- 3月3日に、新潟市のバス交通システムBRTの是非を問う住民投票の実施を求めている市民団体が、およそ6万人の署名と共に条例制定を求める請求書を新潟市に提出した、とのニュースを読んだ。 すでに運行しているサービスに改善を求める運動を行うことは理解できるが、その存在の是非を問う、というのは、何か他に背景があるのではと考えてしまうくらい唐突だ。市民団体の齋藤裕弁護士は「市民の声を聞く機会を設ける要望です」と述べたそうだが、民意を問うことに自治体が腐心している今のこの時代に*、こんな方法でしか市役所や新潟バスに市民からの声やフィードバックを届けることが出来なかったとは思い難い。*( H25~H27 BRT第1期導入計画の概要を100回を超える説明会を開催。他にも、連節バスの試乗会やBRTに関するシンポジウム等を開催している)
- 昨年度秋に新潟BRT路線に乗る機会を得た。 専用レーン化は間に合わなかったが、「できるところから実行する」体制で、既存のバス路線を再構成し、快適な車体で新しいサービスを提供してゆこうという自治体の姿勢は素晴らしいと思った。国交省はBRTの定義を決めていない。だから別に新潟が一部のバス路線を「BRT」と名付け、ブランド化してもいいと思っている。BRTがすでに20以上の都市で堂々と走るフランスでも、フランス国交省の定義である「路線の少なくとも70%が専用レーン、バリヤフリー車輌、信用乗車、優先信号、高い運行頻度」等の条件が全部揃っていなくても、BRTと銘打っている都市は多い。つまり住民が必要とするサービスを供給するのであれば、それぞれの都市の事情によってバリエーションをつけた交通サービス供給でスタートして、予算がつくに従って内容を充実化してゆけばよい、という方針だ。だから新潟の一部の人がスタートラインの今の不備だけを取り上げて批判している(ように見える)対応を、大変残念に思う。
- 寒い気候条件のもとでは車は確かに便利だろう。しかしいつまでも誰もが運転できるわけでもないし(高齢化社会)、また移動が必要な人全員が車を持てるわけでもない(格差社会)。日本のこれ以上の公共交通の空白地帯や交通難民が増える事態を回避するためにも、ただBRTの存在を否定するだけでなく「不備な点に対する対処案」を、或いは本当にBRTを撤廃したいのであれば、「市民の足になる公共交通を充実化させる代替案」も是非市民団体から提案していただきたい。
これは素晴らしいと思った。現在BRTの終点にあるイオンの中央にあるコーヒーショップにBRTの運行情報が提示されている
参考記事
① 小都市でも努力してBRT運行を進めている例 https://www.fujii.fr/?p=4383&lang=ja
② BRTとは何か https://www.fujii.fr/?p=3269&lang=ja
③ 路線バスとBRTだけで都市交通を構築したメッス市の例
https://www.fujii.fr/?p=3855&lang=ja
https://www.fujii.fr/?p=3874&lang=ja
https://www.fujii.fr/?p=3889&lang=ja
(続く)
- 新潟のフランス・姉妹都市ナント市のBRTと路線バス(ナント市経済圏の人口は58万人)
ナント市の路線バス412台、そのうち124台が連接バス、年間パーソントリップ4290万。ナント市は路線バスサービスの向上にも熱心だ。またこの他に年間パーソントリップ7100万のLRTが3路線ある。ご興味のある方はhttps://www.fujii.fr/?p=3667&lang=ja から5回にわたり、ナント市の総合都市交通計画をご紹介しています。
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