ページを選択

フランスで、ワクチンパスポートの義務化に!。飲食店、公共交通利用対象

13 07 2021 | Actualités ブログ記事, France こんにちのフランス

  • イタリアは未だ7月11日のユーロカップでの優勝一色だが、昨夜12日にフランスではマクロン大統領の約20分間のテレビ演説があり、ワクチン接種を加速するために幾つかの施策を発表した。中でも欧州で初めての試みだが、ワクチンパスポート(フランスでは衛生パスポートと呼ばれている)を、日常生活の活動において義務付けたいと発表した。

写真はフランス2のテレビ画面より。打ち出す政策に対して、科学的に数値やグラフを提示して、多くの人に分かりやすいように説明している。ただし、大統領への記者からの質問タイムはなく、テレビ演説の形を取る。通常、施策の具体的な内容については、内閣の首相から追加説明がある。

 

  • 背景・コロナ感染の第4波はフランスではこの9月くらいと予想がされていたが、デルタ株感染のスピードが予想していたよりも速いこと、多くのフランス人がバカンスに出かけ始め(現在は、海辺でも予約無しでワクチン接種が可能。1回目と2回目の接種を異なる自治体で受けることもできる。)、ここにきて、ワクチン接種のスピードが落ちたきたことの2つの要因が重なって、最近感染数が激増している。12日は3776件の新しい感染報告があり、集中治療室患者は657名だ。それでも夏のバカンスに向けて、レストラン、カフェも6月から通常営業に戻り、ディスコまで先週から営業が開始された(ただし、入場に際し陰性証明が必要など営業条件があるため、実際に営業を始めたのは30%)。

 

  • 施策・そこで大統領は、「動員の夏・Un été de mobilisation」と名付けて、今すぐに、どんどんワクチン接種を進めるように促した。具体的には
    1. 7月21日(もうすぐ!間近か)から、50人以上が入る文化及びレジャー施設(映画館、美術館、遊園地、イベントなど)
    2. 8月からはカフェ、レストラン、ショッピングセンター、病院、介護施設、長時間の交通機関利用(飛行機、汽車、長距離バス)にワクチンパスポートか陰性証明書の提出が必要となる。
    3. 10月からPCRテストや抗原テストの有料化。フランスは今まで何回でも無料でテストを受けられることができたが、今後はホームドクターの処方箋がある以外は有料化して、接種の加速化を図る。余談だが、PCRは50ユーロ(6500円)、抗原テストは30ユーロくらいになる予定で、日本でのPCRテスト費用(3から4万円になることも?)比較するとはるかに安価だ。
    4. 医療機関、介護機関の就労者、消防士、自宅訪問の看護師や介護スタッフなどに対して、職種を問わず9月15日までにワクチンの2回接種を義務付ける。

ただし、細かい条件(たとえば長時間とは具体的に?、或いはワクチン接種を拒否する就労者への対応など)は提示されておらず、まず新しい関連法案がまもなく閣僚会議で提案され、この7月末には国会で審議、法案をすぐにでも通すつもりだ。

  • 目的・通常の日常生活に戻る、ロックダウンに戻らないことが目的なので、その手段としてのワクチン接種だが、個人の自由に関する憲法でワクチン接種を義務付けることはできない。だから、上のような手段に出たわけだ。

 

  • 背景・大きな反響が予想されるが、しかし「ワクチン接種に導くような施策が個人の自由を妨げるというなら、ワクチンを打たない人は、ロックダウンに戻りたくない人たちの自由(就労や外出)を阻むことになる。そして、ワクチン反対派は、周りの人を危険に陥れているので、市民としての義務を怠っていることになる」という考えが、フランスでは主流になりつつあり、少なくとも大統領はその立場と考えをはっきりと表明した。つまりワクチン反対派の接種しない自由を認める代わりに、接種した人たちの行動の妨げにならないように、ワクチン反対派は自ら外出を制限すれば良いとした。ワクチンパスポートの存在そのものも、個人情報の流用化、不正利用(本人になりすまし、パスポートの偽造等)の問題が指摘されているし、そもそもフランスでは、ワクチンパスポートへの抵抗感が強かった(当初はワクチンそのものへの懐疑派も多かった)。本年2~3月に行われた世論調査では、73%が「導入に否定的」と答えた。「個人の自由の侵害」「接種していない人への差別を生む」「効果に疑問」などが、主な理由であった。しかしデルタ株等、コロナ変異種の思いもかけぬ再感染の状況を見て、経済と普通の生活の回復に大統領は決断を下した形だ。

 

  • EUの状況・EUレベルでも7月1日からグリーンパスポートが導入されたが、入国の条件はそれぞれの国が定めている。デンマークでは自国内で通用するデジタル証明書を発行しているし、観光国であるイタリアも6月からワクチンパスポート(EUのグリーンパスポートにその後併合)を発行し、受けたワクチンの記録やすべてのPCRや抗原テストの結果が記載されている。

フランスでの年齢別、ワクチン第一回接種率(TVフランス2)

  • ちなみに、マクロン大統領は演説の中で、日本もデルタ株の脅威を前にしてオリンピックは無観客で実施になったと発言した。日本はコロナによる死者数は圧倒的に少ないが、現時点ではワクチン接種率が低いので、無観客はリーズナブルな判断だと欧州ではとらえられている。人口におけるワクチン2回接種率はイスラエルで59.8%、イギリス49.2%、アメリカが46.9%、イタリア38.1%、フランス36.1%、日本17.9%となっている(2021年7月12日)。イギリスは一回の接種者も含めると67.6%という高い数字で、現在一日に35000名のコロナ感染者(大変がデルタ株)がいるが、この春の第三波と比べて入院者数や死者数が少ない。ジョンソン首相は7月19日から予定通り、コロナに関する規制の一切を解除する意図で「国民みずからが、コロナと共生する知恵を身に着けてほしい」と演説した。
  • 夏の間だけでもゆっくりとバカンス・・という思惑がはずれた欧州諸国(ポルトガルやスペインの一部では、マスク着用やディスコ閉店に追い込まれている)。日本でのオリンピック開催でスーパー東京株が登場しないことを心から願う。

 

カテゴリー

0コメント

コメントを提出

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です