ストラスブール市民のすべてがこのドイツへのLRT延伸計画に賛成だったわけではない。ストラスブールにはすでに全長42.65KmにわたるLRT路線が整備されていたが、都心の西部に位置する自治体コニグショフェン(ストラスブール広域自治体連合を形成する28の自治体の一つ)の住民35000人がいる地域には、まだLRTが運行していない。またストラスブールの商店街には、タバコや生活基本資材などの物価がフランスより安いドイツ側に客足が移るのではないかと危惧する者もいるという。だからストラスブール側では広報に大きな努力を図ってきた。
- 上の写真の右上のパンフレットには週末の4月29.30日の午前10時から20時まで開催された様々なイベントが、独仏両言語で紹介されている。特に延長線で停車するPORT DU RHIN駅前の広場や、ケール駅前広場では、ライン河川交通の歴史建築遺産物の紹介のみならず、チェス大会、書道お試しコーナー、子供向けの屋台など様々なアトリエが用意された。又、コーラス、ラップダンス、ジャズ、吹奏楽団など地元市民を中心としたパフォーマンス、寸劇スケッチなどの演劇の出し物なども2日間を通じて演じられた。
- しかし、オペラ座や国立劇場があるストラスブール市内は、どちらかという付加価値の高い『素敵なもの』をショッピングする市街地として存在感があり、リス市長は「そこは商店がパフォーマンスを披露するだろう」と述べている。このあたり、反対意見があっても、「そこは商店が努力すればよい」と言い切れるのはフランスの首長の特徴だろう。おりしも、上記の黄色いA3タイプのパンフレットには「4月30日の日曜日13時から18時まで、ケール市街地の商店は開業します」との宣伝が載っていた。あちらこちらで話しているが、フランスは日曜営業がまだまだ困難な社会風土であり、ドイツにいたっては土曜日の午後2時くらいから週末はほとんどお店が閉まる都市が多いので、これは画期的なことだ。

ドイツとフランスの国旗をフェイスに貼り付けた、開通式で運行した車輌。この深いブルーの車体デザインは欧州機構50周年を記念して発表され、かつてからストラスブールで見かけた。車体全体がEU国旗のようにブルー字に星が描かれており、EU加盟国の様々な言語で、「Welcome」と記載されている
- リス市長は語る。「フランス市の失業率は10%に近いが、ドイツは3.5%だ。だからストラスブール市では若者のドイツ語教育にも力を入れており、失業率が高い青年層のドイツでの就労につながることも期待している」
「しかし、それは決して簡単なことではない。国境を排しても、ドイツはやはり外国だ。私たちと生活様式も働き方も異なり、ものごとの進め方も違う。でも、それらを乗り越えていく必要がある」(Huffpost 4月28日インタビュー記事より)このD線のドイツへの延長が、単なる交通の輸送手段としてでなく、国際政治、地元経済にも密接に結びついていることを思わせる市長の言葉だ。
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