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  • 京都での講演には150名の皆様のご参加を頂きました。主催者の皆様、お越し頂いた方々、ありがとうございました。懇親会では、京都には LRT がふさわしいという全員一致の認識確認のもと、実現に向けての熱い議論が続きました。写真は京都府中小企業団体中央会会長の渡邊氏と、京都市議長の寺田氏。また NPO 法人KOALA とみやこの電車百人委員会のメンバーの皆様。ありがとうございました!!

 

  • 主催者チームの池田氏のFBへのご投稿記事より
  • 4月14日(土)キャンパスプラザ京都で「みやこ都市交通フォーラム」を開催した。京都府中小企業団体中央会、みやこの電車100人委員会、私が所属するNPO法人KOALAの共催行事であった。なお、京都商店連盟、京都商店連盟中京東支部の後援をいただいている。来場者は150名、流石に「ヴァンソンさま効果」である。(拙い司会進行はご容赦ください。)

    ヴァンソン藤井由実さんは大阪ご出身でフランス在住、2012年の路面電車サミット大阪・堺大会でお世話になって以来、交流している。彼女の講演により当時、存廃問題が発生していた阪堺線が存続の流れに転換したと記憶している。このご縁で「みやこの都市格向上」についてご講演いただいた。講演骨子を整理したので掲載する。あくまでも個人メモ。

    1.人間中心、共有の社会に向けての施策推進
    フランスでは国策としてトラムの整備が続けられているが、都市を自動車中心のまちづくりからの人間中心、歩いて楽しいまちに確実に導いている。道路をクルマのためでなく歩行者のための都市空間として再配分し、駐車場として使われてきた中心広場などを季節ごとにプレースメイキングされる都市空間として再整備している。フラワープランターの設置や車止め(路上ストッパー・浮沈式ボラード)、道路のマウントアップなど都心部では極力、車が使えない工夫がなされている。まちづくりと交通政策が一体的であることは当然のこと、都市のトータルデザインにも注目している。停留場、ゴミ箱から券売機までが一つのデザインのようである。フランスでは道路が都市の中心部に入るほどクルマのスピードが出せないようになっているし、通過交通を排除するように工夫され、歩行者優先が徹底している。これには教育の徹底もある。

    フランスでは従来の「所有」の概念ではなく「共有」を基本とする経済への移行が行われている。カーシェアリングの普及もその一例である。所有権や使用権などの私権は「最大限に公益性をリスペクトする」ことを前提に制限されている。環境保全、「ユニバーサル福祉」、富の再分配が行なわれることが目的であるため国民はこの「制限」を受け入れてきている。

    これらの取り組みは、どういう社会を、まちを創り上げるかというコアのビジョン「都市計画マスタープラン」の確立が大前提となる。プランの策定にあたっては自治体(コミューン)の自律性が補償されている。自治体はこの計画に基づき「土地利用計画」を制限し、強大な許認可権を保有することになる。土地収用には自治体の先取権が認められ、土地投機が発生しないようにされている。

    「都市計画マスタープラン」は人の移動を補償する「交通基本法」の制定により進化してきており、交通政策を包含しないマスタープランは存在しない。
    このマスタープランにより交通政策が構築されLRTやBRTの計画されるわけであるが、住宅の供給計画においても、20%が低家賃住宅であることが義務付けられたり、住宅開発地が公共交通の乗降地点から400m以内であることが都市計画のなかに組み込まれたりする。これらの施策を立案し推進し、まとめていくのが「マスターアーバニスト」と呼ばれる都市計画デザイナーである。

     

     

    2.運賃制度と分配の思想
    公共交通の運賃は「社会運賃制度」が採用されている。このため運賃は極めて安い。23都市ではバスは無料化されている。失業者が無料の場合もあるし、パリ都市圏での公共交通無料化の検討も行なわれている。

    フランスでは「分配」の思想を受け入れ、国民は重税を受け入れている。この他、博物館の入場料なども極めて安い。弱者を見捨てない政治、ユニバーサルな福祉が推進されている。これらの方針は政権が変わっても基本法があるため変更されることはない。社会運賃やLRT推進の財源には交通税が活用される。この重税を受容させるのが国民全体の連帯意識であり「個人の自由は相手の自由」という考え方である。

    3.住民合意
    フランスでもLRT推進に関しての合意形成は困難を極める場合も多い。「沿岸住民」だけでは合意形成は難しく、福祉や環境を前面にNPOや行政が連動した合意形成活動を展開している。この広い視点が不可欠である。

    この活動のなかで域内交通の再構築とまちづくりが一体であること、LRTが「福祉の装置」であることを伝えている。インフォメーションオフィスの役割も大きい。反対派によるチラシの配布などもあるが徹底した情報開示と丁寧な説明で対応している。

    社会実験も必要に応じて実施しているが、短期間の実験では効果が上手く把握できないとの認識である。京都市で行なわれた社会実験は極めて短期間であり、マスコミは「沿岸住民」のマイナスのイメージばかり伝えていた。(専用レーンバス利用者の移動時間は大幅に短縮しているなどプラス面は報道されないし、四条の歩道拡幅も当初は道路渋滞ばかりが報道された。)フランスでは実験が定着し成果を確認する一定の期間が必要であると考えている。

