80億円予算で行うノートルダム大聖堂前広場と周辺の緑化整備

21 03 2025 | Actualités ブログ記事, Paris パリ, Urban Planning まちづくり, Walkable city ウォーカブルシティ

  • 2019年の火災事故のあと5年をかけて主な改修工事を終えたノートルダム寺院の一般公開が、昨年度の12月から始まりました。多額の修理コストにもかかわらず、フランス政府は大聖堂入場無料の方針を貫き、年間1500万人近いといわれる観光客はあらかじめネットで入場予約を行うことも可能になりました。当初はあっという間に入場予約枠が埋まったと言われていましたが、予約せずとも当日並んで見物することもできます。3月の晴れた日、大聖堂の前で15分ほど並んだだけで、案外スムースに中に入れました。

日中の陽がさして、真っ白に新たに磨き上げられた壁に反射するステンドグラスの輝きが素晴らしい。

ステンドグラスにはしばしば聖書の内容が語られていて、宗教的リーダーはステンドグラスを中世の信者たちにみせながら、聖書を説いたという。勿論装飾的なステンドグラスも見られる。

  • 大聖堂の新しい姿の素晴らしさについては様々な記事がすでに発表されていますので、ここではパリ市が行っている都市空間再編成の観点から、ノートルダム寺院の新しい姿を紹介します。

大聖堂を背にして左側に、緑化整備計画を説明するパネル「まもなく、大聖堂周辺が再整備されます」があります。このパネルでは大聖堂前広場と地下スペース整備を紹介。すでにタグがあるのもフランスらしい。

パネルをぐるっと回ると、幾つかの説明を読めます。「大聖堂の足元にグリーンのスクリーン」。この大聖堂周辺の空間整備は、2028年完成予定。

完成イメージ©Ville de Paris

現在のノートルダム大聖堂前広場の景観(ノートルダムを背にして)。正面にある階段席は、工事中に設けられた観覧席。工事中はこの階段席とノートルダムの間に、仮設会場を設けてノートルダムの歴史、再建工事手法などのパネルを展示していたので、工事中も観光客が絶えることはなかった。

  • この計画は実は火災の2年後の2021年4月15日にパリ市議会ですでに議決されており、予算は5000万ユーロ(約80億円・1ユーロ=160円として)。この予算は、大聖堂前広場整備だけではなく、ノートルダム寺院周辺の4.7ヘクタールの空間の再整備してセーヌ河畔と一体化した緑空間と、現在はパーキングとして利用されている地下スペースを新たに観光客に開放する計画も含みます。

パリ市役所が発表している整備プラン。ピンク色の一帯が整備対象ゾーン。このあたりはZTL(Zone Trafic Limite)ゾーンでもあるので、通り抜けるだけの車は走行出来ない。下の図と合わせて見ると良く分かるが、大聖堂の東側のスペースは、フランス語でSQUARE【四角い形状のミニ公園。パリ市の至る所に見られる】と呼ばれる緑豊かな芝生公園となる予定で、既存の樹木とともに、合計160本の木が新たに植えられ、セーヌ河に長さ400メートル沿う公園となる。ノートルダム寺院の敷地における緑化面積は、1,800m2を見込む。

 

パリ市が2022年6月にデザインを公募し、景観デザイナー事務所Bas SMETS社(https://www.bassmets.be/)とGRAUアーキテクト・アーバニスト・エージェンシー(https://grau-net.com/) が落札した。上は©Bs Smetsが発表したデザイン。

 

大聖堂に隣接するセーヌ河畔の歩行者専用区間、春の景観。ノートルダム大聖堂前広場の緑化は、セーヌ河の景観も意識して行われる。

・このほか、周辺の街路の緑化、歩行者専用化事業なども合わせて行われ、いつもながら総合的な都市空間整備プランを立てている。もう一つの特徴は、現在の前庭の下にある旧地下駐車場は、屋内プロムナードに生まれ変わり、大聖堂の受付が設けられるようであるが、このゾーンが気候を遮るシェルターの役割を果たすことを期している。3,000平方メートルの地下建物には、書店、カフェ、サニタリー施設が入り、最終的には考古学地下聖堂への単一の入り口となる。今は完成像を想像しにくいが、ルーブル美術館の入り口が、ピラミッド建造と共に、地下階に移ったようなイメージだろうか。

 

かつては地下パーキングであったスペースの将来図。©Olivier Campagne

伝統を大切にしつつ、時代に応じてその見せ方、利用法等を柔軟に変化させてゆく姿勢は、一流の観光国、文化国としてのノウハウでもあるのだろう。「800年もの間、ノートルダム寺院は街の変貌の重要な証人でした。大聖堂周辺を再考するということは、何よりもまず、明日の都市に必要な公共空間とは何かを問うことです。大聖堂周辺には、前庭、広場、アラインメント、川岸など、都市の特徴が断片的な形で存在しています。このプロジェクトは、それぞれの場所の質を明らかにし、コミュニティと風土という2つの角度からそれぞれの姿を再考することでもあります。」落札した景観デザイナーの言葉(パリ市役所のHPより引用)。

・パリ市はビデオでも広報を行っています。http://youtu.be/10WatPTp7MA

 

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