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  • 日本都市計画学会誌で、東京大学大学院工学系研究家教授の原田昇教授が、『フランスの地方都市にはなぜシャッター通りがないのか』をご紹介する長文の文章を執筆してくださいました。

PDFはこちらから。170307都市計画66-2.p98

書評  『フランスの地方都市にはなぜシャッター通りがないのか~交通・商業・都市政策を読み解く~、ヴァンソン藤井由美、宇都宮浄人』、東京大学大学院工学系研究科・原田昇

本書は地方都市再生に挑む人々に大きな希望を与える必読の書である。藤井氏の博識と経験に基づく分かりやすい説明と、宇都宮氏の日本の地方都市再生に向けたヒントを見つめる姿勢が実を結び、楽しく読めて、心と頭に残る、魅力的な本となっている。

実はフランスは日本を超える「クルマ社会」であり、 、高齢化といった構造的問題も日本と同様に存在する。しかし、少なくとも人口 15万以上の地方都市の中心部には人が溢れ、活気に満ちており、「歩いて楽しいまち」となっている。フランスには 、コンビニや宅急便はないが、それらを補って余りある豊かな暮らしが用意されている。本書は、商業・交通政策と一体となった都市計画の果たしてきた役割が大きいとし、国や自治体の特徴ある制度の紹介、その担当者八名のインタビュー、そして、「歩いて楽しいまち」に集う人々の生活の描写により丁寧に説明する。フランス人の暮らし方や考え方に触れる説明は、これらの背景も伝える。

フランスの地方都市に焦点を当てた五つの章を、日本とフランスの現状を概観する一章と、何を学ぶかを論じた七章で挟む構成である。二章は、「歩いて暮らせるまち」の再生を通して地方都市の市街地活性化を可能にした時代背景と法整備の変遷の解説である。三章は、2011年以後のフランス地方都市の挑戦を、徒歩憲章、「出会い空間」、自転車無料レンタル、BRT、など 、特徴的事例により紹介し、これらの都市交通施策を支える仕組みを説明し、「誰のための交通か」を論じる。

四章は、郊外に増え続けた大型店舗と市街地店舗が共存しているのは何故かを説明する。先ず、フランス人の消費動向が二極化し、中小店舗の生きる途があると指摘する。次に、市街地店舗を守る自治体の有効な施策として、①空き店舗への課税、②先売権、③建築許可を説明する。アンジェ市担当官へのインタビューはより柔軟な方法を紹介している。

五章は、中心市街地の活性化につながる商業・交通政策と連携する都市計画を説明する。広域都市計画と交通計画、住宅供給計画を統合させる国の指針が実際に自治体レベルでどう運用されているか、具体的に当事者の証言を入れて紹介する。六章は、市民の視点から、行政が行う合意形成や広報のあり方を具体的に説明する。

本文B5版203頁、図150個、表14個。記述の根拠等を示す脚注は269個に及ぶ。是非、本書を手に取り、心と頭に、我が国の地方都市再生の希望を灯してほしい。

  • 私はカウントしたことがないですが、「本文B5版203頁、図150個、表14個。記述の根拠等を示す脚注は269個に及ぶ。」だそうです!原田先生には、かつて『ストラスブールのまちづくり』の土木学会文化出版賞記念ミニセミナーも主催していただき、前著についで、このたびも素晴らしいコメントをいただき、感激しています。拙著のご紹介文掲載にご尽力いただきました先生方に、御礼を申し上げます。ありがとうございました。

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