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  • フランス環境省*のBRTの定義をみてみよう。(ちなみに日本の国交省はBRTの定義を現在発表していない。) *現在フランスには国交省はなく、交通全体は「環境・持続可能な開発・エネルギー省」が管轄となる。

BRTとは道路交通法に拠って道路上で運行される専用レーンを持ったバス(最長24.5m)を指す。グローバルなアプローチ*(車輌、インフラ、運行形態)により、BRTは従来のバスが提供するサービス(運行頻度、速度、定時性、快適性、バリアフリー)よりもハイレベルな内容を恒久的に利用者に提供し、LRTのパフォーマンスに近い交通手段とする。バスはガイドシステム(機器によるガイダンス、或いは機器無しガイドシステム)、化石燃料と電気エネルギー運転、或いは双方が可能なハイブリッド式を含む。」          * グローバルなアプローチについてはhttps://www.fujii.fr/?p=3269の「BRTとLRTの特徴」グラフを参考にしてください。

さて、ここで言うバス運転のガイドシステムだが、フランスでは2つの方法が試された。

ルーアン市の場合

  • 2001年から大規模にBRTを採用したのが北西部のまち、セーヌ川下流のルーアン市だ。25.6Kmの距離のうち専用レーンは50%で、バス停数26、一日の利用トリップは42000となっている。 以前はCiViSタイプの2種類のバスが検討されテスト運行されたが、燃費が悪いことなどもあり結局利用は見送られた。2004年には自治体は Irisbus 社(イタリアIVECOの子会社)の Citelis 18.タイプ【通常の連接バス(最長18m)。ICTを駆使した運行状況情報や光学ガイドシステムを搭載しているが、完全低床車輌ではない。】を28台導入し、現在でも運行している。さらに、2012年からは同じくIrisbus社のCrealis Neo 18.を37台導入しており、こちらの方がBRTのイメージのデザインになっている。
  • (写真・Grand Rouen Journal 誌より  11 oct 2012) CREALIS NEO 18
  • ルーアン市のBRTの特徴は、光学ガイド方式(シーメンス社開発)の採用である。路上に描かれた白線をデジタルカメラで光学的に読み取りコースを維持するシステムで、読み取り機をバスのフロントガラス上方或いは裏側に搭載している。停留所の前後50mから光学読み取りシステムを稼動させるが、いつでもマニュアル運転への切り替えが可能。停留所とバスの間隔は6cmとして99.98%の成功率がある。バスはすべて完全なバリアフリー車輌で、バイオディーゼル車で新世代の粉塵フィルターを採用し、EUの環境基準を満たしている。このほかにもドアが4箇所あるCitelisの前世代のタイプである連接バスRenault Agora(2005年以降欧州では生産されていない) L Euro 2も34台運行している。ルーアン市は都市人口が11万人しかいないが、こういった都市交通は市の周辺77の自治体で構成する広域自治体連合が管轄しており、対象人口は約50万人(宇都宮市と同じ位)で、約1000億円の予算から費用を捻出している。
  • そして1994年12月、ストラスブール市の第一路線開通のすぐあとにルーアン市で開通したLRTも15.1Kmの路線、31の電停があり一日に67000のトリップがある。余談だが、ルーアン市では1994年、LRTを『メトロ』と名づけた。戦前から1953年まで走行していたルーアン市の路面電車Tramwayは空襲も受けかなり古ぼけたイメージが当時の住民の記憶に残っていた。あの頃は『メトロ』という名前の方が、『トラム』(フランス語ではLRTと言わない)より近代的な響きがあったわけだ。だから今でもルーアンのLRT(89%が地上)は土地では『メトロ』と呼ばれている。しかし、その後の経過をみるとルーアン都市共同体はトラム路線の発達よりも、BRT路線の開発に重点を置いてきたことが読み取れる。これもまた都市交通計画のひとつの形であろう。

ドウーエ市の場合

  • もう一つのガイドシステムがあるBRTを導入したのはフランス北部のドウーエ(DOUAI)という人口4万人の小都市。ただし、都市交通は周辺35のコミューンで構成した都市共同体で管轄しており、公共交通利用対象人口は約15万人である。

トロリー給電も可能なハイブリッド連節バスのフィリアス(オランダSRE社)は、磁気マーカーを読み自動走行する。フランスのジュール・ベルヌ著の『80日間世界一周旅行』の主役から『フィリアス』というネーミングが考えられたが、同じオランダを代表する大企業フィリップスとの類似性も指摘されてきた。

このフィリアスは2007年末に市に導入予定であったが、許認可が遅れ2010年2月に運行が始まったが、結局磁気マーカーガイド運転ではなく、現在では普通の運転手のマニュアル運転のみが行われている。車輌は完全バリアフリーである。

現在は9台のフィリアスタイプのほかに59台のスタンダードタイプのバス(連接バスを含む)が、10分に1台の割合(ラッシュ時)で、1時間に900人を運ぶ1路線21KMで使用されている。(BRT路線のほかには、13の普通バス路線と15のオンザデマンド式のバス路線を運営している。)       2013年には7台のスタンダードタイプバス及び新たに16台のBRT入札が始まった。つまり、このフィリアスタイプは2014年後半からの撤退が決定したわけだ。

尚、フィリアスというのはバスの商品名であるが、ドウーエでは「エヴェオル」(Evéole)という交通サービス名で運行を始めた。紛らわしいが、ドウーエではこのBRTサービスを「Tramway」と名づけたので、一般にTramway Eveoleと呼ばれている。【写真下・EVEOLEのロゴとバス】

  • つまり1994年にはルーアン市は「トラムLRT」を『メトロ』と名づけ、

  2010年にドウーエ市は「BRT」を『トラムLRT』と市民に呼ばせている。

この20年間における公共交通に関する考え方の変遷が分かって興味深い。20年前はメトロが格好よく、今ではトラムが格好良くなったわけだ。【続く】

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