- バカンス(長期有給休暇)に住居を離れる人が多いので、7月15日を過ぎると急にまちの中が静かになるフランス。少し可笑しいのは、常時バカンス状態にあるはずの年金生活者たちも、「これからバカンスに出かける」と発言することだ。つまり、日常空間からの脱出、新しい土地を知ったり、遠方の家族や友人を訪ねたり・・・そういった普段の生活と異なる時間を過ごすことの定義が、バカンスの一つでもある。有給休暇は法定5週間。そのうち2から3週間を夏に消化する人が大半だ。
- そうした夏のバカンスに入る前に、フランスの自治体は6月にスポーツ祭、音楽祭、演劇祭など多彩な催しやイベントを、7月14日の革命記念日の花火打ち上げまで企画する。幾つかの夏のイベントの写真を紹介したいが、まずはアンジェで6月21日の夏至の日に行われた、音楽の祭典から。1982年から毎年開催される「市民音楽祭」。
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市民音楽祭は6月の最も代表的なイベントで、どんな小さな自治体でも必ず企画される。アマチュア音楽家たちがジャンルを問わず、まちの道路上や広場で演奏できるが、中心広場には自治体がプロの音楽家を招待してステージを設けることもある。
- 日本の夏祭りに少し似た雰囲気だが、大きな違いは観光客向けイベントではなく、あくまでも市民、住民を対象としていること。だから飲食店を除いては、これだけ人出があっても店舗は一切閉店している。特に経済効果を狙っているのではなく、目的は「まちの賑わいの創出」である。人口15万人都市に、近隣の自治体からも人がイベントに訪れ、活気を帯びている。都心住民ではなく、どちらかと言えば普段はわざわざコンサート会場に足を運ばない、郊外、農村部に住む人口に、音楽を肩肘はらずに楽しんでもらう趣旨もある。この「市民音楽祭」の大成功は、7月から続いてフランス各地で行われる様々な「音楽祭」や「演劇祭」に、バカンスで滞在する人たちも含めて、市民が気軽に参加する文化的な土壌を作った。
この日のほとんどのコンサートが無料で、街角からはあらゆる種類の音楽が流れてくる。しかし、一応アルコール類販売は夜の11時まで、また音楽演奏も12時までと規制して、街中に住む市民の睡眠権?を守る。街角には、賛美歌から、ジャズ、クラシック、エスニックとあらゆる音楽が演奏されるが、アマチュア・バンドとしては、ロック音楽が一番多かった。7月からは幼稚園から大学まで一斉に休暇に入る。いよいよ、フランスの夏の到来だ。
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