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国政選挙、バカンス突入、パリ祭、そしてオリンピックの夏

16 07 2024 | Actualités ブログ記事, Paris パリ, Walkable city ウォーカブルシティ

国政選挙があったが、多分オリパラが終わるまでは現在の内閣が引き続き日常業務を続行することになったフランス。バカンスへの出発が最も多い7月第2週目の週末を経て(7月5日まで小、中学校があるため)、7月14日にパリ祭が行われた。ちなみにパリ祭とは日本での表現で、フランスでは革命記念日として「7月14日祭り」と言う。日中は軍事パレードが行われ(今年はオリンピックの準備があるのでシャンゼリゼ大通りではなく、並行したフォッシュ大通りで)、夜は世界50か国に同時中継される「パリのコンサート」が華々しく開催された。

世界最大の観光国だけあって、パリはその美しさの示し方が秀逸である。

例年であれば、エッフェル塔をバックにコンサートが行われるが、今年はすでにエッフェル塔付近のエリア(トロカデロとシャンデマルス)はオリンピック会場にアレンジされているために、本年はパリ市役所前の広場とそこから伸びる大通りから車を排除してコンサートが夜の9時から行われた。

パリ市庁舎も素晴らしい建物で、コンサート会場設営も建造物の魅力を最大限に引き出している。

 

中央がパリ現市長のイダルゴ女史(65歳)。左はパリ・オリパラ大会組織委員会の会長Tony Estanguet氏(46歳)。トニー・エスタンゲット 氏 はフランスのスラローム カヌー選手で、オリンピック C1 で 3 回チャンピオンになった。2024年夏季オリンピックへのパリの招致を成功裏に導いた人物。イダルゴ市長は7月17日、市民達が見物する中、自らセーヌ河でクロールを50メートル泳ぎ、セーヌ川の水質改善をアピール。大会ではトライアスロンなどが予定されている。「セーヌ川で泳げるようにする」は故シラク大統領が語った言葉だが、政府は2400億円相当の投資を行いオリンピックに向けてセーヌ河の水質改善に努めてきた。しかし65歳で水泳パフォーマンスを行う市長も若々しいが、組織委員会長46歳のエスタンゲット氏も若い。多様な世代の感性と価値観を活かし、パリの古い歴史遺産を会場として利用するパリのオリンピックは楽しみである。

世界中(5大陸)の音楽家が招かれる。観客席には椅子は無く、全員立ったままである。

コンサートが終わると夜も11時30分くらいに、例年のエッフェル塔を舞台にした花火大会が始まった。今年の特徴は観客無し(同じくエッフェル塔エリアにアクセスできないため)と、1,100機のドローンがオリンピックをテーマにしたショーに使われたことである。

ドローンがパリ市のモットーである「Fluctuat nec mergitur」を形作っているのが見える。パリ市の紋章にある標語で、 帆いっぱいに風をはらんだ帆船とともに刻まれているラテン語は、「どんなに強い風が吹いても、揺れるだけで沈みはしない」ことを意味する。つまりパリが(フランスが)どんな危機も乗り越えていくことを示唆している。

ドローンは様々なオリンピック競技の形を見事に再現したが、しかし、当夜の風向きのせいか花火の煙が例年より多く、ドローンも肝心の花火も余り良く見えなかった、というコメントも多いし、私もそう感じた。

競馬の姿は比較的良く見えたドローン

最後に、青い衣装をまとったエッフェル塔の前に、赤いフリジア帽をかぶった共和国の象徴の横顔が描かれた。マリアンヌと呼ばれるこの女性像はフランスを象徴するアイコン。

マリアンヌは、1789年フランス革命の時代に君主制に対抗する人々を守る救世主として登場し、自由、平等、友愛を求める戦いを促し、導いてきた有名な絵画に描かれている女性である。強い女性像であるマリアンヌのはだけた胸は、女性の美しさと命の誕生、国の精神を表し、特徴のある赤い帽子はフリギア帽または自由の帽子と呼ばれている。

1792年9月22日の法令により、共和国のすべての行政機関の印章には、フリギア帽をかぶった女性の図柄が使用されることになったのでその由来は古い。現在でも政府の公式文書(たとえば課税通知!)に、必ず印刷されている。

マリアンヌは1849年から切手に描かれていたので、見たことがある人も多いだろう。

マリアンヌの胸像は国中の役場や法廷に、様々なフォルムやモールドで掲げられている。興味深いのはマリアンヌは1969年以来、ブリジット・バルドー、カトリーヌ・ドヌーヴ、最近ではソフィー・マルソー、レティシア・カスタなどの有名な女性の特徴を取り込んだフォルムで作られてきたことである。

いつになくパリやフランスの象徴が強調された花火大会ではあった。花火大会のあとには、パリ市役所の清掃課の職員がオリンピックの聖火を掲げ、市役所の建物の中庭を通り抜け、パリのウオーカブルな現在の写真パネルが華やかに大きく展示されたホールまで移動した。ホールには拙著の「フランスのウオーカブルシティ」の表紙写真とほぼ同じアングルで撮られた写真があったので、やはりセーヌ河畔道路の歩行者専用空間への転用はパリ市の大きな誇りであるようだ(この合意形成のために、2年以上にわたる行政裁判所での裁判を経ている)。

右端のパネルがセーヌ河畔の歩行者専用道路(かつては車道)。写真の左はパリ市職員、右にイダルゴ市長とオリパラ大会組織委員会長のエスタンゲット氏。パリ市職員を意外に思われるかもしれないが、14日から2日間のパリ市内での聖火リレーでは、ノートルダム寺院の火災の折の消防団員やルーブル美術館でのバレリーナを初めとして、様々な分野で活躍している人たちがパリの各所で選ばれている。

オリンピック開会式まであと11日となった7月14日。現在も聖火はフランスの都市を巡回しており、オリンピック開催初日の26日には、パリに戻りチュルリー公園の聖火台に灯される。オリンピック会場にはパリ市内の既存の建造物やスペースが大々的に利用されるので、競技と共にパリの美しさも満喫できるだろう。

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