春に猛威をふるったCOVID-19は欧州で20万人以上の死者を出し、フランスは30172人を占める(7月22日現在)。2019年度同時期の死亡者数を25〜30%上回る数字だ。しかし観光産業がGDPの10%以上を占めるフランス、イタリアなどは夏の休暇時に少しでも経済を回す必要がある。6月15日からはEUシェンゲン圏内の移動が自由になり、7月1日からは日本や中国など15か国にも国境が開かれた。
だが毎日新たな感染クラスターが発見される。7月22日のフランスでの新感染者は998名、PCR検査数を増やしているので陽性率は1.2%であった。【ちなみに日本での7月22日の新感染者は673名、しかしPCR検査数は少ないので、日本での陽性率はかなり高いはずだ。一方日本では今までの累計死亡者が990名と圧倒的に少ない。】
フランスでは感染クラスター区域での住民に徹底したPCR検査を行い、陽性反応者に自宅隔離を徹底させることで感染拡大を抑制する対策を取っている(ただしEU圏内のたとえば再ロックダウンに入ったバルセロナなどからフランスに入国する移動者に対して、空港において何の検査もコントロールも行われないことに対して批判が多い。)COVID-19に対応する医療ノウハウも整ってきた今、EU各国は経済復興のために、できる限りの注意を払いつつウィルスと共存する道を選んだ。実情をみながら対応してゆく構えで、新しく感染者が増加している事態を重くみて、早速フランスでは再び7月20日からすべての建物の屋内でのマスク着用を義務付けた(罰金は135ユーロ)。
ことマスクに関しては、フランスは迷走を続けてきた。3月には「一般の人はマスク着用の必要無し」から「マスク着用義務付け」に方向転換、しかし国内市場にマスクそのものが全く出回っていない時期があり、政府は厳しい批判を受けた。現在ではマスクは不足していないが、7月23日には厚生大臣が、「生活困窮所帯700万人(フランスの人口6600万人)を対象に、30回洗えるマスクを支給」と発表した(一人につき何枚か?などの詳細はまだ発表されていないが、支給用に4000万枚用意しているとのこと)。低所得世帯には家族4~5人分の毎日のマスク着用は、それなりの出費になるとの判断だ。また基礎疾患がある200万人の国民に対しては、マスク購入費は社会保険が返済する。「マスク着用義務づけ=政府の費用負担」、「店舗の休業要請=政府の給与補償」という分かりやすい構図だ。財源は税金なので、フランス国民は当然の措置だと考えている。
マスクに関しては、フランス中を震撼させた事件があった。7月5日にマスクを着用しない利用客(切符も持っていなかった)に乗車を拒否したBRTの運転手(58歳)が、逆にその乗客と仲間から暴力を振るわれ2日後には亡くなられた。これは大変痛ましい、例外的に極端な暴力事件だ。運輸事業体であるKeolis社の従業員は亡くなった運転手への哀悼の意と事件への怒りを示して、又公共交通従事者全体への安全確保に対する必要な措置を取ることを要求して、1週間一部の公共交通の運転を中止した。
この事件が起こった人口2万5千人ビアリッツは、昨年度8月にG7も開催された欧州を代表するリゾート地だ。拙著「フランスではなぜ子育て世代が地方に移住するのか」でも、駐車対策や歩行者専用空間整備に工夫をして「歩いて楽しいまちづくり」を実現したその卓越した都市計画を紹介している。2019年9月に素晴らしい高機能高速バスBRTが導入された。このBRTの事業主体は、ビアリッツ、バイヨンヌを中心とする人口30万人のバスク都市圏共同体で、地域内を25Kmにわたって走行する長さ18mのバスを「Tram’bus」と名付けた。
100%電気エネルギーでバッテリーLTO (Lithium Titanate Oxide) には150Km/hのキャパシティがある。路線の両端でパンタグラフから5分間チャージしているが、40Km走行の容量がある。
また街中では一般道路を走行するが、中心街を出るとBRTの専用レーン上を走る。ビアリッツ市内ではBRT導入と共に、大規模な都市空間の再編成も整備された。
7月20日から義務付けられた屋内の公共空間(店舗、ショッピングセンターなどの民間施設や図書館などの公共施設)でのマスク着用は、引き続き公共交通機関にも適用される。日本と同様、暑い夏を迎える。
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