・ポー市では2019年から2023年まで水素バスを100万㎞走らせ、水素を約150トン消費したが、そのうち75%は自前の水素ステーションで製造した。水素ステーションの電解装置が故障するケースもあり、残りの25%の水素は他所からトラックで搬送している。欧州ではCO2を生産しない水素をグリーン(水素)エネルギーと呼び、酸素以外のアンモニアなどから生産する水素を利用するグレー(水素)エネルギーと分別されている。同様に石油化学業界が生産する水素には不純物が多過ぎるとして、グリーンエネルギーの対象外になる。
・電気バスは電気バッテーリーで動くが、水素バスの場合、水素を製造しそれを圧縮して(ステーションで)、モーターにする手間(バスの中で)があるので、一次エネルギー消費量が多く、全体的な効率が低く運用コストが高くなる。水素バスを1㎞走行させるには、電気バスに比べて3倍から4倍の電気が必要で、そもそも水素ステーションでの電解装置等にもすべて電気が必要である。つまり電力コストの上昇はそのまま水素バス運行コストの上昇にもつながる。水素バスは、電気を直接使用する場合と比較して効率が低いとも言える。

①水素ノズル ② 水素タンク ③燃料電池(水と電気を生産) ④電力モーター ⑥電気バッテリー(電力モーターのサポートとしても作用。ブレーキの際に電気回収)。 青線=水素の流れ・緑線=電気の流れ 典拠・Ataway experte dans la fablication de stations & bornes de recharge en hydrogène
・確かに水素は貯めることが出来るのが長所だが、水素ステーションに水素のストックはできてもバスの中のストック容量は限られてくる。ただ公共交通としての水素バスは、毎晩同じ車庫に戻り水素を充填することができる。それから長距離輸送用なら、たとえば100Km走るトラックは大きな電気バッテリーが必要だが、水素ならチューブを搭載すれば良い。

一方、欧州では水素バス車体メーカーの収束が見られる。
・IVECO イヴェコ社(イタリア)の水素バスがカンヌで2026年から14台走行する予定で、カンヌ市は自前の水素センターの建設を2025年7月から開始した(2028年完成予定)。長期的には41台の水素バスを走行させることを発表している。
・SOLARIS ソラリス社(ポーランド)・ドイツなど欧州10か国、24都市で水素バスを供給
・メルセデス社・の電気バッテリーと水素エネルギーの混合モデル(12mと18m)を製造しており、万が一水素に不具合が生じても電気バッテリー(トヨタの60KW燃料電池)で走行できるハイブリッドタイプである。2023年にドイツのマンナイムとハイデルベルグでの導入が始まり、45台に達する予定。
・CAETANO カエタノ社(ポルトガル)・トヨタ(60から70Kwの燃料電池を供給)との共同開発で、ポルトガルのポルトですでに水素バスが運行している。ウイーンに10台、マドリッドに10台、バルセロナに8台、ドイツに60台供給予定。 フランスでは大西洋岸の小都市La Roche sur Yonで、2022年から4台が稼働している。

フランスの大西洋岸の小都市 ラ・ロッシュ・シュル・ヨン(La Roche sur Yon)で、2022年から4台が稼働しているカエタノ社の水素バス「H2.City Gold」(12m)は、トヨタ製の燃料電池を搭載し、5つの水素タンクを備える。満タンで400km以上の航続距離がある。車体には「私は100%グリーン水素で走っています」とのメッセージが読める。写真典拠・https://www.h2-mobile.fr/actus/toyota-caetano-livrent-premier-bus-hydrogene-vendee/
・SAFRA サフラ社(フランス)・フランス唯一の水素バスメーカーであったが、中国のワンラン(WANRUN)グループに買収された。このバッテリーおよび電気バスメーカーは、169人の従業員のうち120人を引き継ぐが、その計画は従業員にとって依然として不透明である。(2025年5月20日の情報)

