- 合意形成のステップ『事前協議』と『公的審査』が終わると、自治体は交通計画を策定し議会の承認にかける。それから官選の知事に『公益宣言DUP』を申請する。かつては中央政府の首相がDUPを発令していたが、地方分権化の流れで現在では各都道府県の知事の発令となっている。DUPは、ストラスブール市のBRT計画のように、土地収用の必要が無い場合には必要とされない。しかし、合意形成のプロセス(事前協議と公的審査)は、公益性のあるすべての計画に義務付けられている。
- 『事前協議』と『公的審査』はそれぞれ法律で実施することが定められているが、ストラスブール市ではひとたび工事が開始してからも非常にきめ細かい『情報開示』を行っている。なぜならすでに述べたようなこれほどの合意形成活動を行っていても、興味のない市民はやはり何も知らない。自宅前の道路にブルドーザーがやってきて、あわてて市役所に駆け込んで来る市民もいるという。何を基準として「もう合意形成ですべての市民に情報がいきわたった」と、どこで判断するのか・・・これは大変難しい課題だと市役所のスタッフは正直に答えている。だから工事が始まっても、一種の合意形成を続けている。
では市民にどのような手段で、工事中の情報を提供しているのか。
- まずフリーダイヤル。工事問い合わせ番号
- 4ヶ月に1度の4ページの情報誌。交通迂回を伴う工事が始まる時は、各戸配布する。
(写真上・CUSが配布している4ページのニュースレター・A3サイズのカラー版で、工事計画が分かりやすく説明されている。工事期間中の雇用創出人数なども紹介)
- 各戸配布のA4サイズ1枚のお知らせレター(この11月に開通するBRTの工事期間中は、1年間で20枚のレターを配布した)
- 4X3Mの工事説明パネルを現場に。(写真右・ドイツの対岸都市ケール市へのLRT延長戦工事に先がけた景観整備工事のお知らせパネル)
- 工事現場における絵文字コミュニケーションの設置
- 1ヶ月に1回、工事現場仮設置場で工事紹介パネルを設置して、要員を派遣して住民の質問への答えに応じる(土曜日の午前中などが多い・フランスは土曜日の午前中は学校があるが、職場は休みが多い。だから若い世代の市民が比較的自由に動ける貴重な時間帯を狙っている。)
- 工事中に1年に最低1回の工事進捗状況説明会。LRTの工事は2から3年かかるので、きめ細かい対応が必要。必ず地域選出の議員が説明会には出席し、しかも議員が会合の司会になることが多いそうだ。 できるだけ地元議員に前に出てもらい、あくまでも行政職員はバックオフィスというスタイル。
(左写真提供・CUS)
- 商店経営者など自営業者への補填金ガイドブックの用意と周知・工事が始まるまでに、過去最低3年の実績と収益報告が3年分提出すれば、工事の期間の収益減損分を自治体に補填金として要求できる。あくまでも市民から最初のアクションを起こすことが必要なので(自治体から自動的に補填があるわけではない)、地域選出の議員と自治体職員がペアになり商店街を廻り、補填金支給の情報を伝え、申請を希望する人には説明を与える。
- 工事ツアー(これは私もストラスブールで何度か目にしたが、みんな楽しそうに工事現場を廻っている)
- 植林式。ストラスブールは3本工事のために木を伐採すれば5本植林という比率を守っている。工事ニュースレターにも必ず植林数が紹介されているばかりか、どのような木を植え、それがどんな花を咲かせるかまで説明している
。
- そしてやっと開通式を迎えるが、もちろん市長以下多くの議員が出席する。シラク大統領などはフランス東部のMulhouse市や南のマルセイユ市でのLRT開通式に出席している。
(写真上・フランス西部ルマン市での開通式。https://www.fujii.fr/?p=2109 を参照して下さい)
フランスの官庁や自治体の総務部には『マスコミ担当』という課があるもの頷けるような、『情報開示』の有り方がここにある。
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