- フランス各地では今週が新年度・一学期が始まる週です。マルセイユやニース付近では週明けが記録的な大雨で、予定されていた入学日が月曜日から火曜日に変更されましたが、大雨一過後はいつもの青空が広がりまだまだ夏の雰囲気です。真夏ほど暑くならない9月はインディアン・サマーと呼ばれ、南仏では6月と共に最も過ごしやすい時期です。
- さて、この夏に見たエックスプロヴァンス市やマルセイユ市、その近辺のマイクロ・モビリティ写真です。
- Aix en Provenceエックスサンプロヴァンス市(以下エックス市とする)はマルセイユ市の北30kmに位置する人口約15万人の小さな地方都市で、日本では画家セザンヌの生家があることでも有名で、熊本市と姉妹都市です。噴水の街とも言われ、パリの裕福な年金生活者が移住する人気都市でもあり、同じ人口規模であるたとえばアンジェ市とは、街中の商店構成も全く異なり瀟洒な雰囲気が漂います。エックス市ではLRTを整備せずにバスを中心に域内交通を整え、主幹道路筋には2019年にBRT(写真下)も導入しました。エックス市は行政的にはマルセイユ広域自治体連合に属するので、現在では交通政策は広域自治体連合の交通局が管轄であり、マルセイユ市内で、見かけるバスと同じロゴで、市の周辺に位置するP+R(パークアンドライド)からBRTが頻繁に走っています。

P+R駅で充電する電気エネルギーBRT。エックス市街地中心部と郊外エリアを結ぶ。
- 一方、旧市街を中心とするエリアは完全に歩行者専用化されており、ミニ電気バスが走っています。日本ではグリーンスローモビリティ(低速・小型電動車両)とも呼ばれていて、ゴルフのカート車大型ととらえられることが多いようです。時速20Kmで公道を走ることができる、電動車を活用した小さな移動サービスと国交省や環境省は位置付けています。ちょうど9月5日に「グリスロ協議会」設立総会が東京で開かれます。元国交省、現在武蔵野大学特任教授などを務められる三重野教授が、交通系の全国団体では数少ない女性トップとして、理事長に就任されます。大変分かりやすいサイトがすでに立ち上がっていますので、是非ご覧になってください。https://www.greenslowmobility.jp/about/
- 三重野教授はコロナ以前に姫路市で開催されたECOMO財団主催のセミナーに一緒に登壇して以来お世話になっており、当時は国交省職員だった三重野氏はその頃から「日本でグリスロを広めたい」と語っておられました。上のサイトには日本国内のグリスロの写真が満載ですが、フランスでの写真を幾つか。
歩行者専用空間である旧市街地中心部では、Diablineとネーミングされたこの小さな電気バス(6人乗り)が回遊している。日本ではまだ少数であるが少しづつ見られるタイプのグリスロ。フランスではグロスリという呼び名は無いが、車走行を完全に排除している地方都市の旧市街地中心部では必ず、このような電気ミニバスを走らせている(社会実験ではなく恒久的に平時運行)。

市内グロスリ・電気ミニバスの案内パネル。この地図上の東西南北は2Km以下で徒歩でも30分かからない。ミニバスには3路線あり、道路上で手を挙げるだけでどこでも止まり、空席があれば乗せてくれる。尚、このパネルとネットでは乗車有料とあるが、筆者は何度も利用しているが料金を要求されたことはない?。また運転手によっては、観光客に街中の観光説明をしながら運転している。

街中にすっかり馴染んでいるミニバス。

そして、市街地中心だけでなく市全体を回りたい観光客には、お馴染みの電気観光TRAINが走っている。これもグリーンでスローなモビリティだが、小さな移動サービスではないので、日本ではどのカテゴリーに入るだろうか?

背後に見えるのが旧市街中心となるロトンド広場とその噴水。こういった観光汽車はフランスのどの地方都市にも走っていると言ってさしつかえない。電気TRAINでは数か国語での観光案内を聞くことが出来る。
- 元々、有名な観光地・避暑都市であったエックス市では旧市街地の歩行者専用化が2017年くらいから急ピッチで始まったが、歩行者空間整備とそのエリアにおけるモビリティ(公共)の提供は、セットになっていることが良く分かります。一方、商業都市であり90万近い人口を抱えるマルセイユ市では「車が市街地中心地でも多い」という印象を持ちます。人口208万人のパリ市で2020年以降500Km以上の自転車専用道路が整備されましたが、マルセイユ市ではわずか15Kmという数字を見ても、いかに道路空間における歩行者・自転車・車の共存が困難で車ユーザーを選挙対策の一環として考慮に入れているかが伺われます。しかし観光客が多い旧港付近では歩行者専用化が整備されてきました。
毎夏、マルセイユ市の中心を占める旧港を取り巻く車道の一部が歩行者専用空間に転用される。パリのParis Plage(パリビーチ)をイメージしたのだろうが、デザインは随分と異なる。この写真の拠点から北側までは車をシャットアウト。
- マルセイユでのウォーカブルについては、一昨年の下記の記事を参考にされたい。/https://www.fujii.fr/villes/marseille%e3%80%80%e3%83%9e%e3%83%ab%e3%82%bb%e3%82%a4%e3%83%a6/%e3%83%9e%e3%83%ab%e3%82%bb%e3%82%a4%e3%83%a6%e3%81%ae%e5%a4%8f%ef%bc%88%e3%81%9d%e3%81%ae1%ef%bc%89%e3%83%bb%e3%82%a6%e3%82%a9%e3%83%bc%e3%82%ab%e3%83%96%e3%83%ab%e3%82%b7%e3%83%86%e3%82%a3/

歩行者空間は赤色とオレンジ色の道路
- パリほどではないが、少しづつマルセイユ市内のウォーカブル度も増している。

ビーチにはベンチが置かれたが、暑過ぎるせいか余り人影は見られない。夕方になると雰囲気は変わる。

歩行者専用空間を回る電気ミニバスも待機中?

ビーチエリアが終わる先にある道路には多くの車が走行しているが、観光客が乗る電気観光TRAINはその喧噪の中をゆったりと進む。

かつては自動車道であったが、旧港からLRTの駅がある北まで200mほどが完全に歩行者空間化されている。黄色いパネルには「ゆっくりと進みましょう。空間を共存しましょう」と自転車利用者と歩行者に呼び掛けている。上の地図のオレンジ色のメイン道路。
- 次に、車でマルセイユ市から30分ほど東にある小さな自治体のビーチで見たマイクロ・モビリティ。

市営のビーチには、救急要員が交代で待機していることが多くなってきた。ここも去年まではこのようなサービスは無かった。

これは、歩行困難者が座ったままで後ろで人が押して海の中まで入れる車椅子。

最近、まちなかでも見る超小型電気自動車(「あなたのまちは電気で走ります」、とのメッセージが読める)。海浜部で救急隊員などが即時移動する時に利用するそうで、砂場の上を走れる。

皮膚がん対策で、無料のサンクリーム提供ポールまで、市が用意した。こういう配慮を見ると、本当にフランスはバカンス大国だと感じる。

マルセイユからイタリア国境までの地中海海岸線は何処も美しい。珍しく風が強いので、ドイツのビーチで良く見るように、海に背を向けているバカンス客。
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