パリやミラノは本気で、公共交通の利用者人数制限に取り掛かるつもりらしい。どちらの都市もそれぞれ、5月11日、5月18日に本格的な都市封鎖解除が始まり、通勤者が戻って来る(通学者は無し)。フランスの統計では就労人口の約半数が都市封鎖中も働き続けており、そのうちの約4割が自宅勤務だ。全体の就労人口の20%くらいにあたる(ルモンド紙5月52日)。(日本では一体、就労者数の何%くらいが自宅勤務をしているのだろうか?) 残りの半数は失業者と都市封鎖中に自宅待機となった者で、国から支払われる84%の給与を申請した「一時失業者」は、現在のところ約150万人だ。政府はできるだけ自宅勤務を続けるように要請しているが、一体どのくらいの人口が公共交通を使うのかは未知数だ。
日本では想像もつかないかもしれないが、フランスでは「マスクを着用していない公共交通利用者」から、罰金135ユーロ徴収することを発表した。また6時30分から9時30分、午後の4時から7時までに公共交通を利用する者は、雇用者が準備する「就労証明書」が必要だ。そして、利用者を少なくするためにパリの地下鉄の60駅を閉める。駅構内や乗り物の中の混雑状況をチェックするために、主だった場所には、ビデオによる検査機を整備、また3000人強の「警備員」も配置する。
公共交通に乗りたくない、あるいは乗れなかった人たちは、今まで以上にカープーリング(乗合自動車)を利用するだろう(カープリングについては、記事「フランスの若者と車」を参考のこと)。カープーリングのプラットフォームをネット上で展開する会社が行ったアンケートによると、「カーシェアは怖い」という人は5%にとどまっている。不特定多数が利用する地下鉄よりも、カーシェアの方が安心感を与えている。(こちらも政府の要請で、「運転者席の隣は誰も座らない。後ろ座席は一人のみ」とされている。)
また、観光客がいなくなったパリやミラノでは、観光客送迎用の大型バンを、企業と契約して従業員をミーティングポイントから会社まで乗せる運輸サービスも始まった。そして郊外の住民は通勤に地下鉄、あるいは車を利用するだろう。しかしパリ都心の住民の平均通勤距離は2.5Km,ミラノ都心住民の平均通勤距離は4Kmである。彼らにはぜひ、徒歩移動と自転車利用を採択してもらえるように州政府は、道路空間の再編成の準備をしている。ミラノでは18日からの一般店舗営業に先駆けて自転車関連店舗は4日から開店しており、市民が持ち込む古い自転車の修理や新しく電動自転車を購入する客などでどこも忙しそうだ。
しかし、このように書くと大変ミラノ市民は規則正しいようであるが、昨夜、観光客のスポットでもありミラノ市民にも人気のある大運河通り(Navigli)で、多くの人たちがどっとアペリティーヴォ(6時から8時まで。食事の前の一杯。簡単なつまみが提供され、イタリア独特の習慣。バーやレストランは閉店だがテクアウトが可能なので、ドリンクと軽食を手に、運河は人で一杯になった。)に繰り出し、中にはマスクを着用していない者も多かった。警察が動員され外出者の集団を散会させたぐらいの人混みであった。今朝はミラノのサラ市長が、新聞(デジタル)を通して恐るべき剣幕で怒りのビデオメッセージ「仕事に戻ってもらうために封鎖解除をした。遊んでいる場合ではない。今まで通り家で居て、自分や家族を感染から守ってほしい」と発表した。ミラノもパリも、封鎖解除後の感染第二波と再ロックダウンの必要性を大変恐れている。しかし、2か月近くのロックダウンを経て眩い新緑の5月。空気はさらりとして外にいるだけで、気持ちが良い季節。パリもミラノも歩いているだけで幸せな気分にしてくれる、とても美しい都市だ。さて、11日に封鎖解除になるパリでは、人々はどのように動くだろうか?
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