イタリアから約2週間遅れてコロナの感染が始まったフランスでは、やはり2週間遅れでイタリアを追うように段階的なロックダウン解除をはじめている。イタリア人の日常に溶け込んだ街の風景が「アペリティーボ」だとすると、フランスは「カフェ」。特にパリでは、自分の住まいの近くに行きつけのカフェを決めている住民も多い。カフェを含む飲食店の開業が、イタリアから遅れて2週間後の6月3日から許可された。ただしイタリアと異なり、フランスの飲食店開業は、外(つまりテラス)にテーブルを置ける店舗にのみに(今のところ)限られている。
公共空間である沿道を利用する料金は1平方メートルあたり、18ユーロから104ユーロだが、この料金の裁量及び徴収権は自治体にある。其の仕組みについては次のリンクをご参考にしてください。自治体が管理する都市空間と道路高度利用
道路空間におけるテラス利用権も自治体が決定権を持っています。なぜなら、高速道路を除いた殆どの道路の管轄権限は、地方公共団体(最小の行政単位であるコミューン、或いはコミューンが集結して構成する都市圏共同体や広域自治体連合など)にある(Code de la Voirie Routière 道路法による)。道路空間利用権(道路の上の地上空間の利用も含む)には、 ①オブジェ設置権や ②広告パネルの設置権があり、市役所に申請する。このようにまちの公共空間や道路空間利用についても、自治体の権限が大きい。今回はコロナ対策で、9月30日まで特別に、従来のテラススペース以外に、車道空間や路上駐車スペースに飲食店のテーブルを出すことが、フランスでも認められている。
フランスでは5月中は、自宅から100KM以上の移動は許可されていなかったが、6月3日からフランス国内での移動が自由になった。国外へは6月15日以降自由化される予定で、それまでは就労上の理由、あるいは家族のやむを得ない理由を示す、自己宣誓書の付随が必要だ。イタリア側は6月3日からEU諸国との往来を自由にした。
このように、それぞれの国が細かく条件をつけながら、毎日、感染者数の変遷とクラスター状況をチェックしながら(そしてそれらの数字は非常に丁寧に透明性を持って、連日ニュースで報道される)、少しずつ国民の生活に基本的な自由を返却している。両国ともロックダウン当初に、国民を経済的に支援する政策はかなり鮮明に打ち出した。しかし出口戦略については、きめ細かく(そして2週間ごとに変わる)条件をつけながら、ロックダウン解除を進めている(たとえばフランスでは5月は午前6時30分から9時30分、16時から19時までは、雇用者の出す就労証明書がないと公共交通手段は利用できなかった)。このあたり、経済的支援策発表は、試行錯誤を重ねながら五月雨式にいろいろな援助策を発表するが、出口戦略の解除条件は何もつけず「非常事態解除宣言」に入る日本と対照的だ。私はフランスやイタリアの国民が解除に関するこの細かい規則を守って行動しているのに驚いているが、日本の場合はそのような指針を示さずとも、国民は高い衛生観念に従って行動し、また県外移動なども良識を持って自制しているのかもしれない。
- しかし、現在では新しい感染者が減少しつつあり(といっても、一日に1000人くらい発生している。陽性者が出たら2週間の自宅隔離を義務づけて、接触者全員を検査、徹底的にクラスター管理を行うことで、感染拡大は抑え込むことに成功している)、衛生的な危機感が薄らいだので、経済的な危機感の方が話題に上ることが多くなった。フランスの失業者が457万人にもなり、ロックダウン中の一時的解雇手当を受け取った就労者の数も1200万人に上る(フランスの人口は約6600万人)。その解雇手当の支払いだけでも政府にとっては大きな負担だが、4月の景気後退はマイナス11%とも試算されており、国民の消費がすぐに回復するわけでもない。学校も小学生の27%、中学生の28%しか復学しておらず(Social Distanceを遵守しているために、一人の生徒は一週間に2日間くらいしか登校できない。このあたり、復学となると県内の全生徒一斉に登校する日本では、想像もできないOrganisationかもしれない。)、完全な復学を求める声も多い。それというのも、学校の中では病院なみに厳しい衛生基準が保たれていても、いったん街中に出れば、人々の衛生基準(Social Distance、マスク着用など)が緩くなってきているのも事実で、生徒たちの登校を妨げても仕方がないという意見も出てきた。どちらにしても夏を迎える、これからのロックダウンの出口は困難だ。
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