フランス最近のBRT(3)ポーの水素バス・その1

23 05 2026 | Actualités ブログ記事, Bus BRT バス, Pau ポー

新しいBRTシリーズのEVバス、電気トロリーバスの次は水素バスを紹介したい。フランスでは2024年5月時点で公共交通として54台の水素バスが運行していた(その後ベルフォール市で7台のバス火災などがあり、2026年の運行台数は減少)。その他にも将来の導入を予定している自治体も数多いが、現在運行している水素バスはサフラSAFRA社(フランス・2025年に中国のワンラングループに買収された)とヴァンホールVanHool社(ベルギー・2024年に破産申告)の生産で、そのうちVanHoolの水素バスを2019年から運行させているポーPau市の現況を述べる。

2024年5月、公共交通として都市域内で運行されている水素バス(長距離バスは除く)出典・Ataway experte dans la fablication de stations & bornes de recharge en hydrogène

まず水素バスだけでなく、ポー市全体の公共交通事情を見たい。日本人には余り馴染みがないかもしれないが、スペインとの国境に近いピレネー湾若麓に位置し、風光明媚な人口7万人の都市で(2014年から2026年まで市長を務めたバイルーBayrou氏は、2024から2025年まで首相でもあった大物政治家)、中心市街地には風情ある古い街並みとポー城が残る。

ピレネー山脈を越えるとスペイン

交通政策は周辺の37のコミューンと構成する人口約24万人の都市圏共同体で実施しており、地域規模は先のナンシー市、オルレアン市と似ている。公共交通としてバス路線が17系統あり、そのうち水素バスが走るBRT路線が1系統。運行事業体イデリスIDELIS社(都市圏共同体政府が100%の株を保有)には350人の従業員がおり、そのうち250人が運転手である。こんな小さな自治体で、2019年に18mの水素バス8台、2023年には12mの水素バスを4台購入した。

水素タンク、水素から電気に転換する燃料電池、電気バッテリーを車体上部に搭載する18mのヴァンホールVanHool製造の水素バス

新交通手段導入を検討した2013年、イリザール社のEVバスとヴァンホール社の水素バスが最後まで候補として残ったが、当時はEVバスの航続性が十分でなかったことと、テクノロジー的に進んでいた水素バス導入には、EUやADEM(フランス環境庁)などから補助金が出たことが大きな決定要因となった。水素バス1台が120万ユーロだった当時、トータル900万ユーロがポー都市圏共同体に支給されたが、今ならこんな補助金は出ない。ポー都市圏共同体はインフラ整備、車体購入を含み総額7600万ユーロの投資を行った。水素センターに420万ユーロ投資(水素センターを建築したENGIE社の投資分を除く)、車庫拡張費用180万ユーロ、メンテ工房整備費用など100万ユーロなどを含み、小さな都市としては大きな投資案件であった。車体を提供するVanhool社、水素エネルギーステーションを建設したGN Vert 社(ENGIE社の子会社)、電解槽を供給するITMPower社とポー都市圏共同体は、開発から運行、メンテまでを含む総合契約を2019年から2032年まで締結した。このビジネスモデルは、自治体が新しいテクノロジーを導入する際に良く見られる。そして2023年には12mの水素バスを4台追加発注している。

2023年に追加発注した12mの水素バス。ドアを3か所設けている

開業は2019年12月で、病院とポー鉄道駅の6Km(そのうち専用レーンは85%)を結び、停留所は14ヵ所。7分から15分間隔で運行し、BRT路線6Kmはポー全体のバス路線の7%の距離だが、バス全体利用者の22%を占めているので、人気があり利用度が高いと言える。フェブスFebus(フランス語でFeeとは妖精)との営業ネームでこの走らせており、オーダーメイドで非常にいい皮椅子が配置された車内はとてもお洒落だ。乗り心地も素晴らしい。

豪華な本革張りの車内

FebusにはVISAタッチも導入した。まだ利用状況の実験段階で、路線バス全体には展開していない。

BRT路線沿いの公共空間整備も徹底して行われ、停留所近くで緑地や子供の遊戯ゾーンが整備され、道路空間も歩行者、自転車、BRT専用道、自動車レーンと美しく再配分されている。2021年に法令(ordonnance N°2021-1490 ;EU指令基づき)で、「人口25万以上の自治体では、2022年以降の公共交通新規導入に際してその4分の1には大気汚染ゼロのEVか水素バスを採用する」ように定められたフランスでは、ポー市のFebusは、水以外は排出しないので、CO2ゼロ排出として都市の脱炭素化を高める交通手段としても導入された。

ポー駅前のBRT専用レーン

水素ステーションはバス倉庫の隣に新しく設けた。水素の製造能力は1日あたり最大268Kgあり、バスは8か所の充填スポットで水素を充填できる(35MPaで36Kg必要)。デジタル操作が可能で、ドライバーは充填ボタンを押すだけで充填中はフリーで、バスは順番に充填される(充填に夜は45分、昼は15分かかる)。

水素ステーションの見取り図(提供・ポー都市圏共同体)。バスとステーションの間にコンクリートがあるのは、水素爆発事故からドライバーを守るため。ステーションはバリケードで囲まれ、監視カメラ付きでガードマンも常駐している。

充填スポット

ちょうど水素バスを導入した2019年から2023年まで約100万Kmを走行し、それに対して水素の消費量は150トンであった(水素の消費量は気候やドライバーの運転にも左右される)。電力消費に関してはあ夏の暑い時にはクーラーが必要でコスト高になるが、寒い時はバッテリー(燃料電池)が熱を放出するので暖房効果があるそうだ。8台の18mバスのうち、常に1台は故障かメンテ中とのことだが、この割合は普通のバスと同じだそうだ。

現在ポーでは100台のバスのうち、12台が水素バス、EVバスが10台(メルセデス18mバス2台と12mバス8台)、残りはディーゼルだが、今後すべて電気バスに少しづつ置き換えていく予定だ。そしてポー都市圏共同体では2032年のGNVERT社やITMPower社とのグローバル契約終了時をもって、水素バス利用も終了の予定だ。なぜか?それらの状況については、フランス全体の水素バスの現況を見ながら、その2で引き続き説明したい。

ロープウエイで登った高台では、観光客や地元の人たちが午後のお茶を楽しんでいる

 

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