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都市封鎖からの出口戦略 1)ミラノの都市交通政策

22 04 2020 | Actualités ブログ記事, Bicycle 自転車, Italia イタリアの都市, Milano ミラノ, Public Transport 公共交通, Route 道路

ドイツの一部地域ではすでに店舗がオープンし、まだ決定したわけではないが、イタリアでは5月4日、フランスでは5月11日のロックダウン解除をそれぞれの国民は期待している。病院での集中治療室の受け入れキャパシティーが確保されてきたので、都市封鎖を解除するわけだが、決してウイルスが消えたわけではない。今後も感染者と重症になる患者はなくならない。それでは、どのような都市ロックダウンからの出口戦略が考えられているのだろうか。

③都市封鎖からの出口戦略

1)ミラノの都市交通政策

ミラノは15Kmの半径内に140万人、周辺の通勤圏も含めると300万人を超す人口がある過密都市だ。街の中を蜘蛛の巣のようにびっしりと覆う交通網はとても便利で、地下鉄、旧式トラム、LRT、BRT、トロリーバス、路線バス、レンタルバイクやカーシェアの管理までを管轄するのは、9800人のスタッフをかかえるミラノ交通局で自治体の直接運営だ。

ミラノ市のロックダウンが始まった時、ロンバルディア州政府の要請を受けてミラノ交通局は公共交通の運行を最小限に抑えたが、医療関係、物流関係など都市ロックダウンの期間も働き続ける市民が少なくなった輸送機関を利用しかえって混雑していたために、すぐに運行数を調整した。ロックダウン初期は利用客は90%減少したが、運行回数も75%減らした。

from “Quartz”24 April 2020 by Alison Griswold 「各都市における「公共交通利用の減少」ミラノで学校休校が決まったのが2月26日、外出禁止令が出たのが3月7日で、それぞれ公共交通利用率が激変する日程であることが読み取れる。

それでも感染を防ぐためのいわゆるSocial Distanceを保ちながら、公共交通のサービスは続いた。

「トラムの乗り降りは、車両の中央からお願いします」というミラノ交通局の張り紙。運転手と乗客との接触を防ぐため

「お客様の間は、1メートルの間隔を開けてください」という、トラム車輛の入り口のお知らせ。

フランスやイタリアの都市交通は都市の自治体が基本的な社会サービスの一環として経営している。自治体の予算や補填で(フランスの場合は企業からの直接財源である交通税も、公共交通運行の財源となる)成り立っているので、「運賃収入が激変したから、公共交通が壊滅」とはならない。むしろ公共交通をどう守るか、利用客と準公務員待遇である運転手の安全をどのように保証しながら、運行を続けるかが大きな関心事となる。

感染のピークを越したミラノでは、多分5月に実施される脱ロックダウンに対する出口戦略を具体的に検討する段階に入った。テレワークが可能な企業は、脱ロックダウン後も在宅勤務を続けるとしても、学校が始まれば、どのように乗客たちに1メートルの間隔を守って公共交通を利用してもらえるかは、ミラノ市長のサラ氏はじめ自治体が抱える大きな課題の一つだ。「もし着席のみの乗客を認めるとすれば普段の運送能力の15%、立って利用する客も認めても(Social Distanceを保ちながら)30%にしかならない。そして一体、誰がどのようにして「安全規則が守られているか」監視するのだろう?地下鉄なら入り口で入場する乗客数のチェックも可能かもしれないが、路上を走るバスやトラムはどうコントロールするのか?また、それぞれの停留所の待ち客の間の距離は?。やはり、これらは市民の良識に頼らざるを得ないだろう。

3月からのロックダウンの間に、季節は冬から春に。新緑と芝生軌道が眩しいばかりに美しくなってきた。

ミラノは地下鉄だけでも一日に140万トリップある。しかし、Social Distanceを車両や駅に適用すると多く見積もっても25から30%くらいしか利用客を運べない。またミラノ交通局が経営しているシェアリングバイクは78%、スクターも87%の利用減少があった。シェアすることに対する恐れを超えて、今後自転車を利用してもらうために、また、地下鉄に乗れない人たちが路上を歩けるように、ミラノ市はドラスティックな政策を発表した。

このまま何も対策を取らずに都市封鎖を解除すると、車が街にあふれます。それでは今まで脱車社会の交通体系を整備してきた我々の努力が元に戻ってしまう。そこで、これから35Kmの自転車専用道路の整備を予定しています。できればこの5月から6月にも完成させたい。」とイタリアの主要紙で4月21日にミラノ市副市長が述べた。

具体的には3つの段階的な施策を考えている。

1.        ミラノ市内北東部の中央駅近くの広い道路に自転車専用道路を整備

2.   (主線道路にはトラムやバスが走っている)幅広い大通り車道の側線を時速制限30KMゾーンに設定して、そこに自転車の侵入を許す

3.        1以外の幹線道路に自転車専用道路を整備して、特に交差点における自転車運行の安全性を高める工夫を行う。

しかし、これらの施策の実行のためには、予算と道路規則の変更も必要だ。国との調整にも入っているが、すでに4月の今。本当に35Kmがこの夏までに整備されるだろうか?確かにミラノにはシェアバイクが至る所に設置され、私がミラノに着いた昨年の7月から今までの間でも、次々と自転車専用道路が整備され、交通当局が自転車利用を推進していることは日常的に感じていた。いかにも頑丈そうでミラノにしては珍しくスタイリッシュではないシェアバイクは、年間35ユーロの登録料でかなり便利に利用できる。最初の30分間の利用は無料だ。重い自転車を持ち上げて駐輪ポートに戻す必要(スエーデンと同じ方式)があるのが、力の弱いものには多少の難点だ。

ミラノのシェアバイク Bike Mi

しかし、折角減少させた都心への車侵入台数を何としてもこれからも減らす為とはいえ、(ミラノではロンドンと同じように都心侵入税(Congestion  Tax)が課せられている)そこから自転車専用道路整備の拡充につながる発想は日本では生まれないだろう。欧州では、コロナがもたらした都市封鎖は、今までの環境を破壊しながらの経済優先の消費社会を見直し、今後の社会の在り方を考察する良い機会だととらえる見方も少なくない。欧米先進国の中では、他国に先駆けて多くの被害者を出してしまったイタリアの北部、ミラノの出口戦略を各国が注目している(続く)。

バスも本数は少なくなったが、走っている。ミラノの電気エネルギー連節バス。専用レーンを走る。

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