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10月号は、フランスの都市公共交通を支える上下分離の仕組みの第2回です。上下分離の契約実例(政策主体である地方自治体と、運行を請け負うオペレーターである民間企業との間で締結)を挙げて、公共交通の運営コストとその財源について、具体的な数値を紹介しています。

運行委託協定締結の具体的なプロセスを述べ、DSP方式(運行業務の民間企業への委託)における拠出金(自治体が運行オペレーターに支払う補助金。自治体の施策として運賃を低く設定しているために、運行オペレーターのランニングコストをカバーする意図がある)の流れを分かり安くチャート化しました。財源の大きな位置を占める交通税(2020年からはモビリティ税と改称)の課税率は、2021年の最新の数値を紹介しています。

そして今まで、上下分離のガバナンスや契約形態、契約の内容など細かく述べてきましたが、最もお伝えしたかったのは、運賃は政策主体である自治体が設定することです。ここで社会運賃(公共交通の利用促進のためにあえて低く抑えた運賃を指すフランス語の表現)が適用されています。高い課税率で徴収する税金の再配分を通して、誰もが享受できる「住みやすい都市」を作ることが、フランスの政治、社会の選択であり、その「住みやすい都市」を支える大きなファクターが、利用しやすい公共交通である。こういった考えから、「社会運賃」は「連帯運賃」という表現もされます。日本では馴染みにくい表現かもしれませんが、簡単にいえば助け合い、共助、公助のまちづくりでしょうか。

フランスの世帯における移動コスト(車保有には購入価格の減価償却、保険、税金を含むが、ガソリン代は含まれない。(出典:公共交通と鉄道ユニオン・レポート2019年)

社会運賃のみならず、フランスでは40の自治体ですでに公共交通運賃の無料化が実行されています(ただし、人口10万人以下の小都市が中心)。『日本ではしばしば「自分は車を利用するので、公共交通整備やその運営に自治体の予算を使うことは納得できない」という意見が聞かれる。しかし、自家用車は、非常に高いマイナスの外部性(大気汚染、地球温暖化、都市部の渋滞、交通事故、騒音公害など)を有するにもかかわらず、一般道路を利用する限り無料であるため、地域社会全体でそのコストを負担してきた。またトンネルや橋はたとえ一部の人しか利用しなくても、受益者負担ではない。それならば、公共交通運賃の無料化とまでは言わないが、一部の人が利用する公共交通にも、いつまでも独立採算を求めるのではなく、地域の住民が相応のコストを負担することは、地域の公平性につながるのではないだろうか。フランスの都市では、中心市街地は公共交通、郊外や農村部は自家用車と、役割と機能を適切に分担できるよう、国が必要な法整備を整え自治体が税金を通して財源を確保している。』(「運輸と経済」10月号から引用)。この一年間の連載で、お伝えしたかったメッセージの一つです。

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