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BRT 5 ゴムタイヤ

08 06 2014 | Actualités ブログ記事, Bus BRT バス, LRT, Nancy ナンシー

  • さて次ぎは、ゴムタイヤトラムについて。BRTのカテゴリーにゴムタイヤトラムを含む日本の文献も見られるが、混同を避けるために、私はゴムタイヤトラムはLRTのカテゴリーに入れたい。(ただし、ナンシー市とカーン市で運行されているゴムタイヤトラムTVR(ボンバルディア社)にはハンドルがあり無軌条走行できる。道路上を走行するため道路法に拠るので、TVRはBRTとする) フランス環境省*( 現在フランスには国交省はなく、交通全体は「環境・持続可能な開発・エネルギー省」が管轄となる。)の定義では、はっきりと『ゴムタイヤトラム』は「LRT」のカテゴリーに位置づけている。「トラムウエイとは、専用軌道を持った公共交通で、鉄軌道上を走る鉄車輪を特徴とし、主に都市域内を走行し可視運転する。 このカテゴリーの中にはロール社の『タイヤトラム』も含むものとする。これは 中央の一本の鉄レール案内軌条に誘導される特徴を持つ、タイヤを備えたガイドシステムである。よって道路交通法、(特に車輌の長さなど)、に拠らない。」

ナンシー市とカーン市のゴムタイヤトラム(BRT)

  • 現在フランスでは26都市がLRTを導入したが、そのうちタイヤトラムを導入した都市は3つしかない。まず最初2000年にタイヤトラムを導入したのはナンシー市。ボンバルディア社が開発した方式で、案内車輪は鉄製で両側にフランジがあり、案内軌条の真上に乗る。架線から集電してのレール上でのモーター走行と、架線があればガイドレールのない所では連節トロリーバスとしての走行もできる。架線がない場合は完全な連節バスとしての運行も可能だ。しかしナンシー市ではトラブルが続出したことは良く知られている。当時のフランスでは「あ、ナンシーのトラム?動かないよね」とまで言われていた。ボンバルディエ社との訴訟にまで持ち込まれたナンシー市での事故の詳しい内容は日本語の検証、文献もすでに多く出ているのでここでは省くが、実際に開通後まもなく1年間運転を停止している。          (ナンシー市のタイヤトラムの仕組み)
    • 上記設計図にも「タイヤのトラムウエイ」と題字がある。関係者はゴムタイヤトラムを「バス或いはBRT」としては、とらえていなかった。2002年に同じくTVRを導入したカーン市ではパンタグラフによる集電を行っており、全区間に渡って案内軌条上の走行を行い、ナンシー市のようなトロリーバスモードでの運行は行わなかった。元々トロリーバスが運行していたナンシー市もカーン市も、架線などの既存のインフラを利用して、建設コストを抑えることが目的であった。当時は、BRTは必要なレールが一本だけで、路床コンクリート工事も含めて整備費用がLRTよりずっと安くなると言われた。又、実際当時のLRT車輌コストは現在よりもずっと高めであった。【90年代初頭の鉄輪式LRT車輌コストは1700万ユーロであったが、2000年代からアルストム社のシタディスが大量生産体制に入り、2009年にはディジョン市とブレスト市が32.7m編成53台を共同発注して、1編成あたり200万ユーロまで下がっている。    (ナンシー市のタイヤトラム・運転席が一方側にしかない。)BRTは坂道10%での走行が可能(LRTは8%)、最小回転半径がBRTは13m、LRTは25mとBRTの優位性が謳われ、また 車庫もバスと共有できることが有利と考えられた。(しかし、どちらにしても新しい車輌を導入すれば、車庫の拡張工事は必要だ。 またこのバス車庫に向かうために、ナンシー市では頻繁な、トラムモードとバスモードの運転切り替えが必要となり、タイヤの磨耗が激しく、メンテ費用が予定より異常に高くなり、鉄輪LRT平均のメンテコストよりも10%高を記録した。(結局カーン市の場合も、整備コストの節約は10%にとどまった。)ナンシー市では又対応する道路もアスファルト舗装ではなく、コンクリート舗装が必要になってくる。
    • そして2010年にフランス環境省からその名もずばり、『ナンシーとカーン市における都市交通圏ネットワークの診断と見通し』というレポートで、政府は車両の耐用年数経過後の運用方式の変更を強く勧めた。勿論、国は決して2都市を突き放したわけではなく、導入当時は国も補助金を交付して支援した経由を客観的に記述している。確かに90年代初頭は現在のようなパフォーマンスの高いバス【環境配慮、ICT搭載、バリアフリー等】も存在しなかった。 だから現在のようなBRTがまだ存在しなかったあの当時では、人口20万人規模の小都市としては、鉄輪式トラムではなくタイヤトラムという実験に一つの賭けを行ったわけだ。今では何とか耐久年数の間は利用可能になるべく、フランス政府も2都市に対して援助も続けている。(写真・左がナンシー市、右がカーン市のゴムタイヤトラム。)TVRモデルについて、環境省がその報告書の中で最も大きな問題として述べたのが、結局システムに互換性がないことだった。つまり、一社独占体制で、一端TVRシステムを購入するとすべての面でボンバルディエ社のパーツを入手しなければならない。しかも、ボンバルディエ社はTVRシリーズの生産を打ち切ってしまった。結果的に全く先が見えないシステムになってしまったわけだ。結局カーン市は2017年にはTVRをすべて鉄軌道LRTに変換することを2011年に発表した。ナンシー市の方は2022年のTVR廃止をめどとして、代替手段は、BRT, 鉄輪式LRT,そしてフランスの企業ロール社【2012年にアルストム社が買収】が開発したトランスロールの採用の3つから選ぶとしているが、現在はまだ未定である。環境省レポートではこのトランスロールシステムへの移行を「Lorhrisaion」(ロール化する、という意味合い)と銘打っていることも興味深い。
    • 以上のいきさつでナンシー市とカーン市におけるボンバルディエ社のゴムタイヤトラムは、暗礁に乗り上がったが、現在上手く機能しているロール社のゴムタイヤシステムを見てみよう。(続く)

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