- 特に河畔区域の思い切った景観整備を行い、中心地の活性化、新しい住宅建設への着手、観光産業の振興に結びつけた。ストラスブール市でも景観整備を担当した、フランシス・キュリエ(Francis Cullier)氏はボルドーでの事業成果で2006年に都市計画グランプリを受賞した。
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ガロンヌ川に面するブルス(Bourse)駅の有名な水をたたえた広場。このLRTと水面の間に駅があり、LRTは停車するが、駅構造はなくお洒落なベンチがあるだけ。架線レスLRTが素晴らしい空間を演出したニースのマセナ広場と共に、フランスを代表する景観整備
都心からガロンヌ川に沿って北に伸びる道路には、もともと6車線あったが、これを2車線にして、中央にLRTを通し、川岸には幅広い歩行者空間や自転車専用道路を整備。スペースに余裕のある処には、子供の遊技場やローラースケートの練習場などを設置した。また川岸4Kmにわたって、かつて河川交通で利用していた倉庫5番から14番を商業施設やレストランに再開発し、今では市民がジョギングしたり、食事をする素敵な川岸スペースになっている。
- さて、様々な景観で気がつくのは架線レスの区間が多いことだ。LRT全線の約3割ほどで、地表集電システムイノレール式APS*(LRT車輌メーカーであるアルストム(Alstom)社の子会社のイノレール(Innorail)社が開発した地表集電システム。 APSは(Alimentation par le sol:地表からの給電、或いは地表集電)の頭文字) が採用され、2003年12月21日に運行を開始した。
- LRTが走行する2本のレールの間に、8mの給電区間と3mの絶縁区間が交互に連なる給電用レール第三軌条を敷設する。車輌はアンテナから給電箱に信号を送り、接近を知らせ、これから通過するセグメントを通電状態にする。路面には誘導コイルが設置されており、車輌からの電波を受信できるようになっている。車両下面の接地アンテナから誘導電流を出し、これを地上の誘導コイルで受けて、制御箱のスイッチを切り替えることにより集電する。車体床に集電装置(スケーター)が取り付けられおり、車両の真下にある部分の給電レールにのみ通電するので、給電区間は車輌とともに移動するため、給電レールの上を人が歩いても感電しない。
- 架線レス区間に入る前に集電方式を切り替える電停で、運転手がボタンを押すだけで、自動的にパンタグラフが下がる様子を見ることができるが、この時にAPSの集電イシューが路面に設置される。逆にパンタグラフが上ると、集電イシューが路面から離れる仕組み。
- しかしこの技術は利用当初は多くの問題点を露呈させた。22mおきに設置されている制御箱(電源切り替え制御装置が入っている)に浸水があると、回路が短絡した。また集電用の軌条の周辺に雨水がたまらないように、第三軌条はレールより高く敷設され、また傾斜もつけてあるが、大雨の場合には不都合も起こったが、現在ではそれらの問題も解決され、ボルドー市とアルストム社との特許としてこのAPS方式が、フランスの他都市ランス、アンジェ(上の写真)、オルレアンで採用されている。一方、南フランスのニースでは、ニッケル水素電池を車体に搭載してバッテリー運行で、世界遺産のマセナ広場の景観を保護している。
- トラムも素晴らしいが、とにかくボルドー市も『歩いて楽しい街』である。どこのカフェで簡単な食事を取っても水準が高い。またビストロは平日の夜10時30分に入ってもオーダーが可能であった。これはフランスの地方都市ではかなり稀である。一日中、市街地が賑わっていることは言うまでもない。ストラスブールやナントと並んで、今やボルドーも、市民の公共交通の利用度が高く(LRTだけで年間7518万トリップ。フランス環境省2015年12月発表)市街地に活気がある代表的な地方都市の一つとなった。この都市が長年、地下鉄導入を計画していたが、地上を走るLRTと都市の景観整備を同時に行ってきたことを、もう一度考えてみてほしい。
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