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  • 思いもかけない処で、ラ・ロシェル市役所の無人運転バス社会実験のプレゼン
  • この6月に、フランス・ロワール河畔に位置する数多いシャトーのうちの一つ、シャンボール城で、「デジタル・ルネッサンス・未来のデジタル社会」と称するシンポジウムがあった。(写真下・フランスはこういう歴史遺産建築の現代利用も上手い。1500人収容のテント。窓に当たる処は吹きさらしで、外の気持ちいい風が入ってくる。)
  • パリでTEDxを実施している会社 http://www.tedxparis.com/ が企画。銀行やロレアル社等がスポンサーになり、コンピューターサイエンスやネット技術を駆使した未来の新しい産業の可能性が発表された。具体的には、3Dプリンターで低廉価格の義手を製造、自閉症患者治療用のインテリジェント・ロボットの開発などに着手している若手研究者たちのプレゼンの場を提供した。一方で、グーグル・フランスのかつての社長や、著名な哲学者、或いはネット依存症とデジタルワーク過労でBurn out(こちらでは、「燃え尽き症候群」と呼んでいる。過労死はフランスではないが、強度の神経衰弱で長期療養を必要とする就労者の存在が話題になり始めている)した経由を本にした新聞記者などの年長者も出演し、「SNSのバーチャルな人生ではなくて、真の生活を取り戻す必要性」も訴えるなど、超未来的な発表と社会的、倫理的な発言とのバランスが良く取れたシンポジウムであった。
  • さて、その中で唯一「テクノロジーと交通」としてラ・ロシェル市役所(正確にはラロシェル広域自治体連合)の「 テクノロジーサービス総合局・モビリティーと交通課」の職員から、https://www.fujii.fr/?p=3570 で紹介したように、2014年12月から行われていた無人運転バスの実験が、2015年4月25日に実験が終了したので簡単な報告があった。
  • 実験中は1日に約130人の利用があり、乗りたい人が多く非常に人気は高かったそうだ(無料)。元来このプロジェクトは環境にやさしい交通に熱心だった前市長時代から検討されていたが、新市長は{雇用創出」をモットーにしていたので、「運転手がいらないバス」導入に社会実験とはいえ難色を示したそうだ。また企業から借りたモデルバスもお世辞にも「格好いい」と言える美しいデザインではなかった。しかし、「無人バスのテクノロジーと頑丈さ、まちなかで突発的に起きる様々なシチュエーションに対応しうることが社会実験で示されたので、非常に有意義であった」と担当者は述べた。事故対策には半径30メートルの障害物を探知できるレーザーを車体の上に、また超音波探知機もバス車体の前面下方に取り付けられた。尚FOBOSOFT社製造のこのバスは現在、フィンランド、ギリシャ、シンガポールに貸し出されている。発表したこの企画担当者によると今後の課題は『法制化』を整備すること。現行のフランスの法律では『自動車・バスの無人運転』は禁止されている。もし今後環境に配慮したこのような交通手段を導入してゆくためには、まず社会の受け入れ体制から整えてゆく必要があることを力説した。(実験の詳細は文章下の叙述をご参考にしてください)
  • さて、お城も今では自転車ツーリズムが盛んだ。「自転車で出発して、帰りはバスで戻れます」というメッセージを書いたバスがお城の入り口、チケット売り場の横に控えていた(写真下)。お城の庭園などの敷地はパリ市に匹敵するので、自転車で廻るのが最適というわけだ

以下、https://www.fujii.fr/?p=3570 より引用

  • ラロシェル市で無人運転電気ミニバス社会実験開始
  • フランスの大西洋岸にあるラロシェル市は、人口約75000人の元は漁港として栄えた地方都市で、現在は夏になると近辺の離れ島にバカンスに訪れ る観光客で溢れ、フランス人にとってはリゾートのイメージが強いが、「カーフリーデー」発祥の地として有名だ。1997年9月に、世界発となる「カーフリーデー」 を実施し、2014年も9月22日に行われた。現在では、「モビリティーウイーク」と称して、EUのみならず世界各国で実施されるイベントである。日本でも望月真一先生が代表である 「一般社団法人カーフリーデージャパン」が様々な情報を発信しているので、ご興味のある方はhttp://www.cfdjapan.org/ を是非ご欄になってください。
  • ラロシェル市では、ミッシェル・クレポー氏が1971年から1999年の没年まで市長を勤めた。元弁護士だが、環境、交通分野で時代に先んじた事 業を同市で展開してきた。まだ世の中が「開発」一色だった時代の1973年に、海岸線を守るために海辺での一切の建築を禁じ、フランスで発の歩行者専用道 路を設けた。 1975年からはレンタルサイクルを400台整備【パリのベリヴに先んじること、30年!】、1993年からは電気自動車導入と常に斬新な モビリティー手段の導入に熱心だった。 ミッシェル・クレポー氏は1981年から2年間フランス政府の環境大臣も兼任したことがあり、1982年に制定さ れた通称LOTI 【フランス国内交通基本法】の成立にも関与している。 (このあたりは、ストラスブール市のまちづくりで成果をあげたトロットマン氏 が、1997年から2年間やはり中央政府で文化大臣に就任したことを思わせる)
  • 市長交代後の2000年にはElcidisと名付けられた電気自動車の利用と都心の物流分配プラットフォームを利用した物流システムも開始した(PROXIWAYという企業がシステムとサービスを供給している・フランスでLRTなどの都市交通運送軌道事業体の一つTransdevの支社)が。 そして、この12月17日からフランスで初めて無人運転電気ミニバスの社会実験を始めた。
  • 長 さ5m幅1.5m、8人乗りのミニバスは運転手なしで、15から20Kmの速度で、まず市の観光案内オフィス付近から水族館までの1Km足らずの距離の社 会実験に乗り出した。一般市民が無料で利用できる。システム上は車体付近の障害物を回避できるように構築されているが、フランスの報道では早くも衝突事故 があった場合の保険のあり方などが言及されており、ラロシェル市でも社会実験の間、運転手はいなくても「緊急事故の際にブレーキを発動できる端末機を持っ た係員」が同乗することになっている。この電気バスは月曜日から土曜日の11時30分から17時まで運行され、毎日午後の2時間、CITYMOBIL2と命名されたこの乗り物の社会実験 を説明する、インフォメーションセンターもオープンする。広報をきっちりと行うところ、しかし店舗などが閉店する日曜日は運行しないことなどフランス的で はある。 現在は3台だが、2015年の4月までには徐々に6台に、走行距離も大学がある1.6Kmまで延長する予定だ。CityMobil2 プロジェクトは 「都市環境における自動運転交通手段の利用促進のための研究及び実証」を意図するEUプロジェクトの一貫で、2012年から2016年8 月までが対象。 すでに過去には CityMobil1 プロジェクトにおいて、まず自動運転の交通手段に対する理解を得るためのデモ運転を行っていた。ローマ大学も協力しており、地元のラロシェルにある工科大 学や前述のProxiway社、ラロシェル市役所などを含み、欧州の45の機関がパートナーとなっている。

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