- 今週の火曜日25日に東京の桜の一部が開花したそうですが、パリからTGVで1時間15分大西洋側に位置するアンジェ市では、かなり以前から各所に桜の花が見られます。そして桜だけでなく、ボケの花、椿、アーモンド、モクレン、梅などが一斉に咲きみだれ、もうすぐ冬時間から夏時間に移行することもあり、一気に春の到来を感じます。

「神戸の木蓮」と呼ばれる白い小さな花を咲かせる木が、アンジェ市のメインストリートのLRT路線沿いに植えられている。2㎞近く真っ白に花が咲き乱れ、景観美を提供。
- さて、私はただ美しいと感じたLRT路線の「神戸の木蓮」ですが、市民にとっては別の見方や意見もあります。ちょうど昨日、市長や議員がアンジェ中心市街地の都市計画を説明する「Conseil du Quartier](地区委員会)がありました。そこでは、「木蓮の花びらが街路に落ちて、すべると危ない」(集会のあった日の午後にちょうど、市役所の清掃課が街路掃除を行っていた)という意見もありました。

200名くらいが参加。住民集会は必ず夕方から。この日は19時開始で終了は21時30分であった。市議会議員、市役所のスタッフも参加する。

集会では2025年に実施される整備工事全体を紹介。これらの計画に対してはすでに合意形成が行われたので、今回の集会は単なる「市長との意見交換会」と位置付けられた。

パリと同様、気候変動対策の一環(温度低下、土壌の浸水性)として、また景観美向上のために、学校施設内における緑化が進んでいる。パネルの表題は「校庭における植栽」。2025年度は42の校庭に計443本の木を植える。元来フランスの学校内の校庭には、植物や木々が少なく、アスファルト化された地面が大半であった。
市長の説明は30分ほどで、残りの2時間は質疑応答。パネルの表題は「あなたの質問」。市民から途切れず活発な質問が続き、市長は丁寧にすべての質問に対して、質問者の顔を見ながら話していた。質問のテーマが重なる時には、まとめて回答を試みていた。
住居問題で緊急の介入を要すると思われる課題の発言に対しては、市役所のスタッフが早速駆けつけて、発言者の連絡先を確認していた。
最後には市議の中でも、中心市街地のまちづくりを担当する議員を、その連絡先と共に紹介する。まちづくりにおける、市長や市議の役割は大きい。
- 中心市街地ということもあり、市民の質問(というよりは、苦情、何とかしてほしい、という陳情めいたものが大半であった)は、夜中の騒音、街路の清潔度など、まちに人が多く集まるゆえの居住者からの不満が多く聞かれた。しかし、それに対しては市長は「テラスはまちの命・Terasse, c’est la vie」とまで発言し、行き過ぎた深夜営業を行うバーなどへの行政による営業停止命令を出す(すでに6件に対して発動)、深夜のアルコールのみを販売する店舗の営業時間の見直しなどの他は、「お互いにバランスを持った考え方が必要だ」と述べた。
- もう一つの課題はモビリティ。中心市街地は高齢者も多く住むことから、「これ以上パーキングを減らさないでほしい」「キックボードを禁止してほしい(これに対しては、市長は「車に乗られるよりはキックボードの方が良い」と発言)」、などの意見があったが、市長は「中心市街地の歩行者空間の確保はゆずれない都市戦略だ」とはっきりと述べた。
- アンジェ市長については弊書「フランスの地方都市にはなぜシャッター通りがないのか」で詳しく紹介したが、「常に我々のまちの生活を改善するために、お互いに出会い、話し合う場を設けるのが、本日の集会の目的です」と明言し、真摯に市民と向き合うその姿にはいつものことがら感心した。
- ちなみに、市長は2024年の8月まで中央政府のエコロジー移行省の大臣を約2年間務め、9月からアンジェ市の市長職に戻った。フランスでは良くあるパターンだが、中央で舵を取った人材が、また地方都市に戻り都市マネジメントにあたることはフランスの地方都市に活力がある要因の一つであると感じている。
- さて花に戻る。

桜と前後して咲くカメリア。日本よりも大木の様子で花をつけているのを目にする。

こちらではマニョリア(Magnolia)と呼ばれている木蓮は、どちらかといえばフランスの北部で良くみられ、南仏では余り見ない。

こちらも木蓮。

フランスでCognassier du Japon 「日本のマルメロ」と呼ばれる灌木は背は大きくならないが、鮮やかな赤い小さな花を咲かせ、景観美を提供。

桜の花と同時に、フランスでは見事なアーモンドの花が咲くので、良く間違うが、桜の花は咲き方が派手?なので遠くからでもそれと分かる。花びらの先が二つに割れているのが、桜の花。また、幹の様相も異なり、アーモンドの方は実(3月ではまだ真っ黒な小さなかたまり)がなっているのが見える。

この写真は3月23日に撮影。もう散り始めていた。
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