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フランス地方統一選挙の結果と、その翌日に発表された外出自粛令と国民への経済支援策

24 03 2020 | Actualités ブログ記事

3月16日、マクロン大統領がテレビで、全土で2週間外出自粛令を発令した。仕事、食料品の購入、医療関係以外の目的の外出は自粛というもので、内容はイタリアとよく似ているが、「これは我々の戦争です」と何度も繰り返し、「国民の健康を守るのが一番大切です」とソフトに痛切に訴えたイタリアのコンテ首相と、対象的であった。(テレビで外出自粛令を発表するマクロン大統領)

 

フランスでは14日に、飲食店の営業と集合するイベントを禁止したばかりだが、14,15日の週末はお天気が良かったこともあり、公園や大通りで肩を寄せ合って、外出する人々の映像がテレビでも提示された。「集まって外出することがないように」というソフトな勧告では、誰もルールを守らないことが判明し、医療機関の崩壊を防ぐためには、もっとドラスティックな措置が必要だと、発令の背景を説明した。

しかし、「買い物に行くことを国民に許可するならば、1メートルの間隔を守れば、投票に行くことを禁止する理由はない」という医師団のアドバイスに沿って、15日には予定されていた地方統一選挙を施行した。だが、投票率は46.5%。フランスの市長選挙は最も投票率が高い選挙の一つで、たとえば前回の2014年は63,5%であった(これでは公正な選挙ではなかったという批判が出ても仕方がない。)人口が10万人以上の自治体の投票率は、36、4%という低迷で、小さな村ほど住民が投票したことが伺える。

今回はコロナ騒ぎで、高齢者層が投票所に行かず、よって、若い年代に絶大な人気のある緑の党候補(EELV  Europe Ecologie- Les Verts)が、各地で大勝利することは選挙前から言われていた。結果は正にその通りになり、特に大都市のリヨン、グルノーブルやストラスブール、リール、ナント、ボルドーなど各地で環境保護を前面に出す候補(必ずしもEELV党員ではない)が第一位に選ばれた。これらの都市は私のブログでも再三紹介してきたように、公共交通を都心に導入し、歩行者専用空間を創出。ダイナミックな都市空間再整備とモビリティーの再編成を実施してきた都市群でもある。その代表格のパリでも、道路を自転車専用レーンに転用するなど思い切った政策を進めてきたイダルゴ現市長は、そのドラスティックな「パリをグリーンCityにする」施策に様々な批判もあったが第一回投票では2位の元法務大臣のダチ女史を大きく引き離して1位であった。

フランスには市町村の区別はなく、行政の最小団体であるコミューンと呼ばれる自治体が30125ある。今回の投票で、約30000の自治体で市長がすでに決定したが、パリを初め、フランスを代表する大都市では、半数を取れた候補者が不在なので上位2人が第二回で決選投票に臨む。決選投票は3月22日に予定されていたが、マクロン大統領は16日のテレビ出演で、6月21日に延期することも合わせて発表した。フランス国民のうち1630万人が、第二回選挙の投票者となる。

さて、マクロン大統領の宣言は以下に要約される

    1. これから15日間の外出自粛宣言
    2. テレワークが可能になる努力を企業に義務付け
    3. 地方統一選挙の第二回決戦投票は6月21日に延期
    4. 年金改革や失業保険改革に伴うすべての変更案件の一時棚上げ
    5. 医療スタッフ、機関への支援。ホテル、タクシーの医療目的での利用転換も含む(国が支払う)
    6. 飽和状態にあるアルザス地方の医療機関から、軍隊を動員して病人を他の地方に移転して、病院の機能を奪回する
    7. 企業への支援(450億ユーロの予算)
      1.  税金支払い、社会保険料の遅延(最高6か月まで)を認可
      2. 銀行ローン払い込みの延期
      3. 困難な状態になる中小企業に対しては、電気、ガス、家賃支払い延期を認める。
      4. 一時的解雇を認める(しかし、その間の給与は国が失業保険を支給。最低賃金労働者には給与の100%、一般給与所得者には給与の84%を保障)

8.被雇用者への支援 : 中でも驚いたのは、観光業やレストラン業など一時的に仕事がなくなる「部分的失業」状態になる従業員に対して、たとえば子供がいる3人家族で給料の90%額(上限3500ユーロ)、自営業で仕事がなくなるとすぐに収入が途絶える者には、月1500ユーロの給与手当(補助金供与)を発表したことである。

9.他国からシェンゲン協定国への入国禁止(自国に戻る人間は別)。この政策に連携して、エアフランスはこの週末から2か月間のフライトのほぼ全停止に入る。経営が厳しくなるが、一時的な国有化も視野に入れていると首相は語った。

そして翌日の17日夜にはフィリップ首相が、それぞれの内容をより具体的に数字を挙げて説明した。政府としては一連の政策に伴う政府支出増加のために、2020年の財政支出は3,9%にまでなるかもしれないと説明。また一連のコロナ自粛で成長率はマイナス1%を予想していると発表した。(下の写真はフィリップ首相と8時メインニュースのキャスター。日本のように男女一組でなく、キャスターは女性一人)

しかし一連の政策を実施するのには多大なコストと時間が、行政側にも国民サイドにもかかり、国民への補助金の元は税金なので、いずれは我々が支払う負担としてかえってくる。コロナ対策に対する措置と比べて、世界中のあらゆる国で、微妙に異なる公衆衛生対策と経済支援策が取られており、今のところはベストSollutionがなく、どの国も模索の段階だ。

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