    また、計画立案までの情報とプロセスを徹底的に透明化する必要があるとし、地域への説明は、首長の指導力が先ず求められるが、行政スタッフと(政策立案に関わった)議員とペアでの商店街などに現場説明が行なわれる。PRビデオも工夫されている。

    この議員の活力は、地方議会、国会もダイバシティが確保されて、若い女性「普通の人」が議会に進出し、生活者や一般住民の考え方が取り入れられてきたためでもある。

    何よりも自治体の自主財源が確保(60%が自主財源)されている。

    公共交通は優秀な人を集める装置でもあり、高齢化社会への準備あることも成果として強調されている。

     

     

     

     

     

    4.まちづくり
    自治体は人が中心部に集まるための緑や歩行者に配慮した景観形成ばかりでなく、若い経営者の育成、支援、空き店舗税の創設など行なってきた。

    景観形成では、LRTを活用したまち全体の公園化、停留所のランドマーク化、ユニバーサルデザインの徹底、案内図の作成、配布、バス専用レーンでの逆走行(一般車流入阻止)、公共交通優先信号システム(PTPS)など交通と都市デザインを一体化している。

    まちづくりの基本は都市をコンパクトにすることと交通ネットワークに再構築の両輪がまわることである。なお、LRTとBRTの棲み分けであるが、概ね人口が20万人以上の都市ではLRTが選択されている。

    5.松原光也氏の個人提案(NPO法人 KOALA会員)
    都心部と観光地は歩行者専用地域にし、外周線内は公共交通優先、市内の主要道路を東西と南北の一方通行に、また幹線道路も一方通行の自動車優先道路にしようとの基本提案のあと、すぐに実現でききるLRT路線として梅小路公園モデル路線を市民の出資で実現しようとのとの提案があった。

    6.パネルディスカッション
    ヴァンソン藤井さん・寺田京都市会議長・渡邊商店会連合会長の3人のパネラーとコーディネーターである波床大阪産大教授で実施された。

    京都駅や四条へ乗り入れるバスがあまりにも多く環境的にもよくないとの論議のなかで、寺田議長は現場実態をよく把握されており、地下鉄線ばかりでなくJR山陰線の活用も視野に入れ、バスを乗り継ぐことも考えるべきと指摘される一方で、この場合、初乗り運賃が多重化して割高になるとを指摘された。
    この論議の中で通年利用できる制度(共通パス)を検討すべきとなった。京都市内の地下鉄と市バスの共通1日券が1200円から900円に引き下げられたことも紹介されたが、現在は印刷が間に合わないくらいに売れ行きが好調なようだ。

    この他、フランスの税制などについて渡邉会長とヴァンソン藤井さんとの質疑応答があった。

    7.所感
    LRTや交通まちづくりに関する住民合意は困難を極める。沿線利害をかかえるなか、どう意見調整し、説明し全体最適を実現するかが議会や行政の役割でもある。しかし、わが国では、まだ熱意を持って取り組む職員は少ないし、多くの議員も「触らぬ神にたたりなし」ということではないであろうか。多くの行政では、市民から提案やパブリックコメントを求めても形式に終わることが大半であり、幹部から市民からの提案内容の検討を指示されても平気で無視することもあるようだ。逆に熱意ある議員や職員は疎まれているともいう。「歩くまち京都」を推進する京都市がこの閉塞感に陥っているとは思わないが、これから、これらの議論を庁内でどのようにどう活かしていくのか注目していきたい。

    次に、パネル討議の中でも話題となったが、税負担の考え方である。フランスは明らかに大きな政府を容認している。パネラーの一人からは我が国には打ち出の小槌はないとの反論があった。

    フランスでは消費税は2割であるが国民は容認している。我が国では経済界も私のような庶民も概ね反増税である。しかし、ヴァンソン藤井さんの講演のなかに答えがあったような気がする。フランスでは徹底した情報公開、透明化が大前提である。私は、高福祉高負担であるべきと常々考えてはいるが、この前提条件があるならば納税者は高負担を容認すると考える。

    ただし、私やある学識者も打ち上げの席で言及したが、国土交通省予算でなかで、未だに数兆円といわれる道路予算からの多少の組み換えは可能でもあるし、LRT整備の建設コストは通常、地下鉄の1割といわれていることも忘れてはならないと思う。

    最後、先日の速報や、当日、会場で「自由に参加できる交流会」ができなかったことのお詫びを伝えたが、今後は私自らの責任で対応していきたい。また、プレゼン中に不規則発言があった。このことも進行役として深く反省している。

    この活動は、京都に限らず、まちづくりや福祉という観点で10年以上継続している。しかし、まだ関西では阪堺線の存続と低床車両(LRV)の導入以外に大きな成果は得ていないが、今後とも皆さんと連 携し ながら活動を継続していきたいと感じている。

    寺田議長のパリご訪問(パリ市と京都市姉妹都市30周年記念)

    本日は、京都とパリの姉妹都市60周年記念行事で来仏された、京都市議会の 寺田議長に、パリの交通事情をご案内させて頂きました。夏至の日の今宵は、音楽の祭典。街角の辻つじにアマチュアミュージッシャンが、音楽演奏をしています。写真は、パリのLRT を背景に。そして夜の7時でも明るい街角。後ろのLRT車輌の床高が、プラットホームと全く平行線であることも、見てください。(6月22日)

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