神戸での講演を、池田昌博氏が「議事メモ」の形でまとめてくださいました。ありがとうございました!自分のお話しが、どのように受け止められているか、大変参考になりました。
「人と公共交通中心のまちづくり」
海外の事例から神戸の交通まちづくりを考える 「議事メモ」
2017.11.27
主催:神戸市住宅都市局 交通政策部 交通政策課
講演者:ヴァンソン藤井由実
先日、この講演会の模様を少し記載しましたが、議事メモを掲載します。お話内容の本論とは少し離れているかもしれませんが気になったことをここに残します。テロや物騒な報道がありますが、成熟したフランス社会の模様をお話されています。
1.はじめに
「フランスの地方都市にはなぜシャッター通りがないのか」を発刊して以来、「そのようなことはない」とのご意見をいただいているが、その多くは5万人以下の小さな都市であり、20万人以上の中規模以上の都市では中心市街地の再生がトラムなど公共交通の復活、再生とともに起こってきている。
2.人間中心、共有の社会
トラムの整備は、自動車中心のまちづくりからの人間中心、歩いて楽しいまちに導いている。クルマのためでなく歩行者のための都市空間の再配分、駐車場として使われてきた中心広場の整備、季節ごとにプレースメイキングされている。フラワープランターの設置や車止め(路上ストッパー・浮沈式ボラード)、道路のマウントアップなど都心部では極力、車が使えない工夫がなされている。
フランスでは道路が「等級化」され中心部ほどクルマのスピードが出せないようになっているし、歩行者優先が徹底している。横断歩道ではクルマは停車する。これは教育の徹底によるものであり「クルマを使わない、捨てる」ことが教えられている。中学校で道路交通法が教えられている。
フランスでは従来の「所有」ではなく「共有」経済への移行が行われている。カーシェアリングの普及も進んでいる。
3.BRT
フランスではLRTだけでなくBRTも普及してきているが、BRTの定義は専用レーンを70%以上走行する「高速高規格バス」である。LRTかBRTかの選択ではなく、あくまでも公共交通の充実と言う国策である。ただし、BRTでは芝生軌道が採用できないという欠点がある。
4.まちのデザイン
交通とまちづくりが一体的であることは当然のこと都市のトータルデザインにも注目している。ゴミ箱から券売機までが一つのデザインである。
5.運賃制度と分配の思想
公共交通の運賃は「社会運賃制度」が採用されている。このため運賃は極めて安い。23都市ではバスは無料化されている。失業者が無料の場合もある。
フランスでは「分配」の思想を受け入れ、SRU(都市社会連帯法)が国民の連帯と環境保全を目的に運用されている。国民は重税を受け入れている。この他、博物館の入場料なども極めて安い。弱者を見捨てない政治、ユニバーサルな福祉が推進されている。これらの方針は政権が変わっても基本法があるため変更されることはない。
地方議会、国会もダイバシティが確保されて、若い女性や政治屋でない「普通の人」が議会に進出しているため、生活者や一般住民の考え方が取り入れられてきている。
6.住民合意
フランスでもLRT推進に関しての合意形成は困難を極める場合も多い。沿線住民だけでは合意形成は難しく、福祉や環境を全面にNPOや行政が連動した活動を展開している。この活動のなかで域内交通の再構築とまちづくりが一体であることを伝えている。
社会実験も必要に応じて実施しているが、短期間の実験では効果が上手く把握できない。実験が定着する期間が必要である。また、計画立案までのプロセスを透明化するとともに、都市文化、LRTを都市の資産としてPRする必要がある。
地域への説明は、首長の指導力が先ず求められるが、行政スタッフと(政策立案に関わった)議員とペアでの商店街などに現場説明が行なわれる。PRビデオも工夫されている。
7.信用乗車について(質疑から)
TGVやトラムでも不正乗車が多いため、運営事業者は検札を強化している。不正に対する罰則はほぼ1月分の定期代に相当する。料金の収益性が事業者の貢献度評価になるようである。「分配」の思想で不正乗車に目をつむっているわけではない。
8.交通政策等(質疑から)
我が国では地方の交通政策は多岐に亘っており、行政の縦割りの弊害がある。福祉バスと一般の路線バスが競合したりしているが、重複を排除した総合的な施策推進が必要である。
また、出席の市会議員(自民党)から、神戸市のLRT計画で恩恵を直接受けない地域もあるため、域内交通での位置づけを示して欲しいとの要望があった。
更に、(与党議員ですら)、ほぼ方針が固まった段階で政策案を提示されるため、議員として意見を挟むことが難しいとのことであった。
土井先生のFBへのご投稿記事より
27日月曜の神戸市の講演会では、なんと三次会までヴァンソン藤井さんとお話をすることが出来ました。
公共政策と公共交通、財源、人々の政策受容など話題は尽きませんでした。
三次会の後で記念写真。
全員心にガッツポーズ。1人だけ外形までガッツポーズになりました。
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