- パリ市で交通及び道路を担当する副市長デヴィッド・ベリヤー氏(David Belliard・EELV (ヨーロッパエコロジー・緑の党)選出。フランスでは議員が市長から任命されて副市長となる。)が7月8日(木)、環状道路やパリ市街地外縁部のマレショー大通り、その他一部の道路を除くパリのほぼ全域で、8月末から自動車の通行が時速30kmに制限することを発表した。この施策は、「交通安全の向上」、「騒音公害の削減」、「気候変動への適応」を目的としており、パリ警察庁と協議の上、すでに時速30Kmに制限されていた首都の60%の道路も含めて、パリの殆どの道路がこの制限の対象になる。市はパリを囲んで走る環状道路も50km/hに制限したい考えだが、当分は70km/hとなる。シャンゼリゼ大通り、パリ東のヴァンセンヌの森、パリ西のブローニュの森などを走るいくつかの幹線道路は、すでに時速50kmに制限されている。
- パリ市は、「歩行者、自転車、子供、お年寄りなど、最も弱い立場にある人々にとって、首都の道路を安全なものにしたい」と考えており、かねてから歩行者空間の整備などを進め公共空間の変革を行ってきた。副市長は、「そのためには都市空間における車の居場所を減らすことが必要で、それには速度を下げることから始まります」と述べている。この施策は、「静かな都市」を目指すものであり、また、2020年にパリ市議会で議席を獲得した緑の党の選挙公約の一つでもあった。市長に再選されたアン・イダルゴ氏は社会党であるが、緑の党との連結で2022年春の大統領選挙に出馬することも言われている(正式出馬表明はまだない)。小池知事が都市政策を話題するのは余り聞いたことがないが、フランスではまちづくりは政治と密着しており、交通政策が選挙の大きな争点になるのがフランスの特徴だ。
以下は1年前の投稿記事より。
- パリでは中道左派で社会党の現職イダルゴ氏が再選されたが、イダルゴ氏が過去6年間に実行してきたパリ大改造計画(代表的な広場から車を排除して歩行者空間化。車線を自転車専用レーンに転化など)は、環境保全を目的として「歩けるパリ、息ができるパリ」を目標としており、イダルゴ氏は早くから「緑の風」を上手くキャッチしてきたともいえる。「対抗相手陣が弱かっただけで、決してイダルゴ氏の政策に全面的に協調した票ではない」という見解も発表されているが、パリ中の自転車専用道路や歩行者空間整備工事のために続く果てしない交通渋滞に、あれほど声高に「イダルゴ市長は次の選挙で負ける」言われていた意見は、投票結果を見る限りは少数派だったようだ。
-
- パリ市内で進む、車走行を規制した広場の大改造
-
0コメント