・ニューヨーク市は今年1月5日から渋滞税を導入したが、連邦政府は4月20日までに廃止するように求めていた。しかし、ニューヨーク州のホウクル(Hochlu)知事(ニューヨーク初の女性知事でもある)は、連邦政府の停止命令には従わず、渋滞税徴収を4月20日以降も続けることを発表した。私はちょうどこの時期にNYCにいたので、少しレポートしてみたい。

「渋滞料金 IS HERE」 とのメッセージがNYCのマンハッタンに入る前の地点で見られるが、これは「渋滞税が導入されました」、つまり、渋滞税が存在しますよ、という意味で、地理的にはこのパネルがある拠点から渋滞税が課されるわけではない。
Congestion Taxeは渋滞税と訳されることが多いが、NYではCongestion Pricingという表現が使われているので、正式には「渋滞料金」の課金である。マンハッタンの60丁目以南に入る車両に、例えば乗用車にピーク時には9ドルが課され(週日、週末、時間によって料金が変わる)、たとえば我々がウーバー車に乗っても、その料金にはすでにこの渋滞料金が含まれている。ただし、緊急車両や低所得者、公共交通の利用が困難な障害者などは、支払いが免除される。また、一般車両やトラックも、マンハッタン島を囲む幹線道路のみを利用する場合は課金されない。

マンハッタン南部に入る橋やトンネルが課金ゾーンとの境界になっている。料金は時間帯、乗用車、二輪車、トラックによっても異なる。CBSニュースより
ニューヨーク州都市交通局(MTA)は、渋滞税の導入で、交通量や所要時間が減少したことをデータで示してきた。
しかし、渋滞税に対しては議会の保守派の反対も多く(このあたり、パリ市議会で保守派がパリ市内の車道減少やセーヌ河畔道路の歩行者専用道路化などに反対してきたことと良く似ている)、ニューヨーク教員組合やトラック協会も渋滞税反対の訴訟を提出しており、トランプ大統領も渋滞税を廃止すると大統領就任前から述べていた(フランスでは交通行政に関しては自治体の独立権が守られており、国は介入しなかった。ただし、パリ市内の大使館や首相官邸付近の道路利用変更や交通管理には国の認可が必要)。NYC市民は渋滞税導入に賛成していることも「、パリ市民はパリ市内からの車排除策に賛成、パリ郊外住民は反対」という構図に似ている。NYC住民に聞くと、渋滞税が導入された1月は確かに車走行量の減少を感じたが、そのうちにYou Tube などでどのように道路を迂回すれば渋滞税を課せられず、マンハッタン南部に侵入できるかを示すビデオが出回り、結局4月では以前と同じくらい車も走っているとのこと。
ダフィー運輸長官は2月19日、渋滞税は市民や通勤者、企業の負担になっているとし、認可を取り消すと発表。トランプ大統領が「渋滞税は終わった。マンハッタン、そしてニューヨーク全体が救われた。国王万歳!」」というメッセージを発信したことは、日本でも報道された。これに対して、NYC州知事は「われわれは法治国家であり、国王に支配されているわけではない」と発言しており、渋滞税はニューヨーク州 対 連邦政府 とホワイトハウスという政治的な局面も表面に出てきた。

王冠をかぶるトランプ米大統領の肖像画と共に発せられた、2月19日のホワイトハウスのX(旧ツイッター)メッセージ
ダフィー運輸長官はマンハッタンに入る高速道路は連邦政府の管轄であり、3月21日までに渋滞税を廃止するように州政府に求めていたがNYC州は応じず、NYC都市圏公共交通管轄機関であるメトロポリタン交通局(MTA)も、「渋滞料金課金は渋滞緩和、大気の質改善、公共交通機関への資金提供を目的としており、トランプ政権の廃止命令は不当」として提訴している。運輸長官は停止期限を30日間延長したが、その期限が4月20日であった。そして今回もNY州は従がわなかったことになる。NY州知事広報官は「このプログラムは効果を上げている。交通量は減少し、カメラは作動し続けている」と述べており、NYC知事とMTAは、裁判所が別段の指示を出さない限りは、カメラ設置と料金徴収は続行すると発表している。
今後の成り行きに興味があるが、ここからはいち観光客の感想である。NYCにはここ10年以上毎年10日間くらい滞在しているが、確かにマンハッタン、特に南部は車の量は多いし、救急車や警察者のサイレンのデシベルも高く、乱暴にいうと「うるさい街」である(それが魅力でもあり、ワシントンのような整然とした静かな都市からNYCの雑踏に戻ると「帰ってきた」と感じる。)しかし、舗道の幅がどこもしっかりと確保されているので、非常に歩きやすい街でもあり、バス専用レーンも充実していてバス利用もしやすい。

NYC 1st Avenue。マンハッタンの南北道路である 1から6番アベニューまでの道路は、バスレーンは赤色、自転車レーンは緑色に鮮やかにペイントしている部分が多い。
2nd Avenueの午後の交通量。混雑税が課せられない60番Streetから北の道路(セントラルパークから北側)では、同じマンハッタンでも車走行量が少ない。

これでもか、という感じで、思い切り広くスペースを取ったバス専用レーン、歩道幅も広く、車道だけが道路空間を占拠しているわけではない。
・半面、自転車はウーバーEATの太いタイヤの電動自転車は良く見るが、パリのような通勤・通学利用は余り出会わず、セントラルパークやブルックリンなど観光地での観光客による自転車利用が目立つ。NYCではやはり地下鉄利用が便利なのだろう。

自転車専用レーンはかなり充実している(マンハッタンとJFK空港の間に位置する住宅地Qu自転車専用道路利用者は少ない。

マンハッタン東西に走るStreetでは, Avenueに比べて道路幅が狭くなるので、自転車専用レーンも、駐車スペースと車道の間というケースもある。
ブルックリン地区の自転車観光客

セントラルパーク外縁を走る自転車利用観光客
・地下鉄では、2019年からVISAタッチが導入され、また2025年12月以降は旧来の磁気カードであるMERO CARDの発行もなくなる(MTAが発行するタッチ型のOMNYカードに代わる)。車内ではその宣伝パネルがかなり目についた。NYCの地下鉄は24時間営業で、それもすごいことだと思う。深夜は看護士、警察官、清掃要員、ホテルや飲食サービス業の者など多くのワーカーが地下鉄を利用しており、我々が想像するようなトラブルはむしろ夜間は少ないそうだ。次回は続いて、NYCの都市空間再編成の写真をレポートしたい。

現在の地下鉄入り口。従来のメトロカードはENTRYの文字の前にある隙間をくぐらせる、というかなりアルカイックな手法がまだ取られているが、来年からはVISAタッチ、或いはOMNYタッチのみとなる。
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