2021年からフランス中部のオクセール(Auxerre)市で走っていた5台のサフラ社の水素バスは、現在は運行停止。サフラ社がメンテナンスを保証できなくなったため。(典拠・https://www.h2-mobile.fr/actus/bus-hydrogene-auxerre-arret-probleme maintenance/)
・Van Hool ヴァンホール社(ベルギー)・すでにフランスでベルフォールに7台、ポーに12台、ベルサイユに2台、ルーアンに14台の水素バスを供給してきたが、2024年に破産申告をした。高級観光用長距離バス部門とトレーラー事業部門は他の会社がすでに買い取ったが、路線バス部門は買収はまだ未定である。また、フランス東部のべルフォール市のバス車庫で2025年に電気バッテリーからの出火で、水素バス1台から火災が発生し、隣りに停車していた他の6台にも燃え広がった。ただし、水素の安全システムは稼働し安全バルブがすぐに開いたので、水素爆発はなかった。

べルフォール市の水素バス火災 (写真・© Nicola JOLYS France Bleu Belford-Montbéliard)
・また水素ステーションにおける水素生産のメインパーツである電解装置を製造する会社のマフィー(Maphy)社(フランス)が倒産し、フランス国内で水素バスを導入していた自治体の大半は、同社の製品を利用していたので水素の製造が止まり、外部から水素タンクの供給を受けるなどの新しいシステム設置の必要に迫られている。ポー市の場合は電解装置はITM Power社(イギリス)製を使用している。VanHool社からの車体メンテナンスに関するサポートが今後受けられなくなるが、今まで培ったノウハウを活かしながら(8台の水素バスのうち、1台は部品交換用として保留)、2032年までは今の体制で運行を続ける予定である。自治体が政策主体となる公共交通事業体で、自前で水素バスの運行を続けることが出来るのは、現時点ではフランス国内ではポー市だけになったそうだ。つまり、サフラ社、ヴァンホール社、Maphy社の倒産と、水素バス開発に関与した事業者の現状に問題があり、フランスの自治体には今後水素バス車体やそのエネルギー源の供給先の多様化が求められる。
・ポー市の交通担当者によると、「水素バス導入は、旅客輸送サービスを産業の世界に参入させることを意味する」と述べている。つまり水素バスの導入は、単なる交通手段の購入・走行だけでなく、そのエネルギー供給にも直接関わっていく必要性が高くなり、地域で制御できる技術、安全性管理ができる能力を求められる。

水素バスの調査を行った北海道市役所のお二人と。
・一方水素自動車に関しては、フランスではパリで時折「みらい」を見かけるくらいで、水素自動車の普及は余り見られない。それは市内のガレージで簡単に水素自動車のメンテができる体制が整っておらず、水素自動車は製造出来たとしても、エネルギー供給とメンテが現時点では追いついてきていないからだ。電気自動車も昔はそういう状況だったのではないか?と問うこともできる。確かにそうだった。しかしフランスでは法律(2019年モビリティ基本法)で、新規建築物やガソリンスタンドにおける電気自動車用の充電ポイント整備を義務づけた(環境への配慮から、電気自動車利用を推奨しているため)。また一軒家であるなら、ガレージでの充電が可能である。ホルムズ海峡閉鎖の現在、フランス政府は新車買い替えの際にEV車に補助をつけてその普及に再び力を入れ出した(購入者の所得によって、3500から5700ユーロの補助がある。バッテリーが欧州製の場合はさらに1200から2000ユーロの上乗せ。高級車でなければフランスでは3万から4万ユーロでEV車は販売されている)それでも現在フランスにおける自家用車のEV率はわずか4%である。ただし2024年の新車販売の75%はEV,またはハイブリッド車であった。(典拠・https://www.auto-infos.fr/article/vehicule-electrique-l-apres-vente-accelere-sa-mutation-mais-reste-encore-en-phase-de-transition.292100)。それに対して現在のテクノロジーでは水素は自宅で充填できない。水素自動車は、電気自動車のように将来はなるだろうか?

ポー駅前で見たカート車。駅前にはバス停のみがあり、自動車の駐車場は少し離れた場所に整備している。歩行困難者や荷物がある人などを駅前から無料で駐車場まで乗せる。

欧州の主だった都市中心部や観光拠点には、必ず電気ミニトレインが走っている。
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