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- 豊島区の池袋駅前からLRT導入の企画は2.1Km。今日明日の話ではないが、魅力ある都市型の交通手段提供としてのLRTも、まちづくりの要素としては有効だろう。フランスにも超短距離のLRTが走っている。2014年9月1日に開通したオバーニュ市の2.8KmのLRT。今まで紹介した大西洋岸から、今月はひとっ飛びで地中海沿岸に行く。フランスの国民的作家・マルセルパニョールが生誕したオバーニュ。この近辺を背景にして書かれた一連の小説は映画化され、日本でも観られた方は多いだろう。1990年にパニョールの回想録『少年時代の思い出』の中から第二部・第三部を基にした『マルセルの夏(原題は父の栄光)』、その続編の『マルセルのお城(原題は母の城)』。イヴ・モンタンが主役を勤めた「 フロレット家のジャン』、『 泉のマノン』も有名だ。そこではパリとは同じ国とは思えない全く異なった文化と言語を持つフランス人と、美しい風土とを垣間見ることができる。私はオバーニュに6年間住んだことがある。タイムやラベンダーの香りが混じるかぐわしい空気の匂いがする山並みと、紺碧の地中海に挟まれた素晴らしい土地だ。
- かつてはマルセイユ市からこのオバーニュまで1905年から1958年まで路面電車が走っていた。マルセイユから車出東に走り15分でオバーニュの中心地に着く。「外人部隊」の本部があることでも有名だ。現在の自治体人口は約45000人で、マルセイユへの通勤圏であることから近年人口が増え続けている。
- このオバーニュ市に2.8KmのLRTが2014年9月1日に開通した。フランスではそれ以降LRTの延長路線はあるが新路線の導入はない。2013年2月1日がプロジェクトのDUP(公益性宣言・官選の知事が発令する事業認可)発令で、開通が2014年9月1日だからかなり早いスピードの工事だ。そしてオバーニュでは2009年5月15日からすべてのバス利用が無料だが、LRTもその例に倣う。これは世界初である。無料化されてから、バス利用客は175%増加し、そのうち35%が車利用からのモーダルシフトである。バス運行は15%増となった。
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さて、この一つ目小僧のデザインはやはりぎょっとする。現代アーティストの作品だが、地元では案外受け入れられているようだ。いわく、無地の車体にすると多分遅かれ早かれ、グラフィティーのキャンバスになってしまうので、いっそのこと落書きが出来ないデザインにした、という声まで地元の人たちから聞いた。
- それから、何故人口が5万人くらいの自治体で、バスを無料化したりLRTを導入できるのか?実はオバーニュ自体は小さな自治体だが、そのテリトリー内にハイパーマーケット・オーシャン(AUCHAN)を中心に、一大消費拠点が存在する。だから法人税や交通税(企業に課税され、公共交通インフラ及び運行資金となる。オバーニュは企業の人件費に対して税率1.8%)が潤沢だ。当初はこのショッピングセンターまでLRTを延伸する案もあった。

2.8Kmの路線の一部は道路幅が狭いので、一般自動車が乗り上げる。自動車乗り上げ可能道路はグレイの表面、LRT専用路線になると凸凹の石をはめ込んで、初めてオバーニュで運転するドライバーにも分かりやすい整備になっている。
- さてまだまだ企画の段階だが、マルセイユ市議会とオバーニュ市議会の発表では、両自治体の議員たちは、将来マルセイユLRT・T1路線をオバーニュまで延伸させることに積極的な態度を見せている。そういった風潮を見越してか、既存のLRT路線の沿線にも、建設中のマンションがずらりと並ぶ。フランス第三の大都市マルセイユからLRTで移動できるとなると、オバーニュは現在以上にマルセイユの通勤圏となり経済的な発展も見込めるだろう。
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