- さて、万博のテーマ「命と未来社会」展示エリアは、メイン会場からかなり離れた西ゲート側にパビリオンが集中しており(「未来の生活・フューチャーライフゾーン」と名付けられている)、秀逸な日本企業が時間と予算をかけて用意したパビリオンが多いと聞いている。残念ながら抽選方式なのですべてのパビリオンを回ることはできないが、運よく是非見たいと思っていた「未来の都市」が当たった。東大で講義を年2回持たせて頂いているスマートシティスクールを運営される日立会長・東原敏昭氏と東大総長・藤井輝夫氏との共著「Society5.0のアーキテクチャ・ 人中心で持続可能なスマートシティのキーファクター 」を読み込んだ私が、最も見たかったパビリオンの一つである。また今年の1月にフランスの久保田で「日仏異文化マネジメント研修」の講師を行ったので、Kubota社の出展にも大変感心があった。そして「未来との対話」には、やはり「交通」が含まれている。

「未来の都市」パビリオンの入り口にあるパネル。そして「未来との対話」には、やはり「交通」が含まれている。このパビリオンのコンテンツを制作した責任者の名前とサインもある。
- 「未来の都市」パビリオンは、日立、久保田、KDDI、川崎重工、Kobelco、日本特殊陶業、商船三井、Kanadevia,IHIなど12社が、最新のエネルギー、モビリティ、農業、都市インフラなどをテーマに、それぞれが「未来の生活」に対して持っているコンセプトやアイデアを展示する共同出展事業である。Society 5.0が目指す未来の都市=経済発展と社会課題の解決を両立する、「幸せの都市へ」をテーマとして、各企業が模索する未来像が展示され興味深かったし、来場者が実際に参加できる「体験型、参加型ショー」の仕掛けも幾つか用意されていた。
- Society 5.0と未来の都市 日立製作所/KDDI株式会社の体験型シアターでは、未来社会のイメージの紹介ののちに、テクノロジーをどのように駆使して、どんな未来社会を望むか、を来場者に聞くイベントで、会場内の参加者がそれぞれのスマホで答えていく。

未来社会のイメージの一つに、グリーンシティ

テクノロジーをどのように駆使して、未来社会を望むか、を来場者に聞いてゆく「未来シアター」

来場者の回答結果は即座に発表される。個人的にはどのアイテムも未来には求められると思えが、100人くらいの回答者の殆どは40歳以下の若者で、グリーンシティを重視する回答が45%を占めたのは興味深かった。
- 今回のEXPOで一番印象に残ったメッセージは川崎重工の「移動本能」・ひとには「移動することによって幸せを感じる」といった仕組みが遺伝子レベルで組み込まれていることを基に「移動本能」という展示テーマを設定した川崎重工は、2050年のコンセプトモデルとして、未来の公共交通システム「ALICE SYSTEM」を披露した。

同じく川崎重工で展示されていた迫力があった移動補助❓ロボット
- 株式会社IHIはCO2削減・資源循環・災害対策など、智によって社会課題に向き合い、自然との共生をかなえる取り組みを紹介する。

日本的にふわっとした表現だが「つよくやさしいまちづくり」。英訳がかなり意訳になっているのも、興味深い。
- CPコンクリートコンソーシアムの展示上では、建物が建ったあともCO₂を吸収し続ける次世代のCPコンクリートの技術体験ができる。

エコ建築の原材料として、CO2を吸収するコンクリート材でできた椅子
- また、もともとセラミックスの企業であった日本特殊陶業社は、「自律可搬型循環技術」を紹介。装置自ら判断し、何処へでも、誰へでも、必要な時に持続可能な資源・エネルギーを届けることができる未来社会を目指していることをアピール。

個体酸化物型電解セルや、メタン合成、個体酸化物型燃料電池へのプロセスをパネルで展示。パネルだけだと日常的に余り馴染みが無い内容なので立ち止まる人は少ないかもしれないが、酸素や水を球体で表現したダンスで多くの人を引き留めていた。
- Kubotaの「想像しよう。食と農業の未来を」展示会場では、全長20m超の天幕と前面のLEDスクリーンが一体となった映像空間で、「未来の食と農業」をテーマにした映像と、未来の農業に触れるシミュレーションゲームを提供し、大変な人気であった。

Kubota 思わず考えさせられる我々の食習慣の変遷図

時間が足らなくて参加できなかったが、人気があった「資源循環のプロセス」を学ぶ体験型コーナー。Kanadevia社(環境装置、工場設備・産業機械、発電設備などを製造している日本の機械・プラントメーカー)
- 「未来の都市」館では、テーマには家族や芸術も織り込まれているが、やはり「より利用しやすいモビリティ+環境保全+エネルギー資源活用+廃棄物処理」と欧州の各都市が取り組んでいる課題中心に、各企業がコンセプトを練っていると感じた。

欧州でなら、旗を持ったおじさんがいなくても、車椅子利用者は普通に横断歩道を渡っている。一体、東京や大阪で車椅子利用者が街に出ている景観を見ることがあるだろうか?このようなパネルを若い世代が見ることも大切だと感じる。
- 来場者はただ見て回るだけなく、自分で考えるように仕向けられたショーが多く、学校参加も含めて大変有意義なパビリオンだと感じた。想定滞在時間は35分と書いてあるらしいが、私自身は1時間30分いたし、時間に余裕があればもっと残っただろう(だが50mの会場に6ヵ所ある展示コーナーがそれぞれ大音量の音楽を流しているので、たとえは悪いが、パチンコ店(若い人にはゲーセン?)の騒音をイメージしてしまったのは残念であった。)酷暑ということもあり、これから来場者は若い世代を中心に増えていくと思うが、大行列のアメリカやフランス館ではなく、日本とは余り馴染みのない世界各国の文化や歴史、地理にコモンズコモンズ館で接することは、「あれは物販店だ」という批判も聞くが、青少年の視野を広げるだけでも大きな意味があると思う。

夜のライトアップが美しいフランス館
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