EATの自転車のみが走っている。)

  • イタリアの段階的ロックダウン・コロナ感染が一足早かったイタリアでは、休校措置、イベント禁止、夜間の飲食店舗閉鎖と段階的に行動制限を行ってから、3月10日に全面的な都市封鎖に至った。
  • しかし、イタリアから約2週間遅れて、感染者数が増えたフランス、スペイン、イギリスでは、いきなり学校休校や外出規制令が出され、国民にとってはかなり急な展開で、フランスでは3月17日、スペインでは3月15日に全面封鎖を導入した。

(イタリアでの医療崩壊から学習したフランスでは、東部やパリ首都圏の重症患者を、比較的感染者が少ない西部の病院の集中治療室に、TGVや軍のヘリを使って移送している。)

  • 都市封鎖を全く行わないスウェーデン・医療専門家からは感染者数が劇的に増加するだろう(4月6日で感染者6400人)との警告も出ているが、現時点では市民生活は通常通り。集団免疫方式で、国民の6割が感染して免疫をつけるという趣旨で、当初イギリスもこの方式を発表したが、3日後の3月24日に都市封鎖に方向転換した。なお、スエーデンにおける単身世帯は全世帯の50%にも上るそうで、いわゆる自己隔離、社会的距離(他人との距離を1メートル以上あける)などの実施が、大家族同居が多いイタリアやスペインより簡単であるという背景も指摘されている。

 

  • 検査を徹底的に行うドイツの部分的外出規制(感染者数の多い州で規制)・検査を広範囲にわたって実施して症状のない感染者をあぶり出し、隔離して感染を封じ込めるドイツでは、感染者の多い州で3月22日から外出規制を実施。イタリアやスペインの医療崩壊を見たドイツでは、延期できる手術などをすべて中止して最大限の病床を確保する準備を行っており、又、現在ではまだ空っぽの野戦病院などの映像が紹介されている。ドイツの人口比10万人あたりのICUベッド数は約30床、イタリアは12床、日本は5床だそうだ。検査数が多いので分母も大きく、ドイツの死亡率は1.1%と低いが、死者数が775人でそもそも圧倒的に低い。

2)それでは、外出自粛はどのくらい守られているのだろうか?

下の表は4月3日にフランスのLe Parisien誌が発表した、都市封鎖令の内容とその罰則料金のチャートで分かりやすい。

 

都市封鎖が5週間目に入ったイタリアでは感染ピークをやっと迎えたといわれているが、今日までに500万件のコントロールを行い、罰金徴収の対象になったのはそのうちの3%、18万人と発表されている。イタリアでは当初罰金は206ユーロであったが、現在では居住する自治体圏内から、「移動に対する必要不可欠な動機を明記する自己宣誓書」を保有せず外に出ると、400から最高3000ユーロまでの罰金が課せられる(移動の理由を述べる自己宣言書の付随を外出時に義務付けているのは、イタリアとフランスのみ)。しかし自宅付近での買い物や治療行為に伴う外出は認められている。高額の罰金にもかかわらず、たとえば4月2日のコントロール対象になった24万6800件に対して、7080名に罰金が課せられ、コロナ感染陽性で自宅待機期間であるにもかかわらず外出した者が19名いた(Courriere della sera 4月2日誌)。4月4日には9300件の検挙があった。

この「自宅付近」という曖昧な表現を取らず、自宅から1Km以内、外にいる時間は1時間以内とはっきりと数字を示したのがフランスだ。しかし、少なくともこの週末のパリをはじめとするフランス各地の映像を見ると、20度を超す好天気、20日目の自宅待機疲れした家族連れが子供たちとともに町に出たので、テレビでは内務大臣自らが、罰金課金体制をテレビで繰り返し紹介している。

(車に2人乗っていた場合は、罰金は135ユーロの2倍になるとテレビで説明するパネル。2回目の罰則金は200ユーロ。15日間に4回違反すると罰金は一挙に3750ユーロになる。フランス2のテレビ画面より)

 

ちなみに、欧州では4月4日から復活祭(4月13日)の春休みに入る国が多く、4月4日の土曜日は大都市から地方のセカンドハウスに移動しようとする車のチェックが、高速道路入り口で大々的に行われた(フランスではそのために16万人の警官を動員した)。都市封鎖が進むに従って、少しでも広いスペースに移りたいという気持ちは分かるが、今のこの状態でまだ距離のある移動を試みる神経は理解しがたい。「イタリアのコンテ首相は復活祭に家族が集まる機会を奪うのは申し訳ないが、自宅待機を続けるように」とテレビで呼びかけているが、それでも「ちょっと顔を見せて」と子供たちに要求するイタリア・マンマの数は多い。

(営業しているパン屋の前で、2メートルの間隔を開けて並んでいるイタリアの人たち。自宅待機中に季節は冬から春になり、街中のラベンダーが花盛りになった。)

3)市民の生活

欧州中でもマスク不足が大きな課題で、輸送中のマスクが盗まれる事件が後をたたない。早くからアルマーニなどの企業がマスク、医療用の防護ウエアの臨時生産を発表したミラノ市内では、現在では何度も洗える外科手術用マスクもFFP2(KN95・私が購入した薬局では一人5枚まで。このタイプは洗えないが、アルコール粉末消毒で複数回の利用が可能との説明を受けた)も薬局で購入できるし、物流も機能しているのでスーパーなどでの物資不足や買い占めなども見られない。今だに感染者数が多いイタリアのロンバディア州では、マスク未着用で外出すると400ユーロの罰金だが、現場では政府の罰則を待つまでもなく、マスク、手袋着用でないと入店できない店舗も多く、大型店舗では入り口で来店者の検温も行っている。

一方、自国でのマスク生産が無いフランスは中国に2億枚のマスクを発注した。またフランスでは、当初は「マスクは医療従事者と罹患者のみ着用で、一般の人が着用しても効果なし」と公式発表していたが、一転して4月4日より「一般人に対するマスク着用」を義務付ける政府発表がなされ、その一貫性を欠いた姿勢に批判が集まっているが、非を認めてできるだけ国民を守ろうとする姿勢と考えたい。

どの国も海外からの季節労働者が国境を越えた移動が出来ないので、これからあらゆる野菜や果物の収穫作業ができず、生鮮食品の流通に大きな影響が及ぶことも報道されている。また、フランスではゴム手袋の売り上げが342%、小麦粉(パンやお菓子を作る)の売り上げが159%上昇。日本で買い占め対象になるトイレットペーパーは18%増。逆に売り上げが減っているのが63%減のシャンパン。マスクをするのでメイクアップ用品も8.7%の減少という興味深い数字も発表されている。

夜8時になると、アパートのバルコニーに出て、医療関係従事者や物流で感染の危険を冒し続けながら働く人たちへの感謝の気持ちを表意する拍手を行うことは、欧州のどの都市でも続いている。オペラやロックコンサートをベランダで行う者、「ベランダでのクイズ」(Question pour un balcon)番組を企画したり、さまざまなアイデアがあり、スカイプやZOOMでの飲み会だけでなく、人との交流の機会を保ち明るくこの時期を乗り切ろうというする市民たちの姿が、連日テレビで紹介されるのは言うまでもない。(続く)

(「将来はきっと大丈夫」という虹のメッセージ図と、イタリア国旗が街の至るところで見えるミラノ。こういったベランダで、歌ったり、楽器を演奏したりして、近所との人たちと大声で会話して交流?をはかっている)

 